そのうち最後まで書きたい⋯⋯お兄ちゃんに憧れたら恋人ができました〜フィン・エイムズの後悔を添えて〜
お兄ちゃんって良いな。
フィンくんとレインくんを見ててそう思った。
それぞれの一方通行の想いの行き違いのせいで、すれ違ってしまっていたエイムズ兄弟。
無邪気な淵源との戦いの後、徐々にではあるが兄弟仲をじりじりと修復中の真っ只中で、マッシュはそれを一番間近で見ていた。
不器用ながらも、弟の成長を褒めて頭を撫でるレインと、顔を真っ赤にして、少し恥ずかしそうにしながらも嬉しさを全面に出すフィン。
そんな二人のやり取りを何度か見ていて、良いな、と思ったのだ。
そして、そう思ってから、その事をフィンへと正直に話すのも早かった。
「お兄ちゃんって良いね」
「えっ?突然どうしたの?」
「レインくんと、フィンくんのやり取り見てたら、なんか、こう⋯兄弟っていうか、お兄ちゃん?って良いなって思ったんだよね」
マッシュの言葉に、それは兄という存在そのものへの憧れなのか、はたまた兄のレインを良いと言っているのかが微妙なラインだとフィンは悩む。
「たとえば、どんな所を見てそう思ったのか聞いてもいい?」
それは、他の第三者でもマッシュの求める兄の代わりとなれるのか、兄のレインにしかできない事なのか、ここをはっきりさせなければならない。
「レインくんが、よくやった、ってフィンくんの頭撫でてたときとかかな?」
「それって、お兄ちゃんじゃないと駄目なの?」
「?」
フィンの質問の意味がわからず、首を傾げていると、たとえばね、と前置きをして、ベッドに腰掛けているマッシュの前にフィンが立った。
嫌なら言ってね、と言ってからマッシュの頭へと手を置くと、兄が撫でてくれた時の事を意識しながらマッシュの頭を撫でる。
「今日も一日、よく頑張りました。マッシュくんお疲れ様」
その行動とセリフに、マッシュはキョトンとした顔でフィンを見つめていたが、じわじわと照れ臭さが襲ってきたのか、気恥ずかしげに顔を逸らしてしまう。
そんなマッシュの反応に、くすくすと笑いながら、どうかな?と聞くフィンは楽しそうだ。
「あの⋯嬉しいんだけど⋯フィンくんは、弟って感じが強くて、甘えるのはちょっと申し訳ないような気になる⋯⋯」
「そっかぁ⋯まあ、実際に弟としてしか生きてないからねぇ⋯⋯⋯甘えたい、か⋯」
兄らしさがあり、無条件に甘えても許される存在を求めているのかな?と推測を立て、それならば、そのまま兄がマッシュの分も担ってくれそうだと推薦してみても良いのではないだろうか。
何かとマッシュを気にかけては、世話を焼きたがっているのだから、無下にはしないはずだと。
「それだったら、そのまま兄さまにお願いしてみたらどうかな?」
「レインくんに?」
「うん。頑張ったら褒めてほしいって、お願いしてみて?兄さまは、マッシュくんの事すごく気に入ってるから、きっときいてくれると思うよ」
マッシュは考えて、一つの気がかりな事をフィンに訪ねる。
「フィンくんは⋯嫌じゃない?」
他人を弟と同じように褒める兄を見るのは嫌じゃ無いのか、と⋯。
「他の人だったら⋯まあ、複雑な気持ちになるかもしれないけど、マッシュくんなら全然。むしろ、兄弟が増えたみたいでちょっと嬉しいかも?」
兄が自分と大切な親友を一緒に褒めてくれるなら、それはきっと一人の時よりも数段嬉しいし、自慢の親友が大事な家族に認められるのが嬉しくないはずがなかった。
想像して、ふふっと笑うフィンを見て、マッシュも楽しくなって口が軽くなってしまう。
「じゃあ、僕がフィンくんのお兄ちゃん?」
「マッシュくんが僕の弟でしょう?」
どちらが兄のポジションかを張り合ってみたが、二人とも自分が兄になるイメージが湧かずに笑ってしまう。
「次にレインくんに会った時に、お願いしてみるね」
「うん。ないとは思うんだけど⋯ ダメなら他の人も候補に入れて考えようか。⋯ランスくんも妹さんがいるお兄ちゃんだし、マッシュくんが頼めばしてくれそうだけど⋯どう?」
「⋯フィンくんは、レインくんがランスくんみたいなお兄ちゃんになったらどう思う?」
「⋯⋯ごめん⋯やめようか。考えるのを⋯」
想像してしまったのか、一瞬の間の後に脳内の残像を消そうとするかのように、顔の前で必死に手を振るフィンが印象に残った。
フィンは違うと否定したいようだったが、妹のグッズをせっせと作っているランスと、愛兎をモチーフに刺繍をしたり兎のグッズを集めたりしているレインは似ている部分があると思う。その対象が人か動物かの違いでしか無いだけだとマッシュは密かに思っていたし、兄弟仲が改善されたらフィンくんのグッズもいつの間にか製造されてそうだよね、とは言えそうに無い雰囲気だった。