ティースプーン1杯の「おや、マスター。こんな時間に……眠れないのかい?」
「うん、ちょっとね……バーソロミューも?」
「いやぁ……わたしはアレだよ。刑部姫の原稿のアシスタントさ」
「あー……締切がって言ってたね」
「ふふ、こっそり抜け出して休憩中だ」
「お疲れ様……それ、何?」
「これかい? ホット・バタード・ラム・カウだよ。マスターも飲むかい?」
「ラム……お酒?」
「本来はね。ただ、マスターは未成年だしわたしもアルコールはそれほど……なのと、今は原稿中だから、ミルクをメインにラム酒は風味付けに入れる程度のものを用意するよ」
「ん、じゃあお願いします」
「かしこまりました、マイマスター」
「あ……、美味しい」
「口に合ったようでなにより」
「……」
「……」
「なにも……」
「うん?」
「なにもきかないんだね?」
「……レディの秘密を探るのは、紳士的ではないからね」
「バーソロミューは、紳士になったりロクデナシって言ってみたり……忙しいね」
「ふふ、どちらも紛れもないわたしさ。それに」
「それに?」
「君は、きいてほしかったら尋ねなくても話すだろう?」
「お見通し……だね」
「もちろんさ、マイマスター」
「敵わないなぁ」
「これでも、君より長く生きて死んだ身だからね。さぁ、そろそろ眠れそうかい?」
「ん。ありがとう、ごちそうさま」
「カップは洗っておくからそのままで。また眠れない日があれば、いつでも作るよ」
「うん……そうだ。原稿、無理はしないでね。新刊、楽しみにしてるって刑部姫に言っておいて」
「あぁ。伝えておくよ」
「それじゃあ、おやすみ、バーソロミュー」
「おやすみマスター。良い夢を」
ーー甘い香りは、きっと暖かく君を包んでくれるさ。