君と未来 3自然と涙が溢れる。
何故だろう。
嬉しいはずの思い出なのに…。
ほまれは涙を拭う。
「もう、終わりっ」
自分に言い聞かせる。
考えたって仕方ない。
前に進まなきゃ。
新しい恋を見つけて。
キラキラ輝いた、私になるんだ。
寒い夜。
いつの間にか雪がちらつき始めていた。
夜の街はカップルや友だち同士、行き交う人々が楽しそうに笑い合っている。
ほまれはひとり颯爽と街を歩く。
前に、進まなきゃ…。
一歩、また一歩と人の間を縫うように前に進む。
何だかこの街で、私だけがぽつんとひとり取り残されたような気分だった。
ほまれは立ち止まって、小さく溜息を吐く。
今日の夕飯は何にしよう。
野菜を沢山とりたいから、やっぱ鍋…?
スーパーもう、閉まっちゃったかな。
なんて。
何となく顔を上げれば。
・・・・?
人混みに、見知った顔を見た。
…気がした。
ほまれは目を見開く。
見間違い…?
だって、そんな訳…ないのに。
「ハリー…?」
赤い髪のその人は私を見付けて、優しく笑った。
あの時と変わらない笑顔で、人混みを掻き分けて小走りにこちらへ掛けてくる。
「やっと、見つけた」
さっき拭った涙がまた、溢れ出す。
言葉が出なくて。動けなくて。
その人が掛けてくるのを見守ることしか出来ない。
「ほまれっ」
ハリーはほまれの前で立ち止まり、嬉しそうに笑う。
変わらないその仕草が懐かしくて。
でも切なくて。
「やっと…会えた」
ほまれも背が伸びた。
あの頃よりもハリーの顔が近くて。
でも、やっぱりハリーの方がほまれよりも少し大きい。
ハリーは腕を伸ばしほまれの頭を優しく撫でた。
「背、高くなったな。髪も長なった」
次から次へと涙が溢れて止まらない。
そんなほまれを、ハリーはぎゅっと抱きしめる。
「綺麗に…なった」
顔を上げることが出来ない。
「何…で?だってハリーは、あの時未来に帰ったのに…っ!何でっ」
ハリーは少し困ったような顔を見せた。
「・・・・」
ハリーの腕に力がこもる。
ほまれが顔を上げた。
「ほまれは、忘れとるやろうけど…、」
小さく前置きをする。
「…俺たちが未来へ帰ったあの日。14歳のほまれと約束したんや」
約束?
そんな記憶は無くて。
忘れるはずもないのに。
ほまれは不思議そうにハリーを見る。
「どう言うこと?」
ハリーはほまれの瞳をじっと見ていた。
気のせいか、少しだけ寂しさの混じったハリーの顔。
「いつかほまれを迎えに行くって。大人になった”未来の世界”の輝木ほまれを、必ず迎えに行くって俺は約束したんや」
・・・・?
「大人になった…私?」
そんな約束はやはり覚えていない。
でも、
…あれ?
私、あの時…ハリーと何を話したか…
記憶が、ない。
何かがすとんっと、心にハマったような気がした。
パズルのピースが繋がっていく。
ほまれはさあやの言葉を思い出す。
ーーここよりずっと未来の世界って、どの位先なのかしら?
「みらい…?」
ーー1秒先でも未来だし、何百年先だって未来。
「ここが、ハリーたちのいた未来?」
静かにハリーが頷く。
***