ドクターの苦手分野「アスクレピオス、ちょっと相談なのだが」
「……」
「そんな汚物を見るような目で見ないでくれるかい?」
「出て行け愚患者」
「相談があると言っただろう、話を……」
「聞きたくないし聞く必要もない今すぐに出て行け」
「今朝からどうも、尻の穴が痒くてね」
「僕は聞きたくないと言った!! 貴様のその耳は飾りか?!」
「痒み止めの処方でしょうか?」
「座れ婦長! そんな処方しなくてもいい!」
「ですがドクター」
「大方あの円卓の騎士のペニスがでかい所為でついた僅かな傷だろう。放っておけ」
「……そうですか」
「おや、バレてしまっていたか」
「とぼけるな。そんな気持ちの悪い魔力の混じり方をしておいてこの僕に隠し通せるとでも思っていたのか?」
「いいや? ここに来た時点で、君の表情から察していたさ」
「貴様……僕をおちょくることが目的ならばさっさとここから出て行け」
「おちょくるだなんて、そんなそんな。先にも言ったが、実際尻が痒くて気が散るんだ。何とかならないかい」
「はぁ……すぐに霊体化でもして傷を治せばいいだろう」
「うーん……」
「バート! ……と、失礼……。バーソロミュー、なぜ医務室に?」
「やぁ、パーシヴァル! なに、大したことでは……」
「ちょうどいい。すぐに霊体化して尻の傷を治してそのキスマークを付け直してもらえ愚患者そしてさっさとここから出て行け」
「バッ……! えっ、は?!」
「あっはっはっは! 君には本当に全部バレているようだね、医神殿!」
「うるさいな。もういいだろう、時間の無駄だ」
「ふふっ、すまないね。では失礼するよ。行こうかパーシー」
「え、あぁ……えぇっと、お、お邪魔しました……?」
「二度とその状態でここに来るな」
「お大事に」
─────────
「はぁ……なんて無駄な時間だクソッ」
「ドクター。彼は何故、霊体化による負傷の回復をためらったのでしょう?」
「下らん理由だ。首元のキスマークが消えるのを惜しんだんだろうさ」
「あら」
「何の面白味もない症状で僕のところに来るなど……」
「ドクターも、恋煩いの対処は苦手なご様子ですね」
「何が恋煩いだ。あんなのはただの色ボケであり病でもなんでもない」
「……そうですか」
「何を笑っている」
「いいえ、なんでも」
「ふん……マスター達に、色ボケ共の医務室入室禁止を要請してくる」
「了解です」