***ラルフ・C・ベルモンド
意識が芽生えたとき、体はすでにそこにあった。
それと同時に感覚が、記憶がはっきりとしてくる。まさに「蘇った」という実感。
自分は、俺だ。
夜を狩る一族として生きていた。闇と戦うために。
ラルフ。ベルモンドの中で、俺を示す名。
自らの手に目を落とすと濃い焦茶色の髪がさらりと顔に落ちかかる。
戦いの装いをしている。体には力が籠もり、胸元に大きく奔る傷跡が見えた。戦うための体だ。
無意識に鞭の柄を握り締めると、皮が擦れる硬い感触と音が、おまえはラルフだと告げている気がした。
そうだ、俺は、
「ラルフ・ベルモンド──さんですね?」
声のした方に視線を向けると、見たことのない女性が自分に問いかけている。
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