Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    noxseawolf

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    noxseawolf

    ☆quiet follow

    夏五※ポタパロ
    完全なる自己満の固まりから始まった話です笑
    自分ように確認しやすいようにまとめました。
    設定も考えて、オチまで考えているのですが道のりは長い...
    タイトルは未定です

    #夏五
    GeGo
    #腐向け
    Rot
    #ポタパロ
    potaparo

    「早く起きなよ、傑」

    その言葉の返事が返ってくることはないが、眠る彼の回りの木々の枝に小さな黄色の花が咲いた。
    黄色の花は木々から前触れもなく咲き、そして散っていく。
    散った花びらは眠っている彼の上へとゆっくりと舞い落ちる。
    五条は舞い落ちる花びらの1枚に手を伸ばすが、触れる前に花は微塵となって消えていく。
    そう、魔法だ。これは本物の花ではないのだ。
    木々の下で眠っている彼の生命を吸って、この花は舞い落ちているのだ。
    魔法、そんな簡単な言葉では片付かないのかもしれない。

    五条は眠る彼のベットに腰かけ、宙に杖を軽く振る。
    すると、空中のいたるところに黄色の塵のようなものが輝き始める。
    もう一度杖杖を軽く振ると、その塵は五条の杖の先端付近に集まり始める。
    ビー玉ほどの大きさになった塵の集まりを眠っている彼の方へと向ける。
    すると、その集まりはすーっと彼の身体に吸い込まれていくのだ。

    「出て行っていい生命じゃないだろ」

    五条は自身の魔法を使って、塵となって彼の身体から出ていってしまった生命を彼自身の身体に戻しているのだ。

    そう、彼は呪われている。強力な闇の魔術に。
    この世界に変革を起こそうと奮闘した結果、呪いを受けたしまったのだ。
    助けることができなった後悔だけが今も五条の心の片隅に残っている。

    「何年...起きないつもり...だよ」

    その声は徐々にか細くなっていった。
    あの頃のあの時の俺に力があれば....何度も考えて何度も考えが底をついた。
    冷たい彼の手に触れる。

    「寂しいだろ...」

    答えは返ってこない。

    ◆◆

    「先生また明日ー」

    各寮の色の入ったローブを身に付けた生徒たちが、終業の合図と共に教科書を抱えて席を立つ。
    律儀に挨拶をする生徒もいれば、次の授業に走って教室を出ていく生徒もいた。
    教室の片隅では、授業で使っていた教材が宙に浮かびながら元あった場所に戻っていく。
    そんな賑やかな教室の中心にいたのは、先程生徒から先生と呼ばれた白髪の男だ。

    「先生、今日はもう授業ないですよね、一緒にランチでもどうですか」
    「先生、今日こそはうちの寮でお茶しませんか」
    「先生、一緒にチェスしましょ」

    黄色い歓声も混じった女子生徒の誘いの中心にいる五条は、若干の引き気味でもあったが
    可愛い生徒の眼差しが眩しいと感じていた。

    「今日はちょっと校長に呼ばれちゃって、」
    「先生それ一昨日も言ってたじゃないですかー」
    「いやー校長先生は寂しんぼなのかもねー」

    あははと笑う生徒たちの声が教室に響く。
    生徒と同じレベルのテンションにすぐに達することができるのは、五条の特技の1つかもしれない。

    「ほらほら、もう次の授業始まる時間だよ、また遊びにおいで」
    「先生が遊びに来てってばー」
    「僕は忙しいのー」

    女子生徒たちはもー、いつもそうだーとぼやきつつも笑いながら笑顔で教室を出ていった。
    一気に静まり返った教室内はやけに寂しく冷たく感じた。
    机の上の杖を手に取り床に向けて軽く一振すると、どこからともなく小さな風が舞い床のゴミを集める。
    そして軽くもう一振すれば、集まったゴミはぎゅっと圧縮されて小石ほどの大きさの塊になる。
    その塊を向かって杖を振ると、ぼっと音をだして塊に炎があがった。
    その間にも五条は壁一面の本棚の中から、次の授業で使用する教材を準備するためテキストを探す。

    「えーっと、次は....」

    長机の端に腰掛けながら、壁一面の本棚を眺める。
    10mはあるであろう高さの本棚の一番上の欄にあった数冊をその場で指差すと、本は宙を浮かびながら
    五条の元へと降りてくる。
    降りてきた数冊をパラパラとめくり中身を確認していると、はらりとメモ用紙のような紙切れが床に落ちた。
    床に落ちた紙切れを拾い裏返す、そこには2種類の見慣れた筆記体が記されていた。
    はっとなる五条は紙切れが落ちてきたであろう本の裏表紙を見る。
    そこには、【G.S】と小さく書かれていた。
    ふと五条の中に青い春の1ページが甦る。

    「だーかーらー、俺は五条悟だがら、イニシャルは【S.G】だって」
    「何回も聞かせるな、私だって同じイニシャルになるんだ、これだったら被るだろ」
    「俺の家族は全員こうやって略してんだから、俺もこうやって書くの、傑が変えろよ、【G.S】に」
    「まったく、これだからボンボンは頭固くて困る」
    「今なんっつったー?」

    その時、コンコンと扉を叩く音で五条は現実に引き戻された。

    ◆◆

    「五条、この前の件だが.......」
    ノック音と共に教室に入ってくる彼女は、目の下の隈が酷い白衣の女性だ。
    「珍しいな、本なんかまじまじと見て....」
    「ひどいなー、こう見えても一応は教師だよ、僕」

    そうだったな、と笑いながら近くの教室の長机に腰かける彼女は白衣のポケットからいつもの銘柄を1本取りだし、口許に持っていく。
    そして、彼女は五条の方をちらりと見る。

    「僕の教室、禁煙なんですけどーイエイリせんせいー」
    「お前なら煙も匂いも消せるだろ」

    まぁ、たしかに、と満更でもない五条はそっとその場で杖を一振する。
    すると、小さな火の粉が白衣の彼女、家入の口許の煙草の先端に向かって飛んでいく。
    そして、シュッと小さな音を立てると同時に煙草の先端には火が灯る。
    サンキューと目配せする家入は五条の扱い方に慣れていた。
    五条はそんな彼女を気にすることはなく、先程の本棚から取り出した本を元の場所へと戻していく。
    裏表紙を確認した本だけは、机の上に置いたままだ。
    五条は先程の授業で生徒から提出された課題の山に手をつけようとした時だった。

    「最近どうだ?あっちは....」

    煙草を吹かしている家入からの唐突な質問に五条の手は止まる。
    あっち、と言われて意味がわかるのはこの2人だけだろう、というような会話だ。
    煙が家入の頭上を漂う。

    「特になーんにも、行けば元気に花が咲いてるよ」
    「...もう諦めてるのか」
    「諦めることができれば、苦労してないね」

    五条は教室の窓から見える湖の向こうにある森を見つめる。
    ガラス越しに見る森は全体が少しだけ濃い緑をしているようにも見えた。

    「愚問だったな」
    「硝子が悪いわけじゃない、あとはあいつ次第だよ」
    「そうだな」

    家入は上に向かって煙を吐く。その煙はまるで蛇のように天井に上っていく。
    その時、にゃーと可愛い鳴き声が教室の入り口から聞こえる。
    2人はその鳴き声の方へと視線をやると、そこには黒猫が1匹、大人しく座っていた。

    「次は誰が怪我したんだ、クディッチも大概にしろ」

    あからさまに嫌な態度を取る家入は、以前はかの有名は魔法疾患障害病院で癒者として勤務していた。
    今は学校の校医の1人として生徒の怪我を処置している。
    入り口に来た黒猫は家入の使い魔だ。家入が医務室にいないので、こちらまで来たのだろう。
    頭をがしがしとかきながら、咥えた途中の煙草は彼女の口許から離れて宙に浮く。

    「生徒が待ってるよ」
    「はいはい」

    重たい腰をあげて、五条に背を向け入り口のほうへと進む家入。
    教室の真ん中で宙に浮いたままの煙草と煙はぎゅっと1つになって、小さな灰色の水滴のような形になる。
    その水滴はゆっくりと教室の窓ガラスに向かって進む。
    そして、その水滴はガラスを透過して外へと出ていき弾けて消えていった。
    家入は扉前でもう一度振り返って、呟く。

    「1人で考えすぎるなよ」

    その言葉は今の五条にも響き、あの森の奥深くで眠る彼にも響くものであった。

    ◆◆

    【私の名前は、胡散臭い前髪野郎じゃない、夏油傑だ】
    差し出されたその手は大きくて丈夫そうな印象だった。
    【悟ーそれはいくらなんでもやり過ぎだよ、脳筋のヤガ先もさすがに気づくって】
    教室の入口に小さな雨雲を魔法で作り出して、先生が教室に入ってきたと同時に雷雨が降るといった悪ふざけにまんまと引っ掛かった先生から拳骨くらったっけ。
    【悟!無事かい?】
    魔法省の手伝いとして死喰い人の確保に行った時に、敵からの不意打ちの攻撃が当たった時には、いつもしないような心配した顔で駆けつけてくれた。
    【悪い、悟....私他にいく場所があるんだ】
    そう、言って俺から離れるあいつの顔は一緒に笑っていた時とは別人だった。

    五条は、はっと目を覚ますと見慣れた天井が視界いっぱいに広がる。
    カーテンの外から薄暗い明かりが徐々に広がる時間になっているようだ。
    手元にある時計に目をやれば、起床時間の3時間ほど前であることを知り小さくため息をもらす。
    広いベッドの上で寝返りを打ちながら、目を覚ます直前の夢を思い出す。
    久しぶりに見た夢はあまり良い夢の類いではないものの、それでも夢の中だとしても声を聞けたことへの嬉しさを感じていた。

    「あいつ、あんな声だったけ」

    五条はふっと笑いながらベッドサイドのテーブルに置いてある本に目が行く。
    昼間に教室の本棚から見つけた彼の教科書を片付けられず、そのまま部屋にまで持ってきてしまったのだ。
    そっとその本を手にとって、ぎゅっと胸のうちへと抱え込む。
    この本のように、彼ともう一度抱きしめ合うことができたら、と思いながら五条は再度眠りについた。

    カチカチといつもと違う音により五条は再度現実へと引き戻される。
    片目を開けながら、音のする方向に顔を向けると小さな茶色い物体が必死に窓ガラスをつついていた。
    開けた片目を細めて音の主をみると、茶色い物体は魔法省からの回し者の梟のようだ。
    五条は窓ガラスに背を向けるように寝返りを打つ。
    すると、窓の外にいる梟は先ほどよりも力強く窓ガラスをつつき始める。

    カチカチカチカチカチ....
    「んー.....」
    カチカチカチカチカチ....
    「あーもう、なんだよ!今日休みじゃなかったけ?僕?」

    勢いよく起き上がった五条は窓ガラスを睨み付け、重い腰をあげて窓ガラスへと向かう。
    窓の外の梟はしてやったりという顔で満足げに五条を見ている。
    彼は窓ガラスの鍵を開け、梟の背に縛り付けられた手紙や小物を手に取る。
    手紙の中には教材の勧誘広告だったり、ダンスパーティーへの招待状だったり、ほとんどがまり興味のない物だった。だた、1通だけ元同僚からの手紙が含まれていた。

    「....」

    五条は元同僚からの手紙をその場で開き、書かれている内容を確認する。
    受け取った手紙類を机の上に置いて、まだ窓際にポツンといる梟の頭を撫でる。

    「僕は...まだここにいるよ、まだ戻れない」

    その言葉を聞いた梟は少ししゅんと寂しげな顔をして、勢いよく空へと羽ばたいた。
    梟の影が小さくなるまで見送った彼は、大きく伸びをして机の椅子にかけていたコートを手に取り、自室を出た。
    机の上には彼の同僚の手紙が広げられていた。
    【先日、若い闇祓いが2人死んだ。闇祓いに戻ってきてほしい】そう書かれた手紙の文字は誰かに消されるように、文字は紙から消えていった。

    ◆◆

    その日は五条は久方ぶりの休日だったにも関わらず、彼は日課と化している森の端になる小屋に足を運ぶ。
    扉を開けるといつものように黄色い花を咲かす木々の下に眠る元同僚?同期?恋人?元彼?...
    どの異名がしっくりと来るだろうか、と考えながら五条はいつものように杖を振り、彼、夏油の命の一部を彼自身の身体へと戻していく。
    そして、眠っている夏油の冷たい手を握る。
    「いつでも起きていいから」
    そう言って彼の手の甲に自身の唇を軽く押し当てる。
    もちろん、夏油が起きることはないのはわかっていた。それでも何かのきっかけになれば、と五条は些細なことでも続けている。
    眠っている彼の頬をそっと撫でて、扉の方へ向かいそっと小屋をあとにした。
    小屋の扉が閉まった同時に、眠っている彼の指先がぴくりと動いたことは五条は知らない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works