贅沢 許されるとしたら、どんな贅沢がしたいか。
そんなたあいも無い話をしたことがある。
任務の途中で死にかけたときだったか、移動中のトラックの荷台の上だったか、とにかく、話題も尽きて、時間だけは合って、することはなくて、でも何処へも行けなくて。
横たわる沈黙をどうにかしたくて、口にしたような話題だ。
無人島に行くときに一つだけ持って行けるなら何を選ぶか。最後の食事は何を食べたいか。一番馬鹿馬鹿しいと思う祭りは何か。一番間が抜けていると思う瞬間は何か。これだけは絶対着ない色はなにか。
おおよそ意味も意図も無い、言った先から煙草の煙のようにふわふわと空中を漂って消えていく、そんな会話だった。
「贅沢」
「そう、贅沢。一切の条件節ナシで選べるとしたら」
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