Day.6【衣装交換】 夜風が頬を撫でる。ひらりと揺れるカーテンの隙間からは、グレーのシャツを纏った背中が覗いていた。
「……左馬刻」
「お、かわいーカッコしてんじゃん」
煙草を片手にニヤリと笑みを向けられる。
「お前が俺のを着ていくからだろ」
「たまたま手に取ったのが銃兎のだったんだよ」
銃兎がふと目を覚ました時、隣で自分を抱きしめて寝ていたはずの左馬刻の姿はそこになかった。どうりで肌寒いはずだとベッドから降りて辺りを見渡せば、自分の脱いだシャツもなく、代わりに不在の男が脱いだアロハシャツだけが残されていたのだった。
「煙草」
「ん」
左馬刻の隣にやって来た銃兎は、煙草を一本受け取って口に銜える。チラ、と左馬刻を見れば、先端同士を重ね合わせて火を移してくれた。
「やっぱりお前の重い」
「俺様は重い男なんだよ」
「知ってる」
ゆっくりと昇っていく紫煙が夜に溶けていく。肺が満たされる心地に銃兎は目を閉じた。
「にしてもよォ、銃兎が半袖着てっと違和感すげぇな」
「はいはい、どうせ似合ってないですよ」
「可愛いっつってんのに」
ぐ、と銃兎の肩に寄りかかって、左馬刻は優しく笑う。
「彼シャツに喜ばねぇ男はいねぇの」
「俺から見ても彼シャツなんだけどな」
「マジじゃん。ど?」
「……嫌いじゃない」
銃兎の答えにハハッと笑った左馬刻は、短くなった煙草を灰皿にジュ、と押し付ける。銃兎もそれに倣って、まだ吸い始めたばかりの煙草を灰皿に押し付けたところで、左馬刻に唇を奪われた。
「二回戦、やろーぜ」
「ハァ……全く……」
カラカラと窓を閉めてベランダを後にした二人は、シーツの波へと消えていった。