「早く起きなよ、傑」
その言葉の返事が返ってくることはないが、眠る彼の回りの木々の枝に小さな黄色の花が咲いた。
黄色の花は木々から前触れもなく咲き、そして散っていく。
散った花びらは眠っている彼の上へとゆっくりと舞い落ちる。
五条は舞い落ちる花びらの1枚に手を伸ばすが、触れる前に花は微塵となって消えていく。
そう、魔法だ。これは本物の花ではないのだ。
木々の下で眠っている彼の生命を吸って、この花は舞い落ちているのだ。
魔法、そんな簡単な言葉では片付かないのかもしれない。
五条は眠る彼のベットに腰かけ、宙に杖を軽く振る。
すると、空中のいたるところに黄色の塵のようなものが輝き始める。
もう一度杖杖を軽く振ると、その塵は五条の杖の先端付近に集まり始める。
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