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    PROGRESSヤの夏×バーテンダー男主。
    予感の3話。「キャロル」
    バーテンダーの大会で優勝した。
    と言っても創作部門で優勝しただけで、総合優勝は逃してしまったので、また来年挑戦したいところだ。初めて優勝を掴んだおかげで、あちこちのハイクラスホテルから出張の依頼が来て忙しくなった。
    オーナーがそれも経験だというので、片端から出かけては、パーティ会場に設置されたバーカウンターで腕を振るう日々だ。
    毎日忙しくしていて、あの男のことは忘れかけていた。
    その日も大きなパーティに呼ばれて、バーカウンターで忙しくカクテルを作っていた。絶えず人が眺めに来ては、作ってほしいカクテルを言うのでIngaにいるときより忙しい。
    メニューが絞ってあるとはいえ、目まぐるしく注文される忙しさは中々経験出来ないものだ。
    人の波が途切れた時に、その声はした。
    「キャロルを作ってもらえないかい?」
    聞き覚えのある低い艶のある声に、はっと顔を上げると、そこには……。
    名前を呼ぼうとして、知らないことに気づく。
    「夏油だよ。夏油傑。妙なところで会うね」
    そう言った男、夏油は、真っ黒なブランドスーツに身を包んでいた。身長があるせいで会場内で目立つ。綺麗な顔立ちにちらちらと視線を送るのは女ばか 3089

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    PROGRESSヤの夏×バーテンダー夢主。
    のまれる2話。「フォーリンエンジェル」
    「や、こんばんは」
    チンピラの事件から一週間後、来店したあの男がそう声をかけてきたのに、俺は目を見張ってから、微笑むと男に近づく。
    「いらっしゃいませ。また来ていただいたんですね」
    「そう約束したからね」
    約束のつもりはなかったが、律儀な性格らしい。
    あれから、チンピラたちは姿をあらわしていない。本当にこの人が何かしたんじゃないだろうな、と一瞬疑って、普通の人間にそんな真似が出来るわけないかと、思考を振り払った。
    「今日は混んでるようだね。君を独り占めするわけにはいかなさそうだ」
    「ご贔屓にしていただいて嬉しいです。カウンターへのご案内でよろしいでしょうか」
    「もちろん。今日は他のバーテンダーも居るんだね。でも差し支えなければ君にシェイカーを握ってほしいけど、良いかい?」
    「かしこまりました」
    前回のいっぱいで口留めになっているはずとはいえ、どうにも立場が弱い。承諾して俺は、珍しくバーテンダーとして入ってるオーナーの横を通り過ぎる。
    「気をつけろ」
    そう囁かれて足を止めた。
    「カタギじゃねえ」
    「え?」
    オーナーがそう判断するなら本当だろう。前回のいくつかの台詞の理由も納得できる。足を 3070

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    PROGRESS時間と世界を跳躍するトリッパーな女主と夏油の話。救済系。
    あの春の日、あの少女を死から救えたら、私の選択肢はまた変わってただろうか?
    前中後編のうちの前編。まとめた。
    雨の音がずっとしている。水があちこちにぶつかり、跳ねては地に落ちるて流れていく音が重なり合って響いている。今、世界のノイズはそれだけで、通り過ぎていく傘がいつもよりも人間の情報を減らしていた。今は何も見たくない。特に『普通の人間』を視界に入れたくなかった夏油にとって、この雨はほんの少しだけ救いだった。行く宛もない。そろそろ戻らなければ門限に間に合わないと分かっていても、どうしても足を元来た道の方へ向けられない。帰っても今は誰もいないのを知っている。出迎えてもらったところでなんになる。そう思う自分と、傘も差さずに馬鹿みたいに濡れて、どうするつもりだと自分が問いかけてくるのを聞こえないふりをした。夏油は俯いて毛先から雨が滴り落ちるのをそのままに、ただただ黙ってただ足を進める。止まることは出来ない。自分が決めた道を歩んでいる。でも行き先が分からない。救うこと。その対価に傷つくこと。見返りを求めているわけじゃない。でも、この世界はあまりにも──自分達に優しくない。
     ふと、前に人が立っていて足を止めた。
     避けようとした瞬間に、雨が止む。
     違う、頭の上に傘を差し出されたのだ。
     顔をあげると 7892