コット-サン

できたTwitterに上げたもの
連動確認
一人でいる時は、ふわふわと自分の好きな所へ自由に歩いていく彼女だが、集団の中では決して先頭を歩かない。
 皆が歩き出したのを確認してから、のんびりとその後ろをついてゆく。

 他のメンバーもそれに慣れているのか、特に何も言うことはない。たまに振り返ったアリゼーやヤ・シュトラと喋りながら歩くこともあるが、それも稀だ。

 今回も、全員が歩き出すのを待ってから、動くつもりなのだろう。なかなか歩き出さないエメトセルクを見つめて、首を傾げる。

「……行こう?エメトセルク」

 自然に、当たり前のように差し出されたその手を見つめ、エメトセルクは心底嫌そうに顔を歪めた。

「私がその手を取ると思っているのなら、相当におめでたい頭脳をお持ちだな。英雄殿」
 直接的な皮肉に、彼女は苦笑する。
「流石に思わないけど、歩き出せないなら引っ張ってあげるよ」
「御免被る。まったく、何故私が歩いて移動しなくてはならないんだ」

 渋々といった風情でようやく歩き出したエメトセルクの隣を、彼女は歩く。のんびりと、後ろ手を組みながら。
 時折、周囲に鳴く鳥の声などに耳を傾けて、草木を眺めている。

「……それで、私を警戒しているつもりか?」
 あまりの呑気さに、エメトセルクは半眼で彼女を見下ろした。

「貴方を、というか」
 彼女はエメトセルクを見上げながら微笑む。
「全周囲を。全員が視界に入って、尚且つ後方を警戒するには、しんがりが1番ですから」

 しんがり。軍隊でいうところの最後尾。撤退戦では、捨て駒になる部分。彼女は、この集団では自分がソレだと認識しているのか。
 他の面子は、それを良しとしているのか。そもそも彼女がそれを担うつもりでいることを、知っているのか。

「……お前自身の警戒は、誰がするんだ」
「え?」

 渋面のまま問えば、驚いたように動きが止まった。
 急な停止に、エメトセルクは一歩行き過ぎ、彼女を振り返る。

 目をまんまるにしている、誰よりも強い英雄様。
 誰かに守られることなど、考えもしなかったのだろう。

 しかしすぐに彼女は、嬉しそうにふわりと笑って、ぱたぱたとしっぽを振った。

「私のこと、心配してくれたんだ?」

 ーーーああ。この英雄はポジティブが過ぎる。
 これはやはり、もう少し警戒していただかなくては。


「そうだな……」

 エメトセルクはゆっくりと足を滑らせ、その体躯で前を行く連中から彼女を隠す。この後に及んで、まったく警戒していない彼女の腰にするりと手を回し、身を屈めた。

「警戒を怠ると、こうして、悪い男に攫われてしまうかもしれないな?」

 耳に息を吹き込むように、囁く。
 ついでとばかりに、カリ、と耳の上を軽く齧れば、硬直した耳としっぽの毛がぶわわっと逆立つのが視界に入った。

 報復が来る前にさっと身を離し、すたすたと前を歩く。

「……は。な、なんで、最近こんな……っ」
 
 流石にここでは怒鳴れないのか、エメトセルクにだけ聞こえる抗議の声。聞こえぬふりで、振り返る。

「どうした?英雄殿。
 歩けないなら、エスコートが必要かね?」

 止まったままの彼女に向かって、優雅に手を差し出せば。

「いりません!」
 英雄は顔を赤くしたまま、彼女にしては大きな声で、叫んだ。1373 文字