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    ᴅᴀʏ𝟪

    スターゲイジー・デッドロック大地を裂く産声は、あの光芒には響かない。

    空は何処までも高いのに、仰ぐだけで理解したつもりでいる。

    それがなんとも滑稽で、馬鹿らしいという話だ。

    ……だけれども、その最たるは。

    これが痩地の上で行われていることだという点に他ならない。

    己を滅ぼすのは、いつだって己だという話だ。



    「その本、また読んでいるんですね〜」

    「……何?オートミールには関係無いでしょ。」

    円卓。いつもの時間ではない、とある昼下がり。

    ただ一人そこに座っていたのはビスだった。それに通りかかったオートミールが、やや不思議がる…けれども、机の上を覗き込んでは納得したように頷く。

    「ぼくもきっと、前に読んだものは忘れてしまっていそうですから。今日は復習の時間にしましょうか」

    「別に、僕は忘れてるわけじゃないよ。」

    「そうですか。それなら、とても気に入った本なんですね」

    「……違うけど。」

    集中できないから、と付け加えて、ビスはそれ以上話すつもりが無いのだという意思を訴えた。普段より口数が少ない気もしたが、まあ集中したいのだろう。オートミールはそう自得して、それを横切り通り過ぎていく。

    ビスはそれに一瞥もせず……というより、初めからオートミールに目線を配っていたわけでも無かったのではあるが。とにかく、手元のそれに釘付けだという表現が適当なような様子だった。

    ……否、焦っていた?

    だって、こんなのおかしいでしょ。一度でも見たものを、僕が忘れる訳ないんだから。

    集中していないだけ?考え事をしているだけ?

    果たして、そんな訳があるだろうか。

    ……しかし現実として、何度読み返したところでこの本の内容がさっぱり記憶できないでいることも、また事実だった。今何行目を読んでいたのか?この章のタイトルは?いつもは無意識に処理出来ていたはずのそんな初歩的な情報さえ、つい意識から滑り落としてしまう。

    急に?

    そう。急に、だ。

    今まで、一度だってこんな事はなかった。何だって正確に記憶できた。それがどれほど今後役に立つのか不明な知識だったとしても、どれほど些細なものだったとしても。

    それが何だ?

    今日の朝食は何だった?今日の点呼には何と返答した?今朝の日差しの色、ベッドの柔らかさ。……あの人の表情は。

    忘れたとか、そういう事ではない。恐らくね。

    何故なら、過去の何もかもは鮮明に記憶しているから。そうだね、例えば…見上げた夜空の瞬き。かくれんぼした時にシルルが隠れていた場所。中庭でオートミールが語っていたあの花の鮮やかさ。それから……アルタイルとエミリーと、ビーネの事。

    正確に言うのなら、ビーネの事は“観て”いない。事後に聞いただけだから。でもその日を境に居なくなったんだから、本当に廃棄されたのだろうね。

    …ほらね?何だって“記憶”しているのに。

    だというのに。

    今日のことは、何もかもが記憶から消去されているらしい。最初から保存されていない、の方が表現としては正しいのかもしれないが。

    だって、データを消去するためにはデリートという工程が必要なんでしょう。

    僕のデータを、わざわざ僕自身がデリートする訳がないんだから。僕に限って、僕の意思でなんて。

    おかしい。何処が?

    ……いや、流石に違うでしょ。

    考えたくもない、こんな事。

    無駄なことを思考する余地があるのなら、この本を読み進めていた方がずっと有意義だ。それを身体にも言い聞かせるように、ぐっと上半身を持ち上げて伸ばす。

    ところで、身体と視界が連動していないというのは、こういうときかなり便利である。

    身体をどんなに動かしていても、ポッドをそちらへ向けていれば視線が逸れることもない。つまり言い換えれば、仰向けに寝ていても、後ろ向きに立っていたとしても、正面を向けるということ。

    生憎半分ほどは生身の身体であるから、長時間同じ姿勢で居続けるというのがどうにも耐え難いのだ。特に読書などをしている時は。

    何とか読んだ…このページを読んだはずだ、記憶したはずだ。”理解”したはずだ。次のページを捲ろうとして右手を持ち上げる。……正直、既に指先の感覚なんてものは疾うに無いが、紙を捲るくらいの用事ならばまだ使えてはいる。

    だけれども、震えはどうにも抑えが効かない。痺れが全く存在していなかった頃などは特に無かったが、日に日に蓄電されていく身体に恐らく比例しているのだ、これは。

    本当に腹立たしい。

    何が?……何もかもが!

    「……あら、ビス。珍しいわね…?」

    先程から響いていた足音の主が、真横で口を開いた。こちらとしては応対する気分でも無かったので、視線は送らない。口も開かない。

    ……いいや、やっぱり。

    応対の気分で無いことは確かだったが、問いたい気分ではあったかもしれない。

    真実を。

    「……ねぇ、ちょっと。」

    ビスは顔を上げて、通り過ぎかけていたその後ろ姿に声を掛けた。少し背丈の伸びたそれが振り向いた顔は、薄らと笑みを浮かべたままで…ムカつくほどいつも通りだ。感情がまろび出ないように取り繕ってる自分を、酷く貶されているように感じる。

    「あんたは、なんとも思わないの?」

    「何のことかしら。」

    本当に心当たりなどないのだろう、その髪を、枝を、ふわふわと漂わせて首を傾げた。星を宿した大きな瞳は、“僕”を見つめて逸らさない。

    「アルタイルのことだよ。…エミリーも、ビーネの時だってそう。」

    「……本当は、どうとも思ってないんでしょ。」

    ビスのそれはいつも通り淡々とした語気ではあるのに、そこに込められたものはいつも通りではないらしい。

    この人への不信感、この家への不快感……それから、己の身体への不安?積もり積もったものが決壊した瞬間、それは歯止めが効かない濁流となって込み上げてくる。吐き出す以外に、解がないことを知っていた。

    「当たり前だよね。だって、ずっと昔からここにいるんでしょ。そうやって僕たちと同じようなのを、何度も何度も廃棄してきたんだ。」

    ……こんなこと、本当は言いたくない。

    でも、失敗作だとはもっと言いたくなかった。だって僕は、僕をそう思わないから。

    口が裂けても、なんて文言は誇張表現であるが、きっと本当に口を裂かれたとしても、僕はその単語を己に対して用いる事はないだろうね。

    「アルタイルに飲ませたあれは何?致命に追いやる薬?それとも毒?」

    「エミリーの時にはしてなかったよね、選んであげてるの?」

    憤りと疑問が渦を巻いたそれは、ママの返答を待つ事もできない。……だって、ずっとあんたが嫌いだった。

    偽の母親なんて無意味だから。僕たちは未来を喜べる命ではないのに、その最後を彩りたいなんて思わないから。

    だいたい、“ママ”なんて名乗っておいて、実のところは僕たちを廃棄するのが仕事なんだろう。だから不愉快だ、こんな生活にだって疑問が湧いてくる。

    こんな家に送られて、尽きるその日を待つまで楽しく普通の生活を?……ふざけてるでしょ。

    それに一体何の意味がある?不用品はすぐに廃棄すればいい。ゴミはすぐゴミ箱に放られる、それと同じ事だ。

    ……きっと、その仕事をこの人が望んでしているのではないという事。誰かに、恐らくはあの逝かれた人にでも雇われているのだろうという事。……この人も、恐らく僕たちと同じように身体を“弄られている”事。

    分かっている、頭では“理解”している。

    だけれども。理解するということと、了諾するということは、ニアであってイコールではない。

    「……そうね。」

    畳み掛けるように口走ったそれに対するのは、ママから漏れ出た、是とも非とも捉えられる曖昧な答えだった。

    感情を押し殺したような瞳で、取り繕うような仕草で。その姿はまるで、…………

    やめてよ。

    そんな顔で僕を見ないで。

    「ビスは、知りたいのよね。」

    ママはゆっくりと、ぽつりぽつりと。本当に辛いのだと表明するような表情で。

    「…あなたたちの命が、順当に扱われたのかということ。」

    「やめてよ、失敗作みたいに言わないで。」

    間髪入れずに口を吐いて出た言葉。それは紛れもなくビスの本心ではあった…あったのだが。

    同時に自分たちは命を弄ばれたのだと、他の誰でもない己が決め打った発言だったような気がして、ぐっと口を噤んだ。

    ……調子狂うな。

    何度本を読み返しても、内容を綺麗に記憶できないこと。いつもに増して響くような頭痛がすること。右半身の痺れが酷いこと。

    いつもならば至極まともに出来ていたことが、何だか最近は全て上手くいかない。それはきっと何てことはない、メンテナンスでもすれば直るようなことなのだろうに。

    ビスはひとつ息を吐き出して、髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き上げた。それはとても“人間”らしい行動で?

    無意識であったのならば、それもまた人間としての生を助長する行為に他ならない。

    「分かったわ。」

    ママは小さな声で、だけれども確かな意思の込められた声で。

    円卓を囲んで、ママも自席に腰を下ろした。ちょうど対角線に位置しているから、嫌でも視線がかち合う。

    「…………」

    特に発言したいことも無かった。だから、その様子を静かに見つめていた。この人をこれだけ注視したのは、この時が初めてだったかもしれない。

    「まずね。ママは、あなたたちのことを本当に愛しているわ。」

    「……そんな事を聞きたい訳じゃない。」

    何度も聞いた、そんな事。その度に腹立たしいと思っていた。

    「そう自認している、という方が正しいかもしれないけれどね。正確かと問われたら、そうではないかもしれないわ。」

    「つまりは、そうね…この感情は、インプットされているものだということよ。」

    「…そう。」

    実験体だったのなら、そういうこともまあ、あるのだろうね。特にこのような特殊なポジションに置くことを想定しているのならば。

    「でもね、ママは…このママは。あなたたちだけのために産まれたのよ。」

    「…つまりどういう事?いちいちくどいよ、もっと簡潔に話してくれないかな。」

    ビスが食い気味に反応するのとは対照的に、緩やかな笑みを浮かべるママはゆったりとペースを崩さないままで。

    「言葉の通りよ。今ここにいるママは、あなたたちだけのママ。」

    「……何それ、そういう態なだけでしょ。だって、ずっと前からここにいるんじゃないの。」

    「そうね、いるわ。でもそれは、ママではないの。記憶は継承しているけれどね。」

    「継承…?」

    正直、この人の話はいちいち回りくどくて仕方がない。だけれども、一度灯された火種を殺せるほど無頓着でもいられなかった。

    「まるで別の個体もいるような言い方だけど、言葉の意味は理解した上で話してるの?」

    「ふふ、ええ。」

    ああ、本当に腹立たしい。

    ビスは矢継ぎ早に口を開く。だけれども、そこから本来発されるはずだった言葉が紡がれることは無かった。

    ブチン。

    何かが切れたような?ケーブルを抜いたモニターだとか、引き千切れた紐だとか。そういうものが発する音が鳴った。頭の中で。

    対岸に座るあの人の顔が曇ったのが見えた。

    同時に、肌を滑る生暖かい粘液。それがパタパタと滴り落ちていくのを感じる。

    「え?」

    無意識に添えた手に、遅れて視線を落とした。赤だった、血だ。

    何故?

    「ビス?」

    何処から?

    「来なくていいよ、大したものじゃないから。」

    ママが駆け寄ってくる。だけれどもそれを制止させた。

    ポッドで確認する限り、ただの鼻血のようだったから。この程度なら、別にどうと言うこともなかった。……出たのは初めてだったけれど。

    ママはそう、と一言だけで了承する。そのまま一度何処かへ姿を消し、すぐにタオルを抱えて帰ってきた。

    それを無言で受け取って、患部…といっても、鼻が露出している訳ではないから直接的には難しいが、下顔面を抑え込む。

    真白いタオルが徐々に赤く侵食されていくのを、見つめていた。多量出血でないとはいえ、圧迫していない状態ですぐに止血させることは難しいだろう。

    「どうしちゃったのかしらね…」

    「別に、ただの鼻血だよ。気にするようなことじゃない。」

    「ぶつけたりはしていない?でも、今までお話していただけだものね。」

    ママが原因を探るようにビスの傍で覗き込んでいる。それを近い、と一刀して払い除けた。

    「それより、続きをはやく話して。」

    はやく聞いて記憶しておかないと、また溢してしまうかもしれないから。こんな大切なこと、こんなに興味深いこと。

    本の世界とは違う、僕たちを取り巻く世界の話だ。気にならない方がおかしいでしょ。

    ママは本当に大丈夫なのね?と念押ししてから再び着席した。こちらには眉尻を下げ、本当に心配しているといった表情を向けたまま。

    ガンガンと鐘が鳴るような痛みが頭蓋に響いている。こめかみを思い切り締め付けられるような痛みも。

    ……今日は一段と頭痛が酷かった。

    この鼻血をきっかけにして、更に酷くなっている気がする。だからこそ普段より沸点が低いのだろうということは自覚していた。

    イライラするからそんな顔で見ないで。

    どうせそれも、インプットされた感情に支配されてるだけでしょ。本当にあんたが心の底から生み出したようなものじゃないでしょ。

    ぐらぐらと頭が揺れる。頭痛で?怒りで?……恐らく両方。それは段々と大きくなり、響き、そうして、それで?

    「……ッあ、ゔぅ……っ、……!」

    ガチン。鈍器のような何かが、突然頭蓋の内側を暴れ回るような耐え難い痛み。先までの比ではない程の。

    椅子の上で縮こまる。痛みに喘ぐのを、必死に奥歯で噛み殺した。……正確には否、そうでもしていないとおかしくなってしまいそうだったから。

    頭が割れそうだ、という言葉を思い出した。

    頭を手で抑えたところで施しようが無いことは理解しているのに、それ以外の行動を取るのはどうにも難しい。

    伏せた頬に何かが伝っては、絶えず滴り落ちていく。汗だ。

    痛みは交感神経を興奮状態にし、呼吸数や心拍数を増加させる。それに伴うのは血管収縮による血圧の上昇、発汗作用、筋繊維の緊張などだ。これは、正常な人体全てに備わっているメカニズムである。

    ……ああ、嫌だな。汗かくの嫌いなのに。

    「ビスっ…!」

    ママが椅子を大きく鳴らして立ち上がる。

    うるさい。近付かなくていい。

    だけれどもそれは、奥歯を開き声帯を震わせるには至らなかった。いつの間にかあんたが持ってるもの、それ……

    「……ッ、やめてよ…!」

    丁寧に紫色の包装紙で包まれたそれを差し出してくるママの手を、ビスが力無く振り払う。

    乾いた音がテーブルの上を跳ねていった。

    「頭おかしいんじゃない……、さっきの話の流れで、受け取る人なんかっ、いない……」

    「……でも、苦しいのでしょう。」

    「だったら……なんなのさ。」

    「これで楽にしてあげられるもの。」

    僕をまっすぐに見つめる紫の双星は、ムカつくほどいつも通りだ。どれほどに分厚い雲で空が隠されていても、この人の両の星だけは常に捉えて逃されない。

    「……っ、」

    ……あれ、今何を言おうとしたんだっけ。

    言葉が何も浮かんでこない。今まで、何の話をしていたんだっけ。

    何も、理解が。

    僕の頭の中にたった今産まれた闇は、急速に拡大し覆い尽くしていく。それは渦を巻いて、何もかもを引き摺り込んでいく奈落になる。

    そうだね、例えばさ。

    この星のシュワルツシルト半径は9mmとされている。

    シュワルツシルト半径、またを重力半径とも。これは、天体の質量による重力が光ですら脱出できなくなる半径であり、この半径よりも小さく収縮した天体はブラックホールになる。

    ……難しい?仕方ないね。つまり簡単に言えば、これはブラックホールの半径と言い換えることができる。

    天体をどれ程に圧縮すればブラックホールに変化するか、という理論値だ。

    それならば、人間がブラックホールとして発生する場合の半径は?

    ……分かっている。直径12,742kmの地球ですらミリ単位の世界なのだから。たかだか1.34mの人体では先ず成り得ないだろうし、そもそも重力を発生させている訳でもない。仮として導き出す事はできるけれども、ナノやピコで表記できるのかどうかも怪しい。

    では、今この瞬間も耐えず僕のデータを蝕んでいくこの暗闇は一体何なのだ?塒を巻いた漆黒の渦が、纏わりついては何もかもを掠め取っていく。

    ああ、これでさ。

    自我もデータも、“僕”を形作っていた全てがそれに堕ちていくんだろうか。ブラックホールに堕ちた全ては引き伸ばされ切り裂かれて、一点に凝縮する。

    そうしてもう、出てくる事は叶わない。

    正確には、秒速30万kmの速度で脱出する事が可能である…と言われているが、光より早いその速度はこの宇宙において未だ発見されていない。

    つまり、つまりは……そうだね、堕ちていく”僕”は、もうこの世界のどこにも存在しなくなるということだ。

    “僕”を形成していたものは、この無機質で組み上げられた身体ではないから。まあまだ半分ほどは有機物だけれど。

    ……機械に心は宿るのかという通説がある。

    心と言えば曖昧な表現ではあるが、つまりは知情意の働きを総体して呼称される概念だ。一般的には心臓、あるいは脳に存在すると言われている。

    僕の左半身は無機物だが、心臓も左に位置している。…つまり、この通説が否であるのならば、心というのは感情を司る大脳辺縁系の俗称だと言える。

    だけれどもし、僕の脳も無機物で侵されているのだとしたら…この“僕”は、一体何処から来たのだろうね。

    もう散り散りになっていく僕は、機械が夢見たただのままごとだったんだろうか。

    「おやすみ、ビス。」

    暗闇に囁き落とされた声。聞き馴染みのある、嫌いな声。

    ……うるさいよ。

    最後までこの人のことを、信用する気にはなれなかった。仮に信用したとして、何か変わることがあるわけでも無かったけど。

    でも、みんなのことは……まあ、賑やかではあったんじゃない。

    死を待つだけのこの家で過ごした日々は、今思えば無意味では無かったのだと思わなくも、ない。

    ……もし、もしもだけれどさ。

    こんな汚れた惑星じゃなくて、もっと普通の何処かの星で。僕もみんなも、普通のただの子どもだったら。

    もっと違う未来があったんだろうか。

    ……なんてね。たらればの話だ、どれもこれも。

    ああ。触れてみたかった。見てみたかった。飛び込んでみたかった。

    こんな冷たい闇の中ではなくて、あの光が散り煌めく闇の中へ。何故だか惹かれる、あの空の彼方へ。

    もっと…知りたかった。

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    ——— 起動、確認。

    「廃棄対象児童No.███、アスター・エルクロス。」

    「不調の完全進行による処分を完了しました。」

    「廃棄対象児童の残数は2名です。」

    ——— 記録、終了。
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