夜空を覆い尽くしてしまうほどの輝きが、眼前に広がっている。
右を見ても左を見ても視界に入るその眩い光は、今の俺には眩しくて、俺はそっと目を細めた。
凍えるような寒さに身体を震わせて、俺は一つ息を吐く。ため息と一緒に吐き出された鬱は、白く変色して夜空に溶けて消えていった。それでも俺の心は晴れないままで、街を行き交う楽しそうな人々の中、まるで俺だけが違う世界にいるかのようだった。
かれこれ三時間、俺はベンチに一人座って、ぼうっとイルミネーションを眺めていた。どこまで続いているのかと思わせるほどの並木道が、無数のLEDに彩られ、街を華やかに照らし出している。ライトアップされた木々を見上げる人々の顔は、皆明るく笑顔だ。小さな子供と手を繋いで歩く家族や、肩を寄せあって笑い合う男女、クリスマスケーキを片手にどこか充実した顔で歩いているOLの女性、どこを見ても完成された綺麗な世界に俺は相応しくない気がして、思わず目を閉じる。目を閉じれば、思い浮かべたくもないアレの顔が浮かんできて、俺の鬱を加速させる。振り払うように小さく首を振ったけれど、まぶたの裏に焼き付いて離れないアレの顔は、こんな時でも暑苦しくて、俺はまた一つため息をついた。
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