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    うさぎぃ

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    うさぎぃ

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    男性妊娠表現有 忘羨

    ##忘羨

    😌ああどうして、なぜなんだ。
    あんなに幸福だったのに。



    「魏先輩の調子は?」
    「まだ回復には遠い」
    「無理もない。あんなに喜んでいたのに『死産』だったんだから」

     静室の外で小声で話された門弟達の声に、魏無羨は耳を傾けた。
     そうか、死産だと伝えられているのか。
     魏無羨は、淡々とそう考えた。
     静室は静まりかえり、白檀の香りが色濃く漂っていた。
     もうひと月、魏無羨は牀榻に横になっていた。
     初めて子供を授かった時は、自身が男だというのに奇跡に驚いた。
     勿論、夫の藍忘機も驚いたが、年長者である藍啓仁に聞く所によると、古代の文献には、金丹を子宮かわりにして子供が宿った例があったらしい。
     魏無羨は、その月に結丹し、そして子も授かったのだ。
     それからの日々は目まぐるしく、悪阻で吐き弱る事もあれば、体調の良い日に少し外に出ただけで藍忘機が心配して、魏無羨を追ってくるものだから、微笑ましくて、嬉しかった。
     藍忘機と道侶ではなく夫夫になり、子が生まれたならば、家族になるのだと思った。
     ながく一人孤独だったせいか、子供にだけは同じ思いはさせたくはないと思った。
     藍忘機と、子供の名前について考えた。
     名付けの適任者には江澄の名が上がったが、名付けがもし女の子だった場合、遊女のような名前になるかも知れないと藍忘機に伝えると、藍忘機は眉間に皺を寄せた。
     結局は藍曦臣に頼む事にした。
     藍家では、是非男児をと望まれた。
     祝福された。
     それはまさに、結婚を許された瞬間だった。
     妊娠して腹が出始めた頃、藍忘機と魏無羨は祝言をあげた。
     皆が藍忘機と魏無羨を祝福して、それは幸せに満ちていた。

     それなのに、産まれた赤子は、異様な姿をしていた。
     それは赤子とは呼べない一つ目の手足のない、頭の欠けた塊だった。
     それはすぐに死んでしまった。
     産婆は子供を見た途端震え上がり、魏無羨は仕方なく、力の入らない体で起き上がると、布団に落ちていた我が子を抱き寄せた。
     既に息はなかった。
     昨日まで腹の中で動き回っていたのに、産まれた瞬間、死んだのだ。

    「……ああ、かわいい」

     一番最初に出た言葉だった。

     呪われた魂に、幸福など身に余る。
     それが証明されたような気がした。
     死んで青白い子を腕に抱き、太股の間をみれば、小さなものがみえた。
     この子は男の子だった。
     魏無羨は虚な瞳から涙を流し、子供を抱いていた。



     子供の葬式は、執り行われた。
     出産で弱った体の魏無羨は、葬式の参列を許されなかった。
     葬式の後に手渡されたのは、匂い袋と同じくらい小さな骨壺だ。
     本来、火葬などしないのに、魏無羨の子は焼かれたのだ。
     藍忘機は骨壺を手渡す際、魏無羨に「君の側にこの子もいたいはずだから」と気を利かせて言った。
     それが嘘だと、容易に想像がついた魏無羨が「僧侶は嘘をついたら地獄に落ちるって知ってるか?藍家の始祖はなんだったか」と軽く嫌味を言うと、藍忘機は真っ直ぐに魏無羨を見つめ「構わない」と口にした。
     その口振りがあまりに素直で優しくて、瞬きをすれば涙が頬をこぼれ落ちた。

    「嘘が、…下手すぎるだろ」

     魏無羨の小さくうめいたその声に、藍忘機は魏無羨を抱き締めると、骨壺に手を重ねた。
     けれどその先に言葉はなかった。
     ただただずっと、悲しむ魏無羨の側に、藍忘機は寄り添っていた。



    おわり
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