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    noa/ノア

    @eleanor_dmei

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    noa/ノア

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    [風信&南風✈] パイロットAU。休憩室のソファで映画見ながら寝落ちた二人。
    彼シャツ案件みたいなのがやりたかっただけ。

    #天官賜福
    Heaven Official’s Blessing
    #風信
    windGod
    #南風
    southerlyWind
    ##風南
    ##パイロットAU

     夕日も落ちて、夜が始まろうかという時間の休憩室。しんとした静けさと薄闇に満ちた室内に入った風信は、眉間を揉みながら大きな溜息とともにソファにどさりと腰かけた。
     だがその途端、尻の下に何かぐにゃりとしたものを感じ、風信は思わず飛びすさった。
    「……いっ……!」
    「ぎゃっ……!」
    ソファの上でなにかがむくりと起き上がる。
    「……南風?」「風信機長??」
     ソファの端に身を引いて目を丸くしている顔をまじまじと見つめる。
    「すまん、全然気が付かなかった。足、大丈夫だったか?」「はい……」
    「どうしたんだこんな真っ暗なところで」
    「ちょっと休憩を……って、風信機長こそ、電気つけずに……」
     まあ確かにそうだな、と思いながら風信はシャツを脱いで下に来ているTシャツ一枚になると、だらりと背中をソファの背に預けた。
    「はあ……今日のフライト、ちょっと疲れすぎて、帰るのすら億劫で……。一休みしてから帰ろうかと」
     風信が言うと南風も隣に座りなおす。彼もシャツを脱いでラフな格好に替えている。
    「機長もですか……。あ、例の噴火の影響ですか?」
    「そうだ。まったくルートは変わるわ、降りる空港もかわるわ、風向きやらなんやら……勘弁してほしい」
     急な変更にも対応できるようにしているとはいえ、イレギュラーはやはり疲れる。
    「お前も、急にフライト入ったんだってな」
    「そうなんです」南風が小さく溜息をつく。「飛ぶ予定だった人がこの嵐で戻って来られなくて急遽。上限時間ぎりぎりまで飛びましたよ。明日も朝からフライトだし……」
    「俺たちは、いつも地球に翻弄されるな」
     二人とも、疲れを染み込ませるかのようにぐったりと全身をソファに預け、無言の時間が流れた。
     どれくらいそうしていただろう。風信は突然むくりと体を起こした。
    「……映画みないか?」
    「……え?」風信の唐突な言葉に、南風も驚いたように体を起こす。
    「いや、こういう疲れた時とか、落ち込んだ時はアクション映画を見るの結構いいぞ」
     お前がよければだが、と遠慮がちに言う風信に南風は頷いた。「いいですね」
     風信がソファの前にあるテレビの電源を入れる。
    「確かこのテレビは接続できたはず……」と言いながらスマホを操作する風信の手元を南風が覗き込む。
    「機長、好みとかあるんですか?」
    「いや、特にないが……あ、このシリーズどうだ?」
     スクロールしていた風信の指が止まる。主人公がインポッシブルなミッションに挑むシリーズだ。
    「あ、面白いですよね……5作目のアレはパイロットとしては勘弁してほしいですけど」
    「だよな。……お、新しいのがある」
    「あ、それまだ見てないです」
     風信がタップするとテレビ画面で再生が始まる。
     二人とも、何か言葉を交わすでもなく、画面で繰り広げられるアクションを見つめた。だがそうしていると、頭の中で忙しく行き交っていた今日のフライトのあれこれは、いつのまにか薄ぼんやりと存在感を失っていき、肩から重さが消えていった。
     視線の端で何かが動く気配に風信が横を見ると、いつの間にか南風は目を閉じてうつらうつらと頭を揺らしていた。画面では主人公が敵と壮絶な戦闘を繰り広げている。だが、激しいアクションを見ていると、画面の中の彼らにエネルギーを吸い取られるように、不思議と眠くなったりするものだ。主人公がバイクに乗って崖から飛び降りるのと同時に、風信も眠りに落ちていった。

    「おい、南風、起きろ!」
     ゆさゆさと肩をゆらされて、南風はゆっくりと目を開けた。
    「お前、今日は朝からフライトじゃないのか?」
     南風は風信の声にがばっと体を起こした。周りを見回し、休憩室のソファで寝てしまったらしいと気づいて、腕時計を見る。南風の顔が青ざめた。
    「……ショーアップまであと五分……!」
     ソファから飛び降り、猛スピードで床に落ちていたシャツに腕を通す。
    「とりあえず、社内でよかったな」風信の声を背に休憩室から走り出た。
     フライト前に出社のサインをするショーアップのカウンターにいたのは、同期の職員だった。
    「おー、南風、ぎりぎりだぞお前。珍しいじゃん」
     乱れた髪を撫でつけながら走り込んできた南風を出迎えた彼は、息を切らしながらサインをする南風の肩を見て眉をひそめた。
    「……おい、お前いつ昇格したんだ?」
    「え?」
     彼の目線を追って南風も首を回す。
    「……あっ!」
     シャツの肩についている肩章には、金色の四本線が入っていた。
    「しまった……風信機長と寝てて……間違えたんだ」
    「……え?」今度は彼のほうが怪訝な顔をする。だがそこで廊下からバタバタと足音がした。
    「南風!」
    「風信機長! すみません、シャツ間違えました!」
     カウンターの外の騒ぎに室内の職員の目線が集まり始める。
    「あの、えっと、すぐ脱ぎます!」
    「バカ、ここで脱ぐな! ちょっとあっちへ……」
     ボタンに手をかけた南風を風信が部屋の隅へ引っ張っていく。
     キャビネットの影で風信はぐっと南風を横に向かせた。南風が目を丸くして横を見る。風信は南風のシャツの肩ベルトのボタンを外し、肩章を抜き取った。
    「このほうが早い」
     言いながら自分のシャツからも同じように三本線の肩章を外し、手早く付け替えた。
    「昨日来てたシャツで悪いな」「いえ……」
    「フライトから戻ったら連絡しろ」
     言いながら風信は部屋を出ていった。南風が首を回してこっそりシャツの肩に鼻を近づけるとうっすらと風信機長の匂いがした。だがすぐに我に返り、ばたばたと部屋を出ていった。
    「なあ」カウンターで一部始終を見ていた職員は、横で同じように首を伸ばしていた同僚に囁いた。
    「南風の首元、なんか赤く、こう……ついてなかった?」自分の首の後ろを指さす。
     同僚が目を丸くする。
    「風信機長って……しるしをつけたいタイプなのか?」「ああ見えて意外と?」
     ひそひそと言葉を交わす二人は、南風の首元のそれが、ソファの背で下敷きになったシャツのボタンの跡だとは知る由もなかった。
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