光の人 雪と氷に閉ざされた山は、それでも夏になれば幾らか雪は溶け生命力の強い緑が顔を覗かせる。
一面の白さに彩りが加わると子舒も心が浮き立つようで笑みの零れる回数が増えた。
夏は、彼の中に降る雪も溶かすのだ。
未だ、少しだけ罪悪感に似たものが温客行の胸を刺す。
彼をこの真っ白な世界に閉じ込めてしまって良かったのかと。
あの時自分自身が望んだことだった。後悔している訳でもない。それでも。
有象無象の江湖で、折々の花の咲く美しい四季山荘で、本来は限られた生を全うしたはずなのだ。
氷雪を食べて、共に生きてくれるかと問うた言葉に返された笑顔に偽りはない。聡明な師兄は意図して隠した思惑以外は全てわかっていて了としたのだ。
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