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    noa_noah_noa

    アルセノの文章を時々。
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    POIPOI 19

    noa_noah_noa

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    理科室の恋人。(https://poipiku.com/7286563/8958806.html)と同じ世界線のお話です。モブがひたすらおしゃべりしているだけ。それでも平気な人だけどうぞ。

    #アルセノ
    haino
    #パロ
    parody

    とある司書の話とある司書の話


     きれいな男の子がいたの。
    戦前からの歴史ある学校だから、当時の貴重な資料もたくさんあって。だから学校だけじゃ管理が不安だって、外から職員も雇っていたの。だから私もあそこで働いていたのよ。
     でも生徒さんたちはそういう古いものなんて興味がないでしょう?あのくらいの年頃の娘さんたちは図書館なんてほとんど寄り付かなくてね。授業の一環だったり、係の仕事だったり。それ以外なら自習室代わりに使う子は少しいたくらい。利用者のほとんどは一般開放日の地域住民よ。それもうんと年上のね。

     だから今でも覚えているのかもしれないわ。
    毎週火曜日と木曜日に来ていたの。一般利用ができるのがその2日だったから。毎回きっかり16時半に来てたの。チェックのネクタイに紺色のブレザーを着た男の子。あそこから自転車で20分くらいの学校の制服だったわ。え?今は駅が出来たの?あんな住宅街の中に?そこからだったら1駅の場所にある学校ね。ええ、その学校よ。中高一貫の名門校。
     
     くすんだ銀色の髪に、白磁みたいな肌の子だった。最初のうちは赤いネクタイをきっちり締めていてね。まだ顔立ちは幼くて、背丈もひょろっとしていたわ。ブレザーだって袖が少し余っていたのが可愛かったの。そんな子が定期点検くらいしか寄りつかない古書のコーナーの本を毎回持ち出して読んでた。カウンターの正面の閲覧席が一番近い席だったからそこで読んでいたわ。18時半の閉館時間までずっと。
     貴重な資料だったから持ち出し厳禁だったの。もし貸出ができていたら、あの子はもっと早く読破していたのかもしれないわね。
     興味があった内容はノートに書き写していたみたいだった。歴史とか、方言とかそういう分野の資料をよくメモしていたわ。あれだけ熱心だったんだもの、もしかすると今頃あの子は研究者にでもなっているのかもしれない。

     変わったなあって思ったのは、ネクタイの色が緑になった辺りかしら。
    その頃にはもうブレザーから手首が見えてしまっていたし、体格も立派になっててね。最初は宗教画の天使みたいだったのに気づいたらギリシアの彫刻みたいになっちゃってて。子供の成長ってあっという間だなあって勝手に感心してたの。まあ、そんなことはいいわね。変わったのは体つきだけじゃなかったから。
     学校で放課後講習があるはずなのに、あの子はずっと図書館に通い続けてたの。置いてある資料も半分以上は読み切っていたんじゃないかしら。でもね、それまでは閉館時間ぎりぎりまで読んでいたのに、18時過ぎると荷物をまとめて帰るようになった。
     そろそろ受験も考えないといけない学年だろうし、読書ばかりできないんだろうなって。あの学校の生徒さんですもの、難関大学を目指していたに違いないわ。でも、違ったの。違ったのよ。

     秋の終わりくらいだったはずよ。仕事終わりにあの子を藤棚のところで見たの。
    あの学校は戦時中、お国に校舎を貸し出した功績で寄贈された藤の花があってね。桜に負けないくらい力強く花を咲かせていたの。校舎の裏側に藤棚があったのよ。開花時期は人通りがあるのだけど、それ以外はほとんど人が寄りつかなかった。私は校舎裏の路地が近道だったからしょっちゅう通っていたの。街灯もあまり無くてね。大きな丸太の上にくくりつけられた照明がぼんやり点いていたくらい。
     最初は見間違いだと思ったの。閉館して、書架の整理をしてたから19時は過ぎていたはずだもの。1時間以上前に帰った子がまだ近くにいると思わないでしょう?でも、薄明かりの下でもあの特徴的な髪の毛と整った横顔ははっきりとわかった。館内じゃつけてなかったヘッドフォンをつけていて、片手で文庫本を開いてたわ。屋内と違って暗いのに本を読んでいたから目が悪くなるんじゃないかって心配になったの。でも、それよりもどうしてこんなところにいるのかが不思議だった。悪いことなのはわかっていたけれど、ちょっとだけ観察してみることにしたの。
     時々ページをめくるだけでずっと直立不動だったわ。すごい集中力よね。でもね、もう一人の人影が近づいてきた途端、本をすぐに閉じたの。しかもヘッドフォンまで外して!
     相手はあの学校の女の子だった。後ろ姿で顔まできちんと見えなかったけれど、校則通りの膝下丈のスカートを履いた女の子だった。長い銀髪に褐色肌の。二人で二言三言話した後すぐに歩いて行ってしまったわ。その時にね、いつも仏頂面で文字を追っているだけだった男の子がね、本以外興味がなさそうな子がね、女の子を見て少しだけ笑っていたの。嬉しいとか楽しいとか、そういう笑顔じゃなくってね。彼女のことが好きで好きでたまらないっていう表情よ。帰る時間が早くなった理由がわかったわ。ふふ、青春よね。微笑ましいわよね。
     私、あんなにきれいに笑う人にあれから出会ったことないのよ。とっても、とってもきれいな男の子だった。
     
     二人のことを見たのはその時だけだったわ。きっとあの日だけ特別遅かったのね。
    あの子は高校を卒業するまでは図書館に通って、18時に帰っていたからお付き合いは続いてたはずよ。私がそうだったらいいなって願っているだけなのかもしれないけれど。

     あの男の子が図書館に来なくなってすぐに老朽化が理由で取り壊しの話が出たの。だから私たちは資料と一緒に市の図書館へ異動になったから、その後のことはわからないわ。どうして今になって旧校舎の話を聞きたいなんて人がいるのかしら。もう10年以上前の話よ?
     え?その男の子の名前が知りたい?ごめんなさいね、あの男の子は最初の利用登録以外、カウンターに来たことがないから名前まではわからないわ。言ったでしょう、持ち出し禁止の資料しか読んでいなかったから貸出手続きなんてしていなかったんだもの。それに、もし覚えていたとしても利用者の守秘義務があるから教えてあげられないわ。
     ……ちょっと待ってね、今思い出したことがあるわ。あの子が資料を書き写していた時に使っていたシャープペンシル。そのチャームがアルファベット一文字だった気がする。もしかすると本人のイニシャルだったのかも。確か、「A」のチャームだったわ。
     私が覚えていることはこれでおしまい。久しぶりに昔の話ができて楽しかったわ。ありがとう。
     

     
     
     
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    noa_noah_noa

    CAN’T MAKE夏の初め、フォロワーさん達とマルチ中に「⚖️にキスしてほしくて溺れたフリをする🌱」の話で盛り上がり、私なりに書いてみた結果、惨敗しました。
    もし覚えていたらこっそり読んでください。もう夏が終わってしまいますが。

    ※フォロワーさんとのやり取りで出てきた台詞を引用・加筆して使用しております。

    ※水場でふざけるのは大変危険です。よいこは絶対にやらないでください。
    通り雨通り雨


     キスがほしい。
     恋人からのキスが欲しい。

     突如脳内を駆け巡った欲望は多忙の恋人と規則的な己の休暇を無断で申請させた。恋人に事後報告をすると、当然こっぴどく叱られた。けれども、その休暇を利用して稲妻旅行をしようと誘えば満更でもなさそうに首を縦に振ったので胸を撫で下ろした。まず、第一段階完了。

     稲妻までの道中、セノはいつものように気に入りのカードを見比べては新たなデッキを構築したかと思えば、『召喚王』を鞄から取り出してすっかり癖がついてしまっているページを開き、この場面の主人公の台詞がかっこいいと俺に教えてくれた。もう何百回も見ている光景だというのに瞳を爛々と輝かせる恋人はいつ見てもかわいい。手元の書物に視線を落としながら相槌を打っていると離島に着くのはあっという間だった。第二段階完了。
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    noa_noah_noa

    REHABILI理科室の恋人。(https://poipiku.com/7286563/8958806.html)と同じ世界線のお話です。モブがひたすらおしゃべりしているだけ。それでも平気な人だけどうぞ。
    とある司書の話とある司書の話


     きれいな男の子がいたの。
    戦前からの歴史ある学校だから、当時の貴重な資料もたくさんあって。だから学校だけじゃ管理が不安だって、外から職員も雇っていたの。だから私もあそこで働いていたのよ。
     でも生徒さんたちはそういう古いものなんて興味がないでしょう?あのくらいの年頃の娘さんたちは図書館なんてほとんど寄り付かなくてね。授業の一環だったり、係の仕事だったり。それ以外なら自習室代わりに使う子は少しいたくらい。利用者のほとんどは一般開放日の地域住民よ。それもうんと年上のね。

     だから今でも覚えているのかもしれないわ。
    毎週火曜日と木曜日に来ていたの。一般利用ができるのがその2日だったから。毎回きっかり16時半に来てたの。チェックのネクタイに紺色のブレザーを着た男の子。あそこから自転車で20分くらいの学校の制服だったわ。え?今は駅が出来たの?あんな住宅街の中に?そこからだったら1駅の場所にある学校ね。ええ、その学校よ。中高一貫の名門校。
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    noa_noah_noa

    REHABILI赤い目の🌱が書きたくて、プロット作って放置してたら違うものになってしまった。
    リハビリ
    少しドメスティックでバイオレンス。
    文章は書き続けないと鈍る。
    green eyedだよねえ、本当は。
    あかい目のかいぶつサマあかい目のかいぶつサマ





    ※赤い目のアルハイゼンを一度でいいから書いてみたかったけれど、何だかいつも通り変なものになってしまった。何でもありな人向け。








    あ、

     振りかざされた拳に気付いたのと同時に左頬がカッと熱くなる。途端、視界も急変。
    薄暗い室内でぼんやりと浮かぶ白い天井と、ぎろりと光る赤い、瞳。

    またか、

     自身の下腹部に響く殴打音を聞きながら、己の仕事が荒事を解決することでよかったと思う。そうでなければ無意識に受け身をとることだってできなかっただろうし、急所を気付かれないように避けるなんて芸当できなかったと思うから。

    「考え事とはいいご身分だな、セノ」

     眼前の男にはバレていたらしい。赤い目がぎりりと細くなったかと思えば、両手が首元にかかる。感情に任せて絞めあげられてしまえば、ぱくぱくと口を開けることしかできなくなる。止めさせなければならないのはわかっている。自分の右手を上げかけて、止めた。
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