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    uyuseed

    @uyuseed

    とっくの昔に20↑のオタク
    種自由から再燃し、技術大尉×操舵士、艦長×操舵士など嗜んでいます😉

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    uyuseed

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    ここからハイノイになるんですか?と聞かれた作業進捗。

    #ガンダムSEEDFREEDOM
    #アルバート・ハインライン

    「色男はつらいねえ」
     背後からからかい混じりの声がした。振り向かなくても分かる。こんな物言いで話しかけてくる人物など一人しかいない。
    「最高評議会メンバーのご息女じゃないか。この間は大学教授のご子息だったな。入れ替わり立ち替わり、モテる男は大変だ」
    「ばかばかしい」
     声の主を見ずに吐き捨てると、背後でバルトフェルドはくっくと笑った。
    「恋だの愛だの好きだの嫌いだの、下らない」
    「言うねえ」
    「結局は婚姻統制に従わなければいけないのに定められた相手以外に時間を費やすなど、全くもって時間の無駄だ」
     あなたが好き、恋人になりたい。好きになってくれなくてもいいから傍に置いて欲しい。
     向けられる同じような言葉の数々に辟易している。
     先ほどの女もあらゆる好意の言葉を並べ立てた挙げ句、「興味がない。あなたと関係を持つことは天地がひっくり返ってもあり得ない」と告げると、勝手に傷ついた顔をして去って行った。自分勝手も甚だしい。
     技術局で残業をして、暗くなった家路を急いでいたのだ。さっさとシャワーを浴びて眠りたいと思っていたところに声をかけられた。
     良家の娘が聞いて呆れる。仕事終わりを待ち伏せしていたのだろう。
     女が去った後をぼんやり眺めていたところに声を掛けられた。
    「愛も下らないと?」
     その言葉に振り返ると夜陰にまぎれるようにバルトフェルドがそこにいた。街灯が細やかに照らしているが表情までは分からず、口角が上がっていることだけは知れた。
    「愛という感情は特になくても夫婦にはなれる。ならそのなくてもいい感情のために恋人などという煩わしい関係を結ぶ必要もない」
    「キミの性格は皆も分かっているだろうにモテるんだな」
    「どうせ目的は遺伝子だろう。さしずめ私は種馬とでもいうところだ。
    ――・・・こんな下らない話をするために来たのか?」
     バルトフェルドが一歩こちらに近寄って、今度こそ街灯の光でその顔が見える。笑ってはいるが胸中まで推し量ることは難しい。
    「まさか。近く“翼”を引き取りに行く。それを伝えに」
     青い瞳がふっと細められ、表情が引き締められた。
    「わかった」
    「キミは本当に来なくていいのかい?」
    「表舞台に出るべき人間ではない。それに今の場にいた方が後々都合がいいだろう」
     バルトフェルドは「そうか」と一言だけ。それ以上しつこく言うつもりはないらしかった。
    「まあでも危うくなったらすぐに連絡をくれよ。そのときはボクも歌姫も、全力でキミを迎えに来るから」
     歌姫――ラクス・クライン――の姿が浮かぶ。
     モニター越しにしか見たことのない彼女は、いつも平和の歌を歌っていた。世間知らずのお姫様がそれらしく訴えているくらいにしか思わなかったが、見かけによらずその信念は確固たるもので行動力も並大抵ではなかった。
     “翼”を与えてくれと言われたときはさすがに驚いたものだ。
    「何が起ころうと私に疑念を持つ人間は技術局にはいないだろう。彼女との接点もない。だが、まあ、覚えておく」
    「そうしてくれ。これでもキミのことを心配しているのでね」
     それだけ言うとバルトフェルドはきびすを返すため背を向けた。
    「一つ聞かせてくれ。“翼”は誰に与えられる」
     バルトフェルドの片足がわずかに硬質な音を立てた。そういえば片方は義足だと言っていたか。
    「コーディネイターの少年だ。この状況を最も憂いている」
    「本当に終わるのか?この争いが」
    「そのために使うんだ。キミの“翼”は我々の起源、母なる星に降り立つだろう」
     男はふっと夜陰に消えた。

     血のバレンタインを発端に、プラントと地球との間で戦争が本格化してから一年になる。
     戦争は恋愛以上に下らない
     コーディネイターとナチュラルの種の争いが根幹であるが、コーディネイターであってもナチュラルより能力の劣る者はいるし、逆もしかりである。人間を二分化などできるはずないのにいつまでも争いを止められない一部の人間こそ愚か者に他ならない。
    「一番愚かなのは僕か」
     両親の希望する通りに技術局に入り、命じられるままにニュートロンジャマーキャンセラーの研究を始め、それらを搭載するモビルスーツを開発した。指示通りに動くロボットと同じだ。それ以外の生き方を知らず、戦争を厭いつつも同じ日々を過ごすだけ。
     そこへ強烈な風を吹かせたのはプライベート端末に送られてきた一通の短いメールだった。
    『平和の歌を届けるためにキミの自由の翼を借り受けたい』
     意味深なメールであったが“自由の翼”が隠語であることはすぐに分かった。メールの主はそれが開発されていることや開発者が誰であることも把握している。
    「タイガー?」
     ふざけたコードネールの送り主へ何度か返信し、彼の正体や思惑を知り、乗ってやることにした。
     飽き飽きしていたのだ。日常にも戦争にも。そして分からなくなっていた。己のしていることが何かを成せるのか、世のためになっていくのか。
     現状を打開したかったのは“翼”を与えられるコーディネイターの少年でも、歌姫でも虎でもなく僕自身だ。

    「ありがとうございました」
     鈴の転がるような声で少女は笑った。
     扉の向こうで発進音が聞こえ、モニターにはドッグから飛び立つ“翼”の姿が見られた。バルトフェルドが言っていた通り地球へ向かうのだろう。
    「いえ」
    「美しい翼ですわね。名前の通り、どこまでも自由に飛べそうです。どなたがおつけになったのかしら」
     ラクス・クラインはこの間成人したばかりの十六の少女であるが、それを感じさせない凜とした空気を持っている。
    「さあ」
     そもそも他人との会話が得意ではなく、少女に対してもどう接していいか分からない。
    「あの少年は何者なのです」
     フリーダムに乗り込んだのはザフトの赤服を身に纏ったあどけない少年だった。恐らく本物のザフト兵ではないのだろう。幼さの残る顔ではあったが、そのアメジストの瞳にはラクス嬢と同じくらいの意志の強さが見受けられた。
    「キラ・ヤマト。ストライクのパイロットです」
    「ストライクの?」
     戦争には興味がなかったが、GATシリーズについては技術局にも報告が上がってきており認識していた。あの機体のパイロットだったとは。
    「では彼は地球連合軍なのですか?」
     少女はゆっくり首を振る。
    「元はそうなりますが、今のキラは連合ではありません。ザフトというわけでもない。この戦争を終わらせるためにただキラ・ヤマトとして、あの剣を使われるんです」
    「・・・終わらせることができますか」
     水色の大きな瞳がこちらを見てにこりと笑う。
    「終わらせるんです。そうでなければ“翼”を与えてくださったハインラインさんにも面目が立ちません」
     なんでもないことのようにさらりと言うのでおかしくなった。ふ、と笑みが出てしまったのを見て少女の笑顔も深くなる。
    「フリーダムをお任せくださったあなたのご厚意に報います」
    「そろそろ参りましょうか」
     いつの間にか後ろに控えていたのはバルトフェルドだった。彼らはこれからエターナルに移動し一時的に身を隠すのだという。
     バルトフェルドに頷いて見せてから、ラクス嬢はこちらを一瞥する。
    「ハインラインさんは一緒にお越しにならないのですか?」
     いつかと同じ質問をされた。彼女もこちらの立場を懸念してくれているようだ。
    「私は残ります。今すぐでなくても何かしらの力が必要になる日がくるかもしれない。そのときのためにも技術局にいた方が都合がいいこともあるでしょう」
    「そうですか。くれぐれもお気を付けてください。助けが必要なときはいつでもお声がけくださいね」
    「お気遣い痛み入ります。あなたもお気を付けて」
    「ありがとう。きっと大丈夫ですわ。キラが戻ればアークエンジェルの皆さんにも会えるのではないかと思っています」
     確信めいた少女の言葉だった。
    「アークエンジェル・・・」
    「おもしろい連中だよ」
     横からバルトフェルドが入ってくる。
    「砂漠でやりあったんだが、なかなかに動きの良い艦だった。指揮官の大胆な手腕もあるだろうが操舵士の技術も高い。重力下でバレルロールもするくらいだからな。実際に会うのが楽しみだ」
    「その話は私も耳にしたがガセだろう。四百メートル級の戦艦を重力下でバレルロールなんて不可能だ」
    「そうかなあ、あの操舵を見ているとやってのけそうな気もするけれどね」
     呆れ顔で返すがバルトフェルドは意に介さずいつもの表情だ。
     携帯端末にドッグに向かってくる人の動きを知らせるアラートが入った。
    「早く行った方がいい。ここは上手くやっておく」
    「すまないね、アルバート」
    「あなたに名前で呼ばれる筋合いはない」
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    fuukiari

    PROGRESS年内に出す予定のコピー本の目途が立ちつつあるので、前半を公開。ハイネに声がそっくりな「タカノリ・ヴェステンフルス」が、コンパスメンバー前でライブをやったら…という、限りなく現パロに近い小説です。(キララク、アスカガ、シンルナ+アグネス的描写あり)
    タカノリ・ヴェステンフルス(前半)この日のコンパス本部は、いつになくそわそわと落ち着かない雰囲気が漂う。
    プラントの歌姫ならぬ「歌王」として君臨する、伝説的ロック歌手のタカノリ・ヴェステンフルスが、コンパス本部を訪れ、本部大ホールでスペシャルライブをやるというのだ。

    コンパス本部の大ホール入口は、気持ちいいほどに高い天井から差し込む光が開放的で、新しい時代の世界平和監視機構施設らしい明るさがある。正面ロビーには大きな羅針盤のモニュメントがあり、床にはコンパスの紋章があしらわれている。
    最初にホール入口に現れたのは、あの二人。
    「執務服以外の服でここに来るのは、何だか新鮮ですわ」
    「僕もだよ」
    ライブに先だって、コンパスメンバーに「支給」された、タカノリのライブグッズTシャツ姿のラクスが、やはりTシャツ姿のキラと共にホール入口の羅針盤前に現れる。
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