父たい大寿が小さい頃から家の中で父さんの存在は薄かった。
仕事で家をあける日が多かったのもそうだし、何より口数が少ない人だった。「おはよう」や「おかえり」などの挨拶こそしてくれるがそれ以外はほとんど父さんから話しかけてくれることは無い。なのに一緒にいると何故か凄く見つめられてしまう。
柴家の血を表すような190越えの身長とそれに見合う筋肉、大寿とよく似たつり上がった目尻に消えない眉間のシワである。大人でも怖がられる風貌だ。そんな男に、父親とは言えども、じっと見つめられればビビりの八戒が怯えるのも無理はない。
母さんはそんな父さんのことを不器用な人と言っていた。
子供たちを大切に思うあまり、自分の容姿が威圧感を与えることを知っているから下手に近づくのを恐れるのだと。じっと見つめているのは離れている間にまた大きくなった大寿たちを目に焼き付けているからで、口数が少ないのは大寿たちの話を聞きたいからだと言っていた。
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