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    桃霞りえ

    @momo303rie

    自分用の倉庫的なものです。
    設定でも作品でもなんでも突っ込む予定。
    レイマシュの投稿がほとんど。
    完成品はほぼほぼpixivにも掲載しているものです。
    正直、まだポイピクの使い方わかってません⋯⋯。
    できたは出来上がった(完成している)ものです。
    書きかけは、小説のかたちで書いた未完のもの。
    メモは本当にメモです。セリフだけだったり、設定説明だけだったり。感想文みたいなやつですね。

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    桃霞りえ

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    CPなし。マッシュ♀とフィン♀の付き添いで海に来たレインくん。モブ♀に絡まれるレインくんを助けようと奮闘する親友コンビとただただ可哀想なレインくん。
    レイマシュに直そうと思ったけど、夏が終わりそうなので⋯⋯レイマシュバージョンは来年にでも⋯⋯。

    マッシュ♀フィン♀の親友コンビに振り回されるレインくん「おっと、フィンくんフィンくん、レインくんが女の子に囲まれてる⋯」
    「うわぁ⋯兄さますごくイヤそう⋯」

    「飲み物を買ってくる」とだけ言ってなかなか帰ってこないレインを心配したフィンと共に、海に併設されている売り場近くへと足を運んでみたが、眼前の光景に二人揃って唖然としてしまう。
    質問攻めにする女性や「一緒に行かない?」と誘いをかけてくる女性たち。ざっと十人ほどに囲まれている光景はドットが見れば発狂するほどに羨ましい光景なのだろうが、実際に囲まれている当人は非常に迷惑そうにしている。道を塞がれ、一方的に聞く耳も持たず姦しく騒ぎ立てられては嫌気も差すだろう。

    「これじゃ帰ってこれないねレインくん」
    「そうだね⋯兄さまの顔、かっこいいって言われてるの忘れてた」

    レインの顔を見慣れているのもあるし、自分たちやレインの周囲に所謂“イケメン”と呼ばれる人間が少なくない事も災いしてつい失念してしまっていた。
    それに、担っている役職や能力を抜きにしたとしても、抜きん出た秀麗な顔立ちと引き締まった体躯は人目を引く。そして、今いるのは海という開放的な場所だ。気分が浮ついた人間が浮ついた行動に出てしまうのもまた仕方のないことなのかもしれない。
    あの中に入っていくのを想像しただけで気が滅入るし、できるなら近づきたくはない。だが、明らかに迷惑そうにして困っているレインを放置して、「レインくんは大丈夫そうだから僕たちは戻ろうか」などという訳にもいかない。
    マッシュは一瞬だけ浮かんでしまった“見捨てる”選択肢を脳内から消すと、フィンと向かい合う。

    「ふむ⋯レインくんにはいつもお世話になってますから⋯」
    「うん、ここは僕たちが」

    二人は決意したようにうん、と一つ頷いた。

    「「なんとかしますか」」

    声が揃い、息ぴったりな事に仲良しな二人は嬉しさにふふッと笑う。

    類は友を呼ぶとでも言えばいいのか、元々似た部分が表に出せなかっただけなのかは誰も知る由もないが、マッシュと親交を深めれば深めるほどにフィンの思考や行動はマッシュに似てきていた。何をするにも、一緒に行動する時間が長いとなればそれも仕方のない事だったのかもしれない。
    ただ、もしもここに普段一緒に行動することの多いランスやドットが居たとしたら、仲良く手を繋ぎ軽い足取りで駆け出す二人を「ちょっと待て」と止めていただろう。
    それなりの付き合いのある人間は、マッシュに常識という概念がことごとく通じないのを知っている。そして、そんなマッシュを嗜める程は装いつつも、一番マッシュに甘く協力的なのがフィンであることも知っていたから。
    だが、残念なことにここに二人を抑止するものは何もなかった。

    レインの背後に近づいた二人は打ち合わせでもしていたかのように左右に分かれると、それぞれレインの腕を取る。
    フィンはしがみ付く勢いでレインの左腕を抱き込み、マッシュはレインの右腕に自身の左腕を絡ませ右手を添えた。

    お前ら何してんだ⋯と眉間に皺を寄せるレインの表情は形容し難いものになっている。
    それぞれに気になることがあってどう指摘すべきか、そもそも言っていいのか悩んでしまった。
    実妹のしがみ付く腕は見た目以上に細いし、ある程度寄りかかってきて体重もそこそこかかっているはずなのに軽すぎて心配になる。もっと食べさせないとそのうちパッタリ倒れるかもしれない。
    マッシュはもう問題しかない。初見でわかるほど発育のいい胸に、恋人でもない男の腕を埋めてはいけない。俺でなければ勘違いどころでは済まない事案に発展しかねないぞこれは⋯と、言いたいことがありすぎて逆に言葉が出てこないという現象にレインは陥っていた。

    無言を貫くレインとは違い、タイプは違えど顔面偏差値の高い美少女二人の出現にレインを囲んでいた女性たちは怯んだ。
    一人は体型こそ目立った凹凸に乏しいが、そこも含めて庇護欲を掻き立てる愛らしさは愛嬌も合わさってそこらの女では太刀打ちできそうにない可憐さのある少女。
    もう一人は対比のせいか表情筋死んでる?と思うくらいに愛想のかけらも無いが、そんな事がどうでもよく感じるほどスタイルの良さが他の追随を許さないし、愛想の無さをクールなだけと捉えれば欠点など無くなってしまうグラマラス系少女。

    そんな対照的な二人が、一人は花が咲きそうな笑顔で、もう一人は無表情ながらも目を柔らかく細めて彼女たちに言った。

    「ごめんなさい」
    「この人は」
    「「僕の(兄さま・お世話になってる人)なんで」」

    左右から聞こえたステレオ音声の台詞に、言葉を考えあぐねているうちに制止する機会を失ってしまったレインは天を仰いだ。
    本当は顔を覆ってしまいたかったのだが、左右それぞれ組まれた腕にそれはもうしっかり、がっしりと抑えられてしまっていてレインに許された選択肢はただ空を仰ぐこと、その一点しか残されていなかったのだ。

    (お前ら、人に散々言葉足らずだとかなんとかうるさい癖に、なんでこんな時に限って大事な部分を端折りやがった⋯)

    やってやりました!と達成感にドヤりながら、視線を交わしVサインを送り合う妹と後輩はその一場面だけを切り取ってしまえば非常に微笑ましくて可愛いものだ。
    だがしかし、こちらの事情などミリも知らない人間たちがこの状況をどう捉えるか、少し考えればわかってしまう。
    実際、さっきまで姦しいほどにキャーキャーと煩かった声は潜められ、ヒソヒソと隣周辺の人間と交わされる言葉は不穏な内容しかない。

    「⋯えっ?二股?」
    「キュートなのとセクシーなのどっちも選んじゃったんだ⋯うわ、引くわ⋯ちゃんとどっちか選べよ⋯」
    「サイテーじゃん⋯見た目好みだったから声かけたのに⋯彼女二人もいるとか思わんし」
    「行こ行こ、取っ替え引っ替えならまだしも、二股かける男はねーわ⋯」

    レインを囲んでいた女性たちは言いたい放題小声で言った後に散っていった。
    多大な誤解しかない痛烈な言葉だけを残して。

    「どれも、違ぇ⋯」

    小声で力無く呟かれた否定の言葉は誰にも届く事はなかった。
    この元凶となったマッシュもフィンもレインから女性を遠ざけることに成功した事実しか感じていないのか、レインには目もくれずイエーイと目の前でハイタッチをしている。
    呑気だなと思うし、こんなことが二度と起きないように、第二の犠牲者が出ないよう二人にはキツく言い聞かせなくてはならないなどと思いはするが、心のどこかで仕方ないなと許している自分もいた。
    妹と、この手のかかる後輩はレインを思って行動したのだと。やり方に難はあれど、思いやりから出た行動そのものを非難するつもりはない。
    それに、普段の無表情を和らげ楽しそうにしているマッシュと、こんなにはしゃいで楽しそうに笑えているフィンがいる。それだけで充分だ。多少の風評被害がなんだ。気にしなければいいだけだ。

    確かにそう思っていた。

    「てかさ、あの人なんか見覚えあると思ったら神覚者様のレイン様じゃない?普段のローブ姿じゃないから気づくの遅くなったけど⋯」
    「えっ?神覚者様って二股とかありなの?幻滅だわぁ⋯ないわぁ」

    遠ざかっていく女性たちの微かな声が耳に届いてしまったレインは膝から崩れ落ち、今度こそ顔を覆ってしまった。
    俺が一体何をしたというんだ⋯。
    ただ、可愛い妹と何かとトラブルを引き起こす後輩を心配してついて来ただけなのに⋯。

    キャッキャと無邪気にはしゃぎ終わったマッシュとフィンが「もう帰ろうか」と声をかけるまでレインは心的負荷で動けないままだった。なんなら、帰る時もフラフラとおぼつかない足取りをするレインを心配した二人が支えながら帰った事で、レインの心が更に抉られた事をフィンとマッシュは気づいていない。


    その翌日、レインは新聞にスキャンダルとして載ることも覚悟していたが、出社する時間になってもそんな知らせが届く事はなかった。
    どうやら彼女たちは胸の中にしまってくれることを選んだらしい。それを喜べばいいのか、悲しめばいいのか悩ましいところなのだ。
    世に出てしまえばいくらでも訂正ができるが、名前も知らない相手の誤認を変える事など出来はしない。
    まして、世間に知られることはなくとも、彼女たちの中ではレインへの偏見こそが事実となってしまっていることが悲しい。
    そんな悩みを悶々と抱え、イライラしながら魔法局の廊下を歩いていれば、資料室の前でライオとカルドが何事か相談しているのと遭遇する。
    いつになくイラついた様子のレインに、二人は何かあったのかと神妙な面持ちで尋ねてきた。
    レインが言うかどうかを迷ったのは一瞬で、吐き出しどころがなく誰かに相談しようかと悩んでいたレインは打ち明けたのだが、本日の業務が終わるまで我慢してマックスに聞いて貰えばよかったと後悔する。なぜなら、レインから一連の話を聞いたライオとカルドに笑われてしまったのだ。

    災難だったなと豪快に笑い飛ばすライオはまだいい、だが、顔を見るたびヒィヒィ言いながら腹を抱えて埋(うずく)まり床をバシバシ叩き転げ回るカルドはいつか埋めてやろうと思っている。随分と床と仲睦まじくしているのだから本望だろう。
    マックスに言ったとて笑われる事にはなりそうだが、ここまで酷くはないはずだ。
    言うだけ時間の無駄だったとイライラが収まらないまま、レインは山積みとなっている仕事を片付けるために己の仕事部屋へと向かった。
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