空に光るはすべて星 061〜070240616
良い子、でしょ
なあ大丈夫?起こしてごめん、ひどくうなされてたから…。めずらしいな、あんたいつもは「寝付きが良いのも任務の内だ」ってすぐ熟睡するのに。ちょっと待って、左眉の上、血が出てる。無意識に掻きむしったのかな?いま手当てを…え?どうしたの?ほっといてくれ?そんなことできるわけないじゃないか
おい、俺を見ろ。お前の目の前に居るのは誰だ?お前の親父じゃないだろ?お前はもう謝らなくていい。お前が親父を失ったのはざっくり言えば俺にも責任がある。好きなだけ俺を恨めばいい。え?そんな事出来ないって?だったらお前はお前自身を恨むのもやめろ。あれは事故だ。お前の親父だってそう言うさ
240617
ぐっない、良い夢を
どこでこんなこと覚えたって?やだなあ、あんたが教えたに決まってるじゃないか。あんたこないだめずらしく酔ってたからな。忘れた?…俺、特に実戦は、昔からいつも、呑み込みが早いって、ほめられ… んンッ、やだ、…そんな激しく、ん、あぁあッ……。…だからだめだって、いったのに…!もう!ばか
お前、どこもかしこもすべすべなんだな。はじめて遭った時はドブに捨てられて震えてる仔犬みたいだったのに。…本当にいいのか?なんて、もう止めてやれないがな。そう、力抜いて、痛いなら言えよ、ゆっくりやるから。…すこしでも気持ちよいところを探して…集中するんだ。うん、いい子だ。もうすこし
240618
第三者いわく、
何でそんなこと知りたいんですか?同世代の友人がいない?こんな会話したかった?はあ…。俺、家出してたじゃないですか。知らない?あの時は替え玉だった?…えーと、まあその時、困ってる俺を地球で拾ってくれた人が、面倒を見てくれて、その、はじめては移動中の車の中で…。歳上の…優しい人でした
…話し掛けるな。俺はいま仕事中だ。お前もそうだろ、真面目にやれ。…は?何を言う?卑怯だぞ?…どうだっていいだろ? 若社長、ってあいつの事か? …いや、違う、いつもはちゃんとCE0って呼んで… そうだよ、一緒に暮らしてる。この式典が終わったらやっと二人っきりになれるんだから邪魔するな
240619
初恋の人でした。
終わったな。そろそろ行くか。…感無量って顔してるな、流石に感慨深いか。お前の元婚約者も美しかったが、お相手の赤毛の長身の美人、…お前の初恋だったんだろ?ソフィから、お前が彼女に求婚してる映像を以前観せられ…違う?いや、もう人妻だし俺は別に気にしてなんか…は?初恋は、彼女じゃない?
父さんは忙しくて、俺が小さかった頃はあんまり逢えなかったけど、母さん達が出て行ってからは、父さんと弟と俺といつも3人で居られるようになって、弟は可愛いし、父さんは強くてカッコよくて、俺は、母さんの代わりにならなきゃと思うようになって、…いま思うと俺の初恋って、父さんだったみたいだ
240620
君の気配
義手ってのは便利でな、包囲されてもう逃げられないって時は、軽く爆破して義手を残す様にしている。そうすると俺は生死を疑われて、その隙に高飛び出来て…だから何で廃棄した義手をお前が持っているんだ?手に入れるのに苦労した?これで葬式をするつもりだった…?うん。俺は生きてるからもう泣くな
髪切ったんだよ。学園に戻った時バッサリ。弟にハサミで切ってもらったんだけど途中で泣き出しちゃって、「似合うか?」と後輩に聞いたら空気が重くなっちゃって…。で、切った髪を見てたら、あんたに触ってもらったこと思い出して捨てられなくなって、綺麗な瓶に入れて、いま引き出しの奥にしまってる
240621
どうでもいいよ、そんなこと
もう来るな、って言われても来るけど。俺が置いていったカップや歯ブラシや下着も捨てないでくれてありがと。俺が移動難しい時に連絡したらいつも宿まで来てくれるよね?自分の身分を自覚しろ、なんてお小言はもういいから、なあ、夜は短いんだからもっと他にヤる事あるだろ?俺もう準備万端なんだけど
お前には分からないかもしれないが…って小言じゃないから聞いてくれ。俺はいろいろあって、余生というか、いつ終わってもいい俺の人生に、何故かお前というきらきら星が飛び込んで来て、空に還して終わりのつもりだったのだが、こうして再会してしまった。俺はもうお前を離してやれないから覚悟しろよ
240622
一緒にいた影響
地球の移動中に俺が限界超えて、父さんを手に掛けた事を皆に告白すると言った時あんたは「そうしたらお前の会社は本当に潰れちまう。建て直したいのなら隠し通せ、罪の償いにはいろんな形がある」って止めてくれたよな。今でもそれで良かったのか悩んでるけど、あの時あんたが居てくれてよかったと思う
お前体温高いよな、子どもだからか? 俺の、夏でも冷たい左半身に、お前が無意識に身体を寄せてきた時、甘えるなと俺は突き放すべきだったのに、お前の温い体温がどうしょうもなく心地よくて…気が付いたら抱き寄せていた。お前と初めて一緒に眠ったあの時、実は俺は、地球に来て初めて熟睡できたんだ
240623
オオカミさんの味見
何でこんな事になったんだっけ?あんたに押し倒されて身動きが取れない俺に、牙がよく見えるよう大きく口を開けて、煙草で色が変わった舌が、ぬめり、と動くと、俺の頬をぺろりと舐めて、「赤頭巾ちゃんはそんなに狼に食べられたいのか?」と、鳩尾に響く声で囁かれて、ああ俺、食べられちゃうんだな今
ちょっと脅すつもりで、腕を掴んでソファへ押し倒して、怯えてベソでもかき出したら「冗談だ」と解放するつもりだったのに。何期待してんだ?しょうがないエロガキだな。「あんたならいいよ」って、お前みたいなネンネには百年早いぞ。こら、腰を押し付けるな。…しょうがない、狼は獅子には勝てないな
240624
そのセリフ、そっくりそのまま返す
意地っ張り、頑固、強情、こうと決めたらテコでも動かない。あんたから見たらまだまだ頼りないのかな俺は。もうあの頃の泣いてる迷子の子どもじゃないつもりだけど、思い上がり?あんたに俺じゃ釣り合わない?でも、俺、これから絶対見違えるようないい男になってやるから。だから、お願い、俺を選んで
ちょっと目を離すと鉄砲玉みたいに飛んで行って、関わらなくてもいいトラブルに頭から突っ込んで、弟を筆頭に関係者各位の胃と心臓をキリキリ痛ませて、形ばかりの謝罪はするが信念は揺るがない。そんなお前が何で俺なんかに執着してんのかさっぱりわからんが、お前が俺に飽きるまでは付き合ってやるさ
240625
きっとたぶん
こないだ弟に殺されかけた時…あ…言っちゃった…。わー!もう終わったことだから!ちゃんと話し合った!仲直りした!ちょっとギリギリヤバかったけど後輩が仲裁してくれて、弟も後遺症とかそれほど…そんな顔しないで!…そうだ、弟にあんたの話をしたらぜひ一度お会いしたいって…あれ?怯えてる??
俺はお前の弟の気持ちがわかる気がするよ。怒るのは心配だからだ。本当はお前もわかってるんだろ。お前、何かあっても隠してひとりでどうにかしようとするよな。猫って怪我すると隠そうとするらしいけど、弱っているのに気付かれるとすぐ襲われてた野生時代の名残が…え?猫じゃない、獅子にしてくれ?