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    amemoyo572

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    amemoyo572

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    全日制に通う悟と夜間定時制に通う傑の話。
    五夏

    タイトル未定 近いからと言う理由で選んだ学校は勉強が大変だとか仲が良い友人が居て毎日楽しいとか、そう言う類いのものは全く無くて、ただ過ぎ去るだけの日々を退屈凌ぎに通うだけの場所だった。
    開始五分前に教室に入る、見慣れた変わり映えもない教室には、おはようの挨拶を交わすクラスメイトは居ない。窓側から三番目の一番後ろの自分の席に一直線に向かう、自分の席に着くと持ってきていた教科書を鞄の中から取り出し机の中に入れようとした所コツンと何かにぶつかった。机の中を覗き込むと、そこには一冊の本が入っていた。取り出して表紙を見ると明らかに自分のとは違う教科書だった。不思議に思いながら誰の教科書だろうと思い裏表紙を見る、そこには夏油傑と書いてあったのだが、なんと読むか分からなかった。間違いなく同じクラスにこの漢字を書く人は居ない。自分の机に知らない人の自分が使っている物とは違う教科書が入っている理由を考えるも皆目見当もつかなかったので、ろくに会話もした事のない隣の席のクラスメイトに声をかけた。
    「なぁ、この教科書って知ってる?」
     五条に突然話しかけられたクラスメイトは少し驚いてから返事をした。
    「見た事ないけど、中身は?」
     そう言われ教科書のページをペラペラとめくり確認してみたところ基礎の基礎とても簡単な内容の教科書であった。
    「中学のおさらいみたいな教科書」
     そう答えるとクラスメイトは閃いたかのように答えた。
    「もしかしたら夜間定時制の生徒の教科書じゃないかな?」
    「夜間定時制?」
    「そう、学校に行きながら仕事をしてる人や色々な年齢層の人が高卒の資格を取りたくて通ったり、まぁ色々だよ。ここの教室使ってたんだね、知らなかったよ。」
     五条はその時に初めてこの学校に定時制がある事とこの教室が定時制の生徒たちが使っていた事を知った。教えてくれてありがとうと礼を言い再び忘れ物の教科書の名前を見た、ものすごく綺麗と言うわけでは無いが読みやすく丁寧に書かれた文字を見てこの教科書の持ち主はきっと真面目で優しい人なんだろうな、なんて思いながら書かれた名前をそっと指でなぞり間違えて持って帰らないように彼の教科書を一番上にして机の中にしまう。教室の扉が開き担任の教師がホームルームを始めた。
     知らない事を知れるのは好きだから真面目に授業は受ける、サボったりもしない。ただ他人にあまり興味が持てない、ひとり教室で昼食を食べるのも気にならない他人にどう思われようが、どうでも良かった。だけど今日は、お昼休憩になると五条は昼食のパンと教科書と校内使用禁止の携帯電話を持ち出して騒がしい教室を後にした。
     休憩中に自分の通う高校のホームページを開き定時制のページを探して読んだ、授業が何時に始まり何時に終わるか細かな時間割や行事の案内が書いてあった、全日制の授業と随分違うんだなと思った。帰り際にふと好奇心が湧いて机に一言『名前なんて読むの?』と書いた。



     定時きっかりに仕事を終えた夏油は急いで学校に向かう。同僚達にお疲れ様です、お先に失礼しますと挨拶をして足早に立ち去った。授業開始の十七時二十五分まで、ほんの数分の時間もない、自転車で十五分程のの距離を急ぐ。足早に教室に向かい一時間目の教科書と筆箱それからノート以外を机の中に入れようとして奥まで入らない事を不思議に思い手探りに机の中を確認すると何かに手が触れて引っ張り出すと自分の教科書が入っていた。そうか、昨日忘れて帰ってしまったのか。全日制の同じ机を使う生徒には申し訳ない事をしてしまった、邪魔だっただろうなと心の中で謝罪をした。
     全日制の生徒はこの教室を定時制の生徒と共有している事を知っているのだろうか自分一人の机じゃないと言う事を知っているのだろうか、きっと知らなかったはずだ私が教科書を忘れるまで。どうせ年に数回程度しか交流する事も無いのだから考えても意味がないし、そもそも顔も知らない相手だ、もしも何処かで会ったとしても気がつかないだろう。
     そろそろ始まる授業に頭を切り替える。丁度よく教室に入って来た教師の方を向いて聴く姿勢をとる。いつものようにおはようございますの挨拶から始まり教師は授業を始めた、筆箱からシャープペンシルを取り出す際に机の右上に文字が書かれている事に気がついた。落書きだと思われたそれは丸みを帯びた文字で『名前なんて読むの?』と書かれていた。何の事だろうと少し考えたが忘れて帰ってしまった教科書の名前を見たに違いない。初見で読める人はほぼ居ない自分の名前が気になったのだろう。一時間目が終わり短い休憩時間に自分宛に書かれた文字を消して『げとうすぐると読みます』と返事を書いた。



    「げとうすぐる……」
     翌朝登校した五条は机に書かれた文字を周りには聞こえないくらいの声量で読み上げた。響きが良く口馴染みが良い名前と綺麗で優しい文字、自分だけのために書かれたその文字が嬉しくて、汚さないように教科書の名前にしたように、そっと机に書かれた文字を撫でた。消してしまうのがなんだか、もったいない気がしてスマートフォンを取り出しカメラに収めてから消しそして『俺は五条悟(ごじょうさとる)よろしく』と書いた、なんだかもったいない気がしたのだ、この縁を切ってしまうことに。日常に飽きていた五条に突如現れた非日常が心を躍らせて居た。

     
    夏油は教室に着くなり座りもせずに自分の、昼間の生徒と共有している机を確認した。
     五条悟くんか、と心の中で名前を呟いて『こちらこそよろしく』と返事を書いた。


     部活をして居ない五条はホームルームが終わると直ぐに帰宅する、だから最終下校時間が何時だとか定時制の授業の開始が何時からだとか、そう言ったことは一切知らなかった。
     『こちらこそよろしく』と書かれた文字を今回もスマートフォンのカメラで撮影をして次になんと書こうかと悩む、共通の話題もなく何を書いて良いか悩んで居たらいつの間にかお昼休憩になって居た。五条は顎に指を当てると少し考えた後にスマートフォンを取り出して学校の定時制のホームページを開いた、先日も見たばかりなのだが何か共通の話題はないかと探すためにもう一度ページを開いたのだ、年間行事のページをスクロールしていると赤文字は全日制と合同行事と言う旨が記載されて居た。胸を躍らせながら四月の行事から確認して行くと七月に希望者で行くサマースクールそして八月に林間学校そして九月の文化祭が合同行事と記載されて居た。希望者のサマースクールと林間学校は一年生の時なのでもう終わっていた。と言うことは九月の文化祭が唯一の合同行事なのかもしれない。五条は去年の文化祭を何をして居たか、いまいち覚えて居なかった、そのくらい味気ない興味もない行事だったのだ。ついでに全日制の最終下校時刻を調べたら十九時と書かれて居た。
     五条は机に書かれた夏油の文字を消した後 『俺この学校に定時制が有るの知らなかったんだ』と書いた。
     その後も途切れる事もなく毎日一言づつお互いに机にメッセージを書いて交換をした、五条は毎回スマートフォンで夏油からのメッセージを撮影した。

     汗ばむような日が増えてきて梅雨入りの頃にはジメジメと湿度が高く日本特有の暑さが襲う、期末テストが終われば修学旅行だ。行き先は国内と東南アジアから選べたが五条は仲良くもないクラスメイトと海外に行くのは気が引けたため国内を選んだ、修学旅行の時期、七月上旬には梅雨明けしている沖縄か梅雨がない北海道か、実際には蝦夷梅雨と言うものが有るがそれも六月中旬から下旬にかけての約二週間のため修学旅行期間には終わっている、その二択で多数決を取り今年は北海道に決まった、もちろん五条はどちらでも良かった。
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    amemoyo572

    INFO2025年1月12日インテックス大阪 今夜帳の中で参加します。
    こちらはサンプルページとなっております。
    【サンプル】明日がどうなっても構わない 明日がどうなっても構わない
     

     近いからと言う理由で選んだ学校は勉強が大変だとか仲が良い友人が居て毎日楽しいとか、そう言う類いのものは全く無くて、ただ過ぎ去るだけの日々の退屈凌ぎに惰性で通うだけの場所だった。
     開始五分前に教室に入る、見慣れた変わり映えのない教室には、おはようの挨拶を交わすクラスメイトは居ない。後ろ側の扉から入り窓側から三番目、一番後ろの自分の席に一直線に向かう、席に着くと持ってきていた教科書を鞄の中から取り出し机の中に入れようとした所コツンと何かにぶつかった。机の中を覗き込むと、そこには一冊の本が入っていた。取り出して表紙を見ると明らかに自分のとは違う教科書だった。不思議に思いながら誰の教科書だろうと思い裏表紙を見る、そこには夏油傑と書いてあったのだが、なんと読むか分からなかった。間違いなく同じクラスにこの漢字を書く人は居ない。自分の机に知らない人の自分が使っている物とは違う教科書が入っている理由を考えるも皆目見当もつかなかったので、ろくに会話もした事のない隣の席のクラスメイトに声をかけた。
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