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    JBF2024無配りくいおの続き、推敲前のもの

    短夜に(仮) 地元食材をふんだんに使ったメニューのある食堂での食事は、陸の願いのひとつだ。
     まだまだ食べ盛りの二人が満足できる質と量の食事は、朝と夕の二回に渡り二人の胃袋を満たしている。それぞれ毎回別のメニューを注文してシェアするほど、二人は地元の食堂にしっかり胃袋を捕まれていた。一織に至っては、兄を思い浮かべ罪悪感を覚えながらも箸を止められないほどだった。
     ここに来て口にした、採れたて野菜の天ぷらも、美味しい水で打った蕎麦も、具沢山の味噌汁がついた日替わり定食も、どれも二人の口に合っている。すっかり顔馴染みになった店主には挨拶のように「今日もいい食べっぷりだったね!」とついさっき送り出されたところだった。
    「本当に車じゃなくて大丈夫?」
    「いえ、歩きましょう」
     引き戸を閉め暖簾をくぐる一織を振り返り、陸が問う。
    「腹ごなしです」
    「あはは! 一織にしてはいっぱい食べたもんね!」
    「そういうあなただって追加注文してたじゃないですか……」
     ほんのりと頬を赤らめながら、珍しく一織が口を尖らせる。
    「だって、美味しすぎて」
    「ぺろり、でしたね」
    「一織がね」
    「あなたもね」
     二人は互いに顔を見合わせ一瞬の沈黙のあと、ほぼ同時に吹き出した。

     少し歩いただけで汗ばむ昼間とは違い朝の風は心地よく、陸は両腕を広げて深呼吸し歩き出す。二人が目指すのは、昨日ちなつに教わったうさぎ石だ。
     二人並んで緩やかな上り坂を登っていく。他愛もない話をして、いつもの軽口を叩き合い、時折農作業中の住人に声をかけられながら。
     朝の散策を満喫しながら三十分ほど登ると、登山道沿いの木々はいつの間にか緑の密度をぐんと増しており、さらに上の方まで続く登山道が広がる。二人が立ち止まった登山道から少しだけ踏み入った茂みにひっそりと、それはあった。
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