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    dandyhamaki

    @dandyhamaki

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    dandyhamaki

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    べったーに投げてたやつ。荘園ENN組の馴れ初めというか知り合うアレソレ途中まで。
    最終的に初セッセするまで書こうとしてたと思う。
    初期に描いた落書き漫画とかの要素が所々ある

    ##SS

    「さわって」



    不意に発せられた言葉は実に小さく、しかし彼の声の低さからかしっかりと私の耳に届いた。


    −−−−−−−−−



    彼が、ノートン・キャンベルが荘園にやって来て何度か試合をやり過ごして来た頃だったろうか。
    試合の際の諸連絡以外では、彼から話しかけられたのは初めてだった気がする。


    「その眼は過去も覗けるんですか?」

    と。
    その時私はどう返したんだったか。

    この荘園に来る前は『彼ら』から告げられた予言に対し、興味を抱く者は少なくなかった。
    しかし私はそれ以上もそれ以下も話してはならなかったし、どちらにせよその好奇心が猜疑心になり、段々と罵りに変わる事が大抵で………ああ、そうだ。確かこう言ったのだ。

    「もし見えたとしたらそれは必要になる事なんだと思うよ。」

    と。

    −−−−−−−−−


    気のせいか、それから彼を、ノートンを何度か試合以外で見かける様になった気がする。
    彼は率先して試合に出ている気もする。
    彼が誰かと話すのをよく見る気もする。
    彼と試合が同じになる事が増えた気もする。

    今となってはアレは気のせいではなかったのだろう。


    「何か居るんですか?」

    久しぶりに試合の無い日、特に趣味らしきものも無い私は中庭の花壇の縁に腰掛け、いつも肩に乗り、試合の際には私の眼を通し飛び立つ『彼』の日光浴につき合っていた。


    「どうだろう。彼は日光浴。私はただ呆けていただけさ。」

    同意する様に少し声を鳴らし、日光を堪能する『彼』を撫でながら言えば、声を掛けてきたノートンはただ小さく「そう。」と言って私の隣に腰掛けた。


    「貴方はいつもそうなんですか?」

    「?…質問の意味が分からないが、いつもそう見えていたら多分そうなのだと思うよ。」

    「ああ、そう。」

    おや。
    その時はその返事と態度に素直にそう思った。
    彼は確かにお喋りではないが、この荘園に招かれた者達と話す様子を見るに話上手だ。
    次の言葉を誘う相槌と、相手の求めている言葉を振りまく。それは世間話しのようで次の試合の面子を事前に知る為であったり、他の者達のいざこざを治めることに繋がっていくのに気付いた時は実に関心した。

    そしてその彼がただ単に「ああ、そう。」とつまらなさそうな…不機嫌の様に返すのだから、もしかしたら私が知らずの内に何かしてしまったのだろう。
    私の言動は勘違いさせやすいから気を付けろと、ここに来てから出来た友人にいつだったか言われた事が脳裏に過る。


    「すまない。君の様に気の利いた返しが出来なくて…」

    そう返せば彼はピクリと、その火傷痕を負った顔ながら好青年と思わせる表情が一瞬歪んだ様に見えた。

    「気が利いた返しなんて、僕普段してますかね。特に意識した事なかったんですが。」

    「意識しているかは分からないが、私にはそう見えたよ。」

    「そう、見えますか。」

    そう言って彼は此方をすこし一瞥したあと、見慣れた微笑みを向け直し「僕、部屋に戻りますね。」と告げ去っていった。


    −−−−−−−−−

    最近、試合が苦戦に強いられる事が増えた様だ。苦戦すると言うだけで、敗れる訳では無い。些か判断を迫られる事が多く、皆勝利をろくに喜ばず疲弊して部屋に戻る事が多い。

    もしかしたら荘園の主が何かハンター側に施しをしたのだろうか。しかしそれならば此方にも報告がいつも届くのだが……


    「案外無茶するんですね。」

    「はは、まぁ、多少はね。」

    そんな違和感に頭を捻らせていれば、今回、いや、ここ最近活躍が目立つ彼に、ノートンに声をかけられた。

    「君の方こそいつも大変そうだ。今日も凄かったね。」

    「本当にそう見えた?」

    「?ああ。そう感じたが。」

    「ああ、そう。」


    そう言ってまた此方を一瞥してノートンは先に部屋へ戻って行った。
    また私は何か余計な事を言ったのだろうか。何分彼に比べたら私は話し上手ではないだろう。彼にとって不快でなければいいが。
    そう思いつつ見送れば聞き慣れた友人に話し掛けられた。


    「少しいいか。」


    −−−−−−−−−

    「そうか。君も違和感を感じていたのか。」

    「なんだと?」

    私がこぼした言葉に片眉を上げたのはナワーブ・サベダーと言う男だった。
    彼は私よりも先にこの荘園に居て、試合を多く経験しているにも関わらず分け隔てなく話してくれる。
    そんな彼と雑談をする時は大抵食堂や中庭、たまに私の部屋でするのだが、珍しく今日はナワーブの部屋に呼ばれた。

    そしてその彼がこう言うのだ。

    俺の部屋の場所はまだ知らないだろうと。
    一体誰が?と聞く前に彼が言葉を続ける。
    本当に僅か。本当に僅かなのだがここ最近の試合に『妙な手間』が増えている気がすると。

    彼の状況判断を把握する力は私の告げられる眼とは別の…それはまるで鷹が獲物を探す時、空高く飛び、広がる森を見渡す様な力が富んでいると私は思っているのだが。
    そんな彼がそう言うのなら恐らくそうなのだろう。

    「心当たりは?…いや、有っても言わないか。」

    「私をなんだと思っているんだい。」

    「すまん。」

    「ふふ、いやいいよ。ただ、心当たりは無いな…違和感を感じたのももここ最近だよ。」

    「そうか。俺にはあってな。いや、勘の類いでしかないんだが。」

    「勘と言うのは経験則だ。君が誰よりも試合をしているのだし、聞かせてくれ。」

    その言葉に対し少しばかり苦笑をしたナワーブはおもむろに懐からメモ帳、と言うよりは小さな紙の束のようなもの出して来た。
    手帳では無いにしろ、その紙の束を纏める為に穴を開け、紐を通している几帳面さに彼らしさを感じる。

    「お前の言う通り俺は数多く出ているが、常に試合に違和感を感じる訳じゃぁなかった。ならどう言った時に感じるか、その時の試合の面子、相手、勝敗などを記したんだが…」

    これを踏まえて彼は勘と呼び、他から見ればそれこそ勘と思われそうな私の眼を頼ってくれるのだから頭が上がらない。


    「イライ、お前とノートンが同席する試合が殆どだ。ただ決して全部じゃない。それは敗けなかった時だけだし、お前が居ない試合も勿論有る。ただ…」

    「彼は必ず居ると。」

    「何か見えたりは?」

    「ふふ、流石にこの眼に探偵の仕事を奪う器用さは無くてね。」

    ちょっとしたジョークで言ったつもりだが、ナワーブは少し顔をしかめた後に「そういうんじゃない。」と手製のメモ帳をまた仕舞い込んだ。

    「ともかく。確証は無い。無いがまぁ、何か困った事があったら言ってくれ。」

    「ありがとう。頼らせてもらうよ。」

    素直にそう返せば少しため息をつかれ自室に帰れ、アイツに見られるなよと部屋を追い出された。


    −−−−−−−−−


    ふむ、困ったな。実に困った。
    困ったから彼を、ナワーブを呼んだのだが。

    明らかに彼の顔にはそうでは無い。と書いてある。いや、でも、私も困ったのだし…


    「確かに困ったら言えとは言ったが。」

    「うん。」

    「うん。じゃない。」

    「ごめん。」

    「いや、まあ、うん。」

    そんな会話をしながら、私は試合がさぞ苛烈だったのだろう。ボロボロになりながら恐らく一人生還したがそのまま消沈し廊下に倒れ込んでいた男、ノートン・キャンベルを抱えながらナワーブに助けを求めたのだ。
    理由は単純に、彼の体躯を彼の部屋まで運ぶには私では些か力不足なせいなのだが。


    「………随分とうなされているな。」

    「そうだね。最初様子を見ていたが、時折ひどい咳をしても起きなかったよ。」

    その言葉に一体いつからこの男を拾って見ていたのだと言いたげな顔を向けながら「咳をするなら横に向けてやれ。」とだけ言ってくれるのが彼らしい。


    「……………お前が助けなくても良かったろう。」

    沈黙の中いそいそと私がうなされているノートンの試合で汚れたであろう顔や身体を拭き、着替えさせていればそう言われた。

    「いや、まあ、女性だったら他の者に頼んだが…」

    「そうじゃない。」

    「うん。……まあ、目の前で倒れていたし。今までの事含めて因果なのだろうさ。」

    そう返すと諦めた様に「そうか。」とため息をつかれた。
    ナワーブは情が有るにしろ基本的には合理的に動くし判断する。
    しかし存外私の眼を含め、因果や縁などの思想を否定する事も無いのがありがたい。


    「それで?どうする。一晩中付きっきりたいなら俺が代わるが。」

    「ああいや、流石にそこまではしないよ。ただ少しやって行く事が有るから。それをしたら部屋に戻るさ。」

    やって行く事。に対し彼の癖なのかそれとも私が毎度させてしまうのか分からない片眉上げる表情をされた後、「なら俺は外に居た方がいいな」と此方の意図をすぐに察してくれた。


    「すまない。手伝ってくれたのに。すぐに済むから。」

    「気にするな。困ったらまた言え。」

    「うん。ありがとう。」


    −−−−−−−−−


    夢を見た。

    いつもと違う夢だった。

    苛烈強いる試合で、ただ一人だけ生還し、疲弊し、倒れ込んだ時に襲いかかる夢。

    言う事を聞かず先走った愚図のせいで起こった、あの落盤事故で覚えている事と覚えていない事がある。

    なんだったか。なんだったろうか。火薬や肉の焼ける臭いと土埃が喉を焼き、顔を、身体を灼熱にし、様々な破片が食い込んでいた。

    しかしそれ以外に何か『居た』のだ。
    居た?何が?分からない。
    引き摺られた気もする。自分の足で立った気もする。

    本当にあったのか、本当はなかったのか。
    それすらも分からない。覚えていないあの時に深い、深い奥底から呼ばれるクソッタレな夢。ワンパターンなら慣れてやるものの、手を変えしなを変え毎度手の込んだ嫌がらせの様な夢。

    またそんな夢に襲われる事を分かっていても疲弊した身体は瞼を閉じざるを得なくて。
    ああ、ああ!なんてクソッタレなんだと思考をまどろませた筈なのに。


    「君の四肢は焼け落ちていない。」

    分かってるよクソッタレ。そんな事分かってる。分かってるけど熱いんだ。

    「君は歩いただろう。」

    そうかな。知らない。覚えてない。気づいたら陽の落ちた鉱山の外へ這い出てたんだ。

    「あの焦燥とあの孤独とあの闇はここには無い。」

    なんだその言い方。腹の立つ。上から目線で何様だ。こっちの事を知った風に言いやがって。そんな事。そんな事とっくに知っている。
    そんな事。

    「君なら覗けるだろう。あの光を。」

    その言葉と共に誰かが開けた場所を指差していた。
    そちらを覗いた瞬間僕の視界に見えたのは明け方前なのかまだ少し薄暗い、自分に当てられた部屋の天井だった。

    誰だったのだろうかあの人は。
    誰が廊下に倒れ込んだ筈の僕を部屋に連れたのだろうか。
    誰が身なりを整えたのか。


    「どういうつもりなんですか?」

    そんなのとうに目星はついていた。


    −−−−−−−−−
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