05/04 楓可不サンプル見慣れた病室に電子音だけが響く。規則正しく鳴るその音は、可不可の心臓が問題なく動いていることを示しているが、蒼白い顔で横たわる可不可を見ていると、どうしても不安でたまらなかった。
可不可の病室には楓が今までに買ってきた世界各地の土産品が所狭しと並んでいる。仕事でもプライベートでも国内外問わず旅行に行くことは多かった。いつか可不可に見せたい景色も、いつか一緒に行きたい場所もその度に増えて、お土産を選ぶときにいちばんに思い浮かぶのもいつだって可不可だった。「いつか」はやがて「可不可が20歳になって手術が終わったら」に変わり、昨日そこに新しい約束が加わった。
「可不可、早く目を覚まして」
可不可と話したいことが、聞きたいことが、伝えたいことがたくさんあるんだ。
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