圭藤要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。
今日は食べカスがついてるから要、今日のマフラーの巻き方は智将。今日は五分に一回あくびしてるから要、今日の服の脱ぎ方は智将。
「おはよ智将」
「ああ、おはよう藤堂」
精度が上がって、後ろ姿だけでも見抜けたときの嬉しさといったら。
要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。もちろん、こっそり、俺の中だけで。
今朝はもう、本当に見事なサービス問題だった。
顔も歩き方も、なんなら背中すら見なくったって自信満々正解を叩き出せる。
悪魔かってくらい頭をぴょんぴょんとがらせた、グラウンドに伸びる薄い影。
「よー要、芸術的な頭してんじゃん」
気軽にぽこんと後ろから小突いて、「やっぱり藤堂もそう思うか」、お気楽とはほど遠いリアクションにえっと背を伸ばす。
あからさまに“右側を下にして寝ていました!“感満載の様相で、要がぐるりと俺を見上げた。
「えっ智将?どうしたんだよその頭」
珍しいじゃん、なんて跳ねた髪を取りつくろう俺の手も、心なしか丁寧になってしまう。
「主人が盛大に寝坊してな。寝癖を直す時間もなさそうだったから『もっと早く寝ておけば良かったのに』と口を出したら、ヘソを曲げて引っ込んだ」
「なるほど」
わしわしとついた癖を拡散できないか試してみるものの、どうにもごまかしがきかないようだ。まあ威厳とかカリスマ性とかは半分くらいどっかいっちまってるけど、憎めなさとかほっとけなさがプラスされてこれはこれでいいんじゃないだろうか、たぶん。
似合ってる、は絶対違うな。
「可愛くて結構好きだぜ、俺は」
智将も悪い気はしてないっぽい。
黙りこくったまま、猫みたいに俺にもぞもぞ毛をつくろわれてる。
***
要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。
今日は布団に入ってくるから要、今日の寝息の感じは智将。今日はふがふが乳揉んでくるから要、今日の寝言の感じは智将。
「おはよ智将」
「ああ、おはよう藤堂」
まだ掠れた声で目をこする君の姿だけで見抜けたときの嬉しさといったら。
要圭か“じゃない方か“のクイズは、それはそれは盛り上がる。もちろん、こっそり、俺の中だけで。
「智将また可愛くなってんじゃん」
右側を下にして寝ていたことがバレバレな彼の頭を、わしゃわしゃ撫でる。