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    Mame_moyashiya

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    Mame_moyashiya

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    セバ夢です。酒の席でやらかす話です。

    ディオニュソスに導かれた陶酔。 アイボリー邸では月に一度ほどの間隔で、家族みんなで晩酌をする夜がある。屋敷の者は皆基本的に酒が好きで、大盛り上がり!とはならないものの、そのイベントを楽しみにしているのだった。
    常より口が回るようになったルーサーの昔語りを聞いたり、気が向いた時にはピアノを弾くのを聞いたり。まだ新入りのセバスチャンと少女は見たことがないが、キャットマンがそれぞれの得意の楽器を持ち出して音楽を奏でてくれることもあるらしい。
    まだお酒を飲めないランダルはぶすくれた顔でジュースを啜っているけれど、それ以外の全員はそんな様子さえも酒の肴として楽しんでいた。

    本日、食卓のテーブルについていつも通り酒を飲んでいるのはルーサー、ニェン、ニョンの三人だ。
    ソファに脚を組んで座るランダルはスプライトの瓶を開けてお行儀悪く口をつけて飲んでいる。お酒はダメよなんて毎回言われているのに、言われる度に新鮮に驚いて新鮮に拗ねるのだ。
    今日の酒はドイツ産のビールで、ルーサーはこれを皆で飲むのをとてもとても楽しみにしていた。無表情ながらも普段より高いテンションはその仕草や声色に現れる。鼻歌なんかも歌ったりして、とにかく彼は浮かれていた。それが歌に聞こえないというのはまた、別の問題なのであるが。
    それが家の者皆になんとなく伝播して……パーティでもないのに、いつも以上に全体的に楽しげな雰囲気であった。
    だから、セバスチャンが飲みすぎてしまったのも仕方のないことと言えるだろう。
    彼は常に緊張の中で生きているので、酒でそれが一気に解放されてしまったのだ。
    普段はルーサーたちと一緒に食卓で飲んでいるのが、今日は少女やランダルとともにソファで飲んでいたからかもしれない。それか、ただ単に酒との相性の問題かも。
    きっかけは何にせよ、今日のセバスチャンは……そして少女までもが、なんとなくいつもよりふわふわとした酔いに包まれていた。

    いつもなら絶対に見せない曖昧な笑顔を見せ、缶を早いペースで傾けるのを見て、ニョンは嫌な予感がしていたが……しかし、誰も何も言わないので自分も黙っていた。
    それが良くなかったのかも知れなかった。ここで彼が、水でも渡してやればああはならなかったかもしれなかったし、そんな義理はないのもまた事実だった。

    ずっと黙って酒を飲んでいた少女がいきなり、グラッと体を傾ける。かと思えば彼女の手は、すぐ隣にいたセバスチャンの座っているすぐ横……それも、彼の座る向こう側についた。
    つまり腰に腕を回すような形で少女は青年に身体を預けたのだ。

    「……ち、ちょっと。大丈夫なの」

    いつもは大人しくしているはずの少女の様子に、さすがのランダルも口を出さざるを得なかったらしい。
    しかしその心配も、少女の据わったような瞳と常にない大きな声で食われてしまった。

    「あ、はい。大丈夫!……だって私たち、付き合ってるもんね?」

    ……ちなみに、そのような事実は何一つない。酔った少女はこれで、セバスチャンに「何言ってんだよ!」なんて言われるなりしばかれるなりして構ってもらいたかっただけだ。要するに、絡み酒。最悪だ。
    冗談キツかった?ごめん!なんて言おうとした瞬間。

    しかし、セバスチャンの熱い手が少女の手に重ねられた。
    そしてもう片方の手は少女の頬へ。
    く、と顎に伸ばした指に力を入れて、少女の視線をなかばむりやりに自分に合わせる。

    「……そうだよな。俺たち、付き合ってるもんな……」
    「えっ?」

    素っ頓狂な、間抜けな声が上がった瞬間。
    青年のくちびるが、ふっと少女の頬に寄せられた。柔らかくて温かい感覚が直接伝わって、少女は驚きに固まる。
    やわらかくて、優しくて、なのに情熱的なキスだった。
    見開かれた少女の目が、とろんと半分眠たげな瞳にかちあう。下がった眉尻が前髪から覗いて、可愛らしくあざとく首を傾げる仕草に心臓を掴まれる。
    真っ赤に染まった頬のそばかすが、どこまでもセクシーで目が離せない。

    一瞬の静寂。のち、ランダルの絶叫が部屋に響き渡った。

    「はあ!?ちょっとセバスチャン!そんなの私にもしてくれたことないじゃない!」

    ずるいよ!と大騒ぎをするランダルなんて目に入っていないようで、セバスチャンは不明瞭なことを口にしながら隣に座る少女の肩に顔をうずめてしまった。彼のふわふわとした髪が少女の肌をくすぐる。
    この様子なら、明日の朝には忘れてくれているかもしれないけれど。
    酔いが一瞬で冷めた少女は真っ青になって食卓の方を伺ったが。
    ニェンとニョンは我関せず、俺はしらねえ……とそっぽをむき、ルーサーはといえば、愛が伝わるね♡なんて呑気なことを言いながらおつまみのビーフジャーキーを齧っている。

    明日からどうしよう、目合わせられなくなっちゃうよ……なんて心配をして慌てているのは、屋敷の中でただ少女一人なのだった。
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