貴方へ贈るマルベリー 吸血鬼の間には決して破ってはならない掟がある。それは
『吸血鬼同士での吸血は決してしてはならない』
吸血鬼の血液は同族にとって猛毒であり、口にすれば必ず死に至る。間違っても種族を絶やさない為に先祖代々から言い伝えられている掟であった。
だがこの同族同士の吸血行為という禁忌は現代になると恋人らの逃避に使われるようになった。身分が違い結ばれることの無い者らや同性同士で恋仲にある者らが「来世でまた出逢い、お互い祝福されますように」とお互いの血を口に含みあの世へ飛び立つ。所謂、心中というものだ。
そんな行為が蔓延ってしまっている現代。年若い子らがそれらを聞いてしまえば影響を受けてしまうのは明白で。
杉下京太郎と桜遥もまた、その禁忌とやらに触れようとしている最中であった。
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