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    いちご

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    いちご

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    左銃で30日CPチャレンジ7日目です。

    またのタイトルをRap戦士『ふたりはサジュウ!』。
    文字通りギャグなので、ゆる〜くお読み頂けたら幸いです。

    ちなみに、女性しかいない中王区に潜入する時には女体化し、『プリティ♡サジュウ』になったり、将来的には理鶯が三人目のRap戦士なったりするという裏設定があったりするのですが、本文には全く登場しない設定ですので、気にせずお読み下さい。

    #左銃
    cannonStreet
    #30日CPチャレンジ
    30-dayCpChallenge

    Day.7【コスプレ】「やっぱり爺さんの作る炒飯は美味いな」
    「職務中の警察官とは思えねぇ食いっぷりだったもんな」
    「職務中の警察官を昼食に誘うヤクザもどうかと思いますがね」
    「ハハッ、よく言うぜ」
     なんでもないとある昼下がり。これから事務所に顔を出すという銃兎を誘って、左馬刻は贔屓にしている中華料理屋で昼食をとった。狭くこぢんまりとした店だが、店主の爺さんが作る炒飯が絶品で、左馬刻も銃兎もとても気に入っていた。
     少し食べすぎたとばかりに腹を擦る銃兎を横目に見ながら左馬刻は笑う。銃兎の幸せそうに食べている様子は、何とも左馬刻にどストライクなのだった。
    「あ、煙草買っていいか?」
    「おう。ついでに俺様のも頼むわ」
    「やだよ、自分で買え」
     事務所に向かう途中の他愛もないやり取り。こうやって特に意味もない会話ができるこの時間が、束の間の平和をもたらしてくれる。
     左馬刻は残り数本になった煙草を吸おうと、ケースをポケットから取り出すために下を向く。すると、銃兎にふと名前を呼ばれた。
    「なあ、こんなに空暗かったか?」
     空を見上げる銃兎に倣って、左馬刻も空を見上げる。確かに、先程までの快晴が嘘のように、空は不気味な色に染まっていた。
    「さあ?雨でも降るんじゃねぇの?」
    「それにしても気持ち悪い色な気が……」
     そう言って銃兎が眉を顰めた時だった。突如聞こえた大きな悲鳴と、瞬間轟く破壊音。
    二人で何を言うでもなく目を合わせて、何事かと音の聞こえた方へ向かえば、そこには手足の生えた黒い巨大な化け物が、文字通り暴れていた。
    「ンだよアレ……」
     化け物は雄叫びを上げながら手足を振り回して、建物を破壊している。
    「おい、左馬刻、あれ……」
     銃兎の声にそちらを向けば、まるで時が止まっているかのように、通行人たちがその場で動きを停止していた。
    「ア"……?どうなってんだよこれは……」
    「さあな……でも今この場で動いている人間は俺たちと……、あの女だけみたいだ」
     そう言って銃兎が指さした先には、化け物と同じくらいの高さのビルに立って、杖のようなものを振り回しながら化け物に命令を出している、無駄に胸元が露出した服の女がいた。
    「チッ……あの女があのバケモン操ってやがんのか……」
     左馬刻も銃兎もこの街を愛する者として、その街が次々に破壊されていく様子を黙って見ていることしかできないのは、何とも苦痛であった。何とかすることはできないのか……そう思った時だった。ひらり、と空からオレンジ色の美しい羽が落ちてきたのは。
    「羽……?」
     どうやらその羽は銃兎のところにも落ちてきたようで、左馬刻と同じように手で受け止めていた。
    「──ようやく見つけた」
     羽の落ちてきた先と同じ、空から聞こえたそのバリトンボイスに、左馬刻も銃兎も空を見上げる。すると、手の中の羽と同じ色をした小さな鳥が二人の目線の高さまで飛んできて、フッと微笑んだ。
    「お初にお目にかかる。小官は毒島メイソン理鶯だ。ぜひ、理鶯と呼んで欲しい」
    「…………」
     一瞬、時が止まる。左馬刻も銃兎も同じようにフリーズしていたが、銃兎の方が左馬刻より少し先に我に返ったようだった。
    「と、鳥が喋った!?!?」
     ……そうだよな銃兎。それが普通の反応だよな。フッと微笑んだ、とかおかしいんだよ、鳥なんだから。つかそういや銃兎のヤツ、鳥類苦手なんだったな。俺様のアロハの裾掴みやがって、ったく……可愛いヤツ。……なんて左馬刻の脳内で忙しなく繰り広げられていることなど知る由もなく、理鶯と名乗った鳥は話を続ける。
    「左馬刻、銃兎。二人にはRap戦士の確かな素質がある」
    「Rap戦士……?」
     聞き慣れない単語に、左馬刻も銃兎も首を傾げる。
    「ああ。二人にはこれを使ってラップをしながら敵と戦ってもらいたいんだ」
     理鶯がそう告げると、左馬刻と銃兎の手の中にあった羽が光を放って、マイクへと姿を変えた。
    「これはヒプノシスマイクというアイテムだ。二人で手を繋ぎ、このマイクを同時に起動することで変身ができる」
     その言葉を聞いて、ようやく左馬刻のアロハシャツの裾を離した銃兎が、困ったように眉を下げる。
    「あの、戦うとか変身とか、そんないきなり言われても……」
    「困惑するのも無理はない。しかし、これは一刻を争う問題だ。このままだと街が壊滅しかねない」
    「ッ……」
     理鶯に真剣な面持ちで告げられて、銃兎は思わず口を閉ざす。左馬刻はそんな銃兎の肩に手を置いて、理鶯に尋ねた。
    「……街を守るためには戦わなきゃなんねぇんだな」
    「ああ。このヨコハマの街を守るためには二人の力が必要だ」
     理鶯の真っ直ぐな瞳に、その言葉が本気であることを理解し、左馬刻は銃兎の肩に置いていた手で、背を軽く叩いた。
    「……仕方ねぇ。銃兎、いけっか」
    「ハァ……この街の王の命令とあっては従うしかありませんね」
     溜め息をつきながらも、銃兎は決心したように左馬刻に頷いた。
    「ハッ、そう来なくっちゃなァ!」
    「ありがとう、二人とも」
    「色々と聞きてぇことはあっけど……それはまァ後だな。理鶯……つったな。あのバケモンと戦うにはどうすりゃいいんだよ」
    「まずは変身だ。二人で手を繋ぎ、同時にマイクを起動しながら「チェンジ!ヒプノシス!!」と叫んでくれ」
     理鶯の言葉に、左馬刻と銃兎は互いに目配せをする。
    「よっしゃ、いくぜ銃兎ォ!」
    「ああ、いこう、左馬刻!」
     二人はぎゅっと手を繋いで、マイクを起動した。
    『チェンジ!ヒプノシス!!』
     掛け声を合図にして、左馬刻と銃兎は光に包まれる。その光の中で、まるで魔法にかけられたかのように、着ていた服が見慣れない衣装へと変わっていく。やがて、二人を包んでいた光がパチンと弾けて、変身を終えた姿で現れた。
    「MC.Mr.HC!」
    「MC.45Rabbit!」
    『ふたりはサジュウ!!』
    「街に蔓延るクソ雑魚共が!」
    「全員まとめてしょっぴくぞ!」
     聞こえるはずのない効果音と共に、自然と口から出た台詞を言いながらポーズを決める。そして、二人はハッと我に返った。
    「……って、ンだコレ!?」
    「これが、変身……!?」
    「ふむ、やはり小官の目に狂いはなかったな」
     理鶯が頷きながら二人をまじまじと見る。
    左馬刻は白を、銃兎は黒を基調としたシンメトリーな衣装を纏い、それぞれ形を変えたマイクを持っており、背後ではマイクと連動するように現れたスピーカーがビートを奏でている。
    「確かに戦うたァ言ったが、この格好……一体何がどうなってやがんだ……」
    「マイクと、それにスピーカーまで……どうやら私と左馬刻のものでは姿かたちが全く違うようですが……」
    「マイクとスピーカーは使用者の性質に合わせて最も効果が発揮できるよう姿を変える。つまり、貴殿らのそのマイクとスピーカーは、唯一無二のものであるということだ」
    「……ンで、その唯一無二のマイクとスピーカーを使って、ラップであのバケモンを倒せと」
    「その通りだ」
     そうこうやり取りをしているうちに、化け物が雄叫びを上げながらこちらに襲いかかってきた。
    「左馬刻、銃兎。あいつに向かってマイクを構えてリリックをぶつけるんだ!」
     理鶯のその言葉通り、二人はマイクを構え、鳴り響くビートに乗せてリリックをぶつける。すると、左馬刻と銃兎の放ったリリックは強大な攻撃となって、化け物に直撃した。呻き声を上げながら、化け物が倒れていく。
    「すげぇ、リリックが攻撃に……!」
    「これがRap戦士の力……!」
     二人が思わず感心していると、背後から理鶯が叫ぶ。
    「今だ!左馬刻、銃兎!とどめを刺せ!」
     その声を聞いて、左馬刻と銃兎は目を合わせて頷き合う。
    「っしゃあ!一発デケェのぶち込んでやンぜ!」
    「ああ!これで終わりにしてやりましょう!」
     二人は背中合わせになってライムを刻み、先程よりも強烈なリリックを化け物にお見舞いする。轟音を上げながら放たれたその攻撃は見事命中し、化け物は砂のようにさらさらと風に流されながら消えていった。壊滅寸前だった街もみるみるうちに元通りになり、気味の悪かった空の色も本来の色を取り戻す。
    「そういえばあの女は……!」
     銃兎が先程まで化け物に指示を出していた女がいたビルを振り返れば、そこに彼女の姿は既になかった。
    「チッ、逃げられたか」
     左馬刻が舌打ちを零す。女には逃げられてしまったが、一先ずは化け物を倒せて良かったとするべきだろう。マイクを停止させて、左馬刻も銃兎も変身を解いた。
    「左馬刻、銃兎。よくやってくれた」
     理鶯の声に辺りを見渡せば、時の止まっていた通行人たちも何事も無かったかのように動き出しており、日常を取り戻していた。
    「これで無事解決だな」
     ほう、と息を吐き出して、左馬刻は煙草を吸おうとポケットに手を忍ばせた。しかし、理鶯の思わぬ言葉にその手が思わず止まる。
    「いや、まだ油断はできない」
    「ア?どういうこったよ」
    「先程の奴らは中王区という、このヨコハマの街を初めとして、ニホン……ゆくゆくは世界を支配しようとしている組織だ。この程度の襲撃で終わるはずがない」
    「……つまり、私たちはこれからも、その中王区の奴らと戦っていかなければならない、と」
    「流石銃兎。そういうことだ」
     銃兎の言葉に理鶯が頷く。その様子を見て、左馬刻はふとある疑問を思いついた。
    「そういや理鶯、お前、何で俺様たちの名前知ってンだ?」
     名前教えてねぇよな?と尋ねる左馬刻に、理鶯は目を閉じて懐かしい記憶に思いを馳せるように告げた。
    「……小官はずっと貴殿らのことを探していたからな。ずっとはるか昔……それこそ、前世の頃から、な」
    「前世……」
     理鶯の表情に、思わず見入ってしまう。話を聞きたいと思った。……否、聞かなければならないと思った。
    「……話してくれや、その話」
    「ああ、勿論。二人に話さなければならないことは沢山あるからな」
     理鶯が微笑む。その優しげな表情は、鳥であるにも関わらず、どこか見覚えがあるような気がした。
    「それなら、これから俺様の事務所でどうだ?舎弟どもには部屋に入らせねぇようにするしよ」
    「そもそも左馬刻の事務所に向かう途中でしたしね」
    「そうか、ではそちらに向かわせてもらおう」
     理鶯は小さな羽を広げて浮かび上がる。銃兎がその様子を見て、そういえば、と疑問を口にする。
    「理鶯、貴方……、どうやって来るんです?まさか飛んで……?」
    「いや、その心配はない」
     そう言った理鶯は、突如ぐるんとその場で回転したかと思うと、どういう原理なのか、迷彩の軍服に身を包んだ、ハーフ顔の逞しい男へと姿を変えた。
     驚きのあまり、空いた口が塞がらない左馬刻と銃兎に、理鶯は先程と変わらない表情で優しく微笑む。
    「あらためて、これからよろしく頼む。左馬刻、銃兎」

     左馬刻、銃兎、そして理鶯。三人の紡ぐ新たな物語は、まだ始まったばかりだ。



    ***



    「乙統女様、お時間よろしいでしょうか」
    「ええ、構いませんよ。無花果さん」
     はっ、と頭を下げて、無花果と呼ばれた人物は一歩前へと進み出る。それに、この部屋の主である乙統女はゆっくりと振り返った。
    「本日は確かヨコハマへ出向いていたのでしたね」
    「はい。その件についてなのですが……、少々厄介な事態になりました」
    「厄介、ですか」
    「はい。"サジュウ"と名乗る二人の男が現れまして……。恐らくですが、これから我々の計画を阻止しようと動き出すのではないかと」
    「ほう……?」
    「どういたしましょうか」
    「……そうですね、しばらくは様子を見ましょう」
    「早急に対処しなくて良いのですか?」
    「ええ、まずはあちらの出方を窺うとしましょう。詳しいことは、無花果さん、貴女にお任せします」
    「はっ、承知しました」
     それでは、と無花果が退室するのを乙統女が見届ける。
    「……面白いことになりましたね」
     椅子から立ち上がり、眼下に広がる景色を見下ろす。不敵な笑みは窓に反射して、夜闇に紛れた。
    「サジュウ……精々我々を楽しませてくださいね」
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