空に光るはすべて星　041〜050240527
悪天候はむしろ、好都合

空から何か…。水？これが雨？何か光った！かみなり？雷雨？夕立？すごいな…雨宿り？降り止む時間があらかじめ決まっていない？そうなんだ…。タオルありがと…寒いな…。なあ、そっち行っていいか？…あんた、手負いの獣みたいだな…俺、世話になってばかりだけど、せめてあんたをあたためたいんだよ

御曹司は雨を見て目を輝かせたが、夏とはいえ雷雨の中の移動は無茶だった。体温調節に難がある俺の身体はどんどん冷たくなり、安モーテルのぬるいシャワーは気休めにもならず、薄い毛布を被って蹲っていた。やめろ、近付くな。お前のぬくもりを味わったら、俺はお前を手放せなくなってしまうじゃないか


240528
駄目にならない程度でお願いします。

ｼｮｰﾄｺﾝﾄ「テ口リスト」(ｶﾗﾝｶﾗﾝ)「いらっしゃいま」「手を挙げろ」「ﾋｯ」「…お前、見た顔だな？」「何言ってるんですか俺は無害なﾎﾞﾌﾞですよ！あなたこそ元ﾄﾞﾐﾆｺｽじゃないですか？！」「知らん！」「ｸﾞ工ﾙ、探したんだぞ！」「父さん！ややこしくなるから出てこないで！」

「高潔傲慢罪だよ兄さん！」「お前らﾃﾛﾘｽﾄ無視して家族喧嘩はじめるな」「父さん、俺この人と結婚するよ」「なんて？」「絶対に許さん決闘だ！」「加勢するよ父さん！」「俺の意思を無視して話を進めるな」「父さんに勝ったら結婚を許してくれるのか？俺頑張るよ！」「誰と誰が決闘するって？？」


240529
最後の言葉

学園で後輩が懺悔室っての始めて、それが意外と好評で「先輩のも聞きますよ〜」と言われた時、俺は深く考えず「弱み握りたいだけだろ？」って断って、まあ今となっては俺の懺悔とか、洒落にならなくて後輩を困らせるだけだとは思うけど、でも今あんたと話してるこれが、もしかしたら懺悔になるのかな…

俺は懺悔を何度か聞く機会があったが、アレは結局、許されたい奴がするんじゃないかな。甘えとまでは言わないが、自分の人生を他人に肯定して貰いたい奴。俺は俺を許したくない。だから懺悔なんかできない。お前もそうだったんだろ？俺の過去を聞かないお前に、実は俺は随分救われているみたいなんだよ


240530
はい、あーん？

何か食べられるか？と聞かれ、俺は熱で何も食べていない事に気付く。喉が痛くて上手く返事ができない。口をあけろ、と言われ、かさつく唇の隙間に何か冷たい塊がねじ込まれた。それは舌と上顎の間でしゃりっと潰れ、たっぷりの甘い液体があふれる。熱で腫れた喉に気持ちよくて、俺はもっと、とねだった

過労で起き上がれなくなった御曹司に、俺は仕方なく冷凍庫のナジの西瓜を与える事にした。最後に食べた時は、ベッシもソフィもシーシアも…。熱で朦朧としている御曹司の口に、切った西瓜を押し込むと、なんとか飲み込んでくれた。おい、それは俺の指だ。おしゃぶりじゃないんだからいい加減離してくれ


240531
大切だったはずなのに

久しぶりに父さんの夢をみたんだ。父さんの行きつけの店で父さんが「息子が俺の跡を継いでくれたんだ」と嬉しそうに話していて、お店のひとが「それはいい息子さんだ。親孝行だ」と言っていて、俺はそこでああこれは夢だ、俺にとって都合が良すぎる夢だ、と思って泣きながら目が覚めて…俺って最低だな

俺は夢をみない。夢の中で俺を責めてもいいだろうに、あのちいさな子はいなくなってから一度も、俺の夢の中にすら姿を現さない。…まあそれぐらい俺に対して怒ってるのかもな。写真も形見も何もかも全部燃えてしまったから、あの子が確かに居た証明は、俺が目を瞑ると浮かぶあの子の姿だけ、それだけだ


240601
愛せるなら愛してみろ

見えてきた。軌道エレベーターだ。俺はあそこに近付くとヤバいので此処でお別れだ。服や靴は返さなくていい。どうせ難民支援品の残りだ好きに処分しろ。金も端金だから気にするな。お前を攫って監禁した迷惑料だと思えば安すぎるだろ？もう二度と会わないが、元気でな。…おいどうした？いい加減離せよ

まさかあんたがこんな所に居るとは思わなかった。我が社の新しい地球出張所、手狭だけど寛いでくれ。美味しい珈琲を淹れるから。ここは俺が地球に来た時の宿泊施設として使うつもりで…　なあ、俺の気持ちはわかっているんだろ？ソファが大きめなのはあんたを押し倒す為なんだよ。もう逃がさないからな


240602
雨も、悪くない

今日はどう？まだ動けない？雨、止まないな…。なあ、もう少し、ここにいてもいいかな？　…ふふ、ごめんな、ちょっと嬉しいんだよ、俺。あんたに迷惑かけてばかりで、何もお返しできないから、俺なんかの体温で良ければいくらでもあんたを温めたいんだ。どこが、痛いの？少し…触れても、いいかな…？

俺のポンコツな身体はたまに体温調整が上手くいかなくなり、止まない雨に仕方なく取った安宿で俺は動けず呻いていた。不思議と嬉しそうなお前に舌打ちしながら、だがこどもの体温はどうしょうもなく心地好く、今だけだと言い訳しながら好きな様にさせていた。ガンド義体が珍しいのか？あんまり弄るなよ


240603
桜は、まだ咲かない

去年の春、宇宙からこの地域を見降ろすと島が桜色に染まると聞いて楽しみにしてたのに、仕事のトラブルで来れなくてがっかりしたんだ。今年は見られるかな…あれ？訪問先こっちだったっけ？え？咲く時期が早い品種の桜がある？　俺の為に探してくれたんだ！　夢みたいに綺麗だな…。ありがとう嬉しいよ

雨が少し激しく降ったり、ちょっと風が強めに吹いたりしたら、あっという間に散ってしまう桜を、お前は見られなかったと意気消沈してしまうんだな。俺はお前と出逢うまで、春には花が咲く事すら忘れていた。誰かと一緒に桜を見て、綺麗だな。なんて思える日がまた来るなんて、夢にも思っていなかったよ


240604
誰も欲しくない

「いい感じの棒」ってあるじゃないか。え？知らない？公園とかに落ちてる木の枝を夢中になって拾い集めて、弟と一緒に棒のオーディションをやって、握りやすくて丁度いい長さの棒は大切に持ち歩いて、いろんなモノをつついたり指したりして遊んで…なんだよその顔は！？！ガキだと思って笑ってるな？！

野宿していた時、焚火用の枝を集めろと御曹司に言ったら急に「いい感じの棒だな！」とか言い出して、ガキめ、と、笑いが止まらなくなった俺に御曹司はしばらく怒っていたが、翌朝「これ、あんたの」と気に入っているらしい棒を渡されて、それがいまだに此処にあると知ったら、あいつはどんな顔するかな


240605
味見と毒見と、

…大丈夫だよ、眩暈とかじゃないから、今日忙しくてまだ何も食べてな…ごめん気を遣わせて…。ポケットに入ってた？食べろって？ありがといただくよ…。あれ？この味、…あんたは覚えてないだろうけど、えーと、その、便所であんたにねじ込ま…食べさせてもらったエナジーバーと同じ味だよ…懐かしいな

お前何呑まされたんだ？顔赤いぞ？ふらついてるじゃないか…こっちの部屋で休んだ方がいい。座れるか？いくら株主だからって何でも言いなりになる奴があるか。ほら水だ、飲めるか？…何甘えてるんだよ…。ん…。…なんだ随分キツい酒呑まされたんだな？口の中の分は全部舐め取ってやるからしっかりしろ