「お前に…言わなくちゃいけねェことがあンだ」
「…?な、なんだ…?」
昼過ぎの陽光の射す部屋の中、男が2人きりで向かい合っていた。
話を切り出した方──ボンドは、最初は意を決したように相手──レトロを見据えていたが、すぐに恥ずかしそうに目を逸らし、視線を床に泳がせる。
レトロは、ボンドが何を言い出そうとしているのか今一分からず、どこか不安そうな表情を浮かべていた。
沈黙の時間がどれだけ続いただろうか。
やがて、ボンドが目を逸らしたまま堰を切ったように語り出した。
自身の過去のこと。──常に周囲から兄と比べられ、親から蔑まれていたこと。そのせいでずっと劣等感を抱いて生きてきたこと。
でも本当は、他人から与えられる愛情に飢えていたこと。
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