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    kikhimeqmoq

    はらす

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    桐智と夏秋 2024/11/03
    夏彦から見た桐智の話ですが、キスするのは智将と夏彦です。前半は夏彦高一、後半は夏彦高二です。

    #桐智
    #夏秋
    summerAndAutumn

    俺の前からひらりと去っていった「秋斗!晩ご飯には帰ってくるんでしょ。七時だからね」
    「あー、たぶん、大丈夫」
    「多分やなくて、ちゃんと帰ってくるんやで!正月くらいウチでご飯食べや!すき焼きやで!」
    へいへい、と適当に返事をしながら、秋斗は靴の爪先をならした。とんとん。
    「出かけるんか」
    「お前には関係ないやろ」
    「質問したらあかんのか」
    苛立った夏彦が壁を叩いた。面倒くさそうにしていた秋斗は、糸目の笑顔に切り替わった。言い争うつもりはないらしい。
    「シニア時代の奴らとマクド行くだけや」
    「東京やったらお前もマックって言っとるんやろ。ウザ」
    夏彦はなにやら嬉しそうなニヤけた声で煽った。
    「マックなんて言うてへんわ。そもそも、寮以外で飯なんか食わんやろ」
    お前もそうだろ、という意味がにじんでいたが、夏彦は言外の質問を無視した。
    「まあ、せいぜい遊んできたらええやん。東京の奴らよりはおもろいやろうし」
    「東京の奴らかて、お前よりはおもろいわ」
    「アホ言いなや、ボケカス。俺がいちばんおもろくて、俺がいちばん強いやろ」
    そうやなあ。秋斗は気乗りしない相槌をうち、ドアの取っ手に手をかけた。本当に出かけるらしい。まあ、勝手にどっか行ったらええねん。
    「そうや、『かなめけい』って知っとるか?」
    秋斗は踏み出した足を止め、唐突に質問した。
    「なんやそれ。美味いんか?」
    「…………考えようによっては美味いかもしれん。夏彦お前、天才やな」
    「俺は天才なんは日本中みんな知っとる。分かってへんのはお前だけじゃ」
    秋斗が何を言っているのか分からず、腹立たしい気持ちがただただ募る。苛立ちをその原因にぶつけようと殴り掛かった瞬間、秋斗はひらりと外に出た。
    「要圭はキャッチやぞ。東京かておもろいやつはおるからな」
    それだけ言い捨て、秋斗は廊下を駆けていった。あの方向なら階段を下りたはずだ。追いかけて追撃をくらわそうかとも思った。が、出掛けに見せた笑顔を思い出すと、勢いは急速に萎えていった。細い目の奥で輝く瞳は、興奮で青く光っていた。簡単に言うと嬉しそうだったし、楽しそうだったし、綺麗だったのだ。ムカつく。なんだあの顔。腹たつやろ。
    腹の中は煮えくり返っていたはずなのに、脚はまったく動かなかった。石のように重い。感情が筋肉に直結している夏彦は、怒りで動けなくなったことなどない。腹が立てばその分動いて発散する。なんなら暴力で解決する。それだけだ。それなのに、どうして動けないでいるんだろう。
    分からない。
    分からんもんは気にしても仕方ない。
    とにかくだ。
    あいつが返ってくる前に、この家の肉は俺が全部食べたんねん。

    「お前、清峰なんかにビビっとんの?カスはやっぱり気にすることがみみっちいやん。
    すき焼きの後はアイスが出た。今年から息子が二人とも実家を離れ、寮に入ってしまったからか、それとも正月だからか、はたまた単に母が食べたいだけだったのか、贅沢にもハーゲンダッツだ。
    「清峰?」
    「お前、自分が昼間言うたことも忘れんのか。アホすぎるやろ」
    「ああ、お前、自分で調べたんか。かなめけい」
    クスっと笑った秋斗の瞳がキラリと光った。昼間と同じだ。ムカつくな!
    席を立って走り出したかったが、視界の端にアイスが映り、上げた腰をまた下ろす。ハーゲンダッツは完食するやろ。さすがに。
    「まあ、今年は東京大会もちゃんと見ときや。おもろいもん見れるから」
    そう言って、秋斗は俯き、アイスに集中した。
    夏彦も、言いようのない腹立ちを全てアイスにぶつけてやった。
    だから、かなめけいって何やねん。そないにおもろいもんなんか。俺がそれを奪ったる。もしくはそれを潰したるから。
    野球でおまえを追い越したみたいに。



    「兄弟揃って試合前に陽動作戦か?」
    甲子園のトイレで見かけた要圭は東京もんらしく真面目腐ったスカした真顔でこちらを見つめた。なんなら少し小馬鹿にされているような気もする。弱いくせにムカつくな。小物はもっと怯えたらええねん。
    「なんやねん、陽動作戦て」
    「お前の大事な兄貴も東京の決勝前に声をかけてきたって話だよ」
    あれはあれで、今思えば面白かったけどな。要は小さく何かを呟いたが、よく聞こえなかった。
    「大事なってなんやねん!俺はあのカスのことなんかいっこも気にしとらへん!今年も結局、甲子園には来いひんかったしな!」
    「ふふっ」
    要は急に愉快そうに吹き出した。こいつ、絶妙に腹立つやっちゃな。
    「お前に作戦なんて無さそうだもんな」
    「はあ?馬鹿にしとんのか?」
    「違うよ」
    「ふざけんなよ!」
    糸目の作り笑顔でを吐く男に怒りを覚え、壁を叩く。タイル張りの壁はドンと鈍い音を立てた。
    「いいのか?今日、先発なんだろ?指は大事にしろよ」
    壁に打ち付けられたまま固まった拳を。要は無駄のないスマートな動きで捕らえた。夏彦は身構えたが、要はそっと拳を下ろした。ポンと桐島の手に軽くタッチしてから、元に戻った。キモいな。
    「おまえ……」
    「なんだ?」
    糸目の作り笑顔を崩さず、要は問い返す。腹の底が読めない。こんなやつ、他におらん、と思ったところで頭の隅によく知った男がよぎった。
    「お前、カスににとんな」
    「カス?ああ、桐島さんか」
    強引に投げつけられた感想も、動揺せず受け流すところも秋斗を思わせた。本当に、腹が立つ。
    「『似てる』って言われたのは初めてじゃない」
    「あ?」
    「弟にも判定されたんだから相当だな」
    なぜだか嬉しそうに口角を引き上げ、惚気るように目尻を下げた要は、先ほどまでとうってかわって可愛らしかった。色っぽいとまで言ってもいい。
    うるせえ、黙れ、カスの話はお前がするな!
    そう思った直後、夏彦は要を壁に押しつけ、ついでに唇も押しつけていた。
    はあ?
    そんなことをするつもりなど一ミリもなかったというのに、現に自分は要と唇と唇を合わせているのだから、意味が分からない。
    どうしよう。舌とか入れるんかな。いや、そんなことより早く離れなあかんやろ。てか、試合どうすんねん早う戻らな。
    混乱した頭の中を、脈絡のない思想が錯綜する。
    にゅる。焦っても動けないでいる夏彦の口の中に、ぬるりと温かいものが侵入してきた。やばい。そして気持ちいい。
    要の舌は夏彦の咥内をゆっくりとなぞり、舌をねっとりと執拗に絡めた。要に舐め回されるたびに、夏彦は絡まっていた思考がひとつずつ解されていき、代わりに少しずつ快感に侵されていった。こんなに気持ちいいなら、このままぶち犯してえな、と股間を熱くした瞬間、要の舌は夏彦の中から去っていった。残されたのは、呆けた自分だけだった。
    「キス下手じゃないか?」
    気づけば要は糸目の作り笑顔に戻っていた。口にした台詞は辛辣なのに、事務的な印象が拭えない。投球フォームがおかしい、と注意するときと同じような口調だった。もしくは、学級委員長だ。
    「なにごとも練習だろ?実践に持ち込む前に、練習した方がいい」
    夏彦が無礼にも強引に実践に持ち込んだことは問わず、要は忠告を続けた。なんだこいつ。人形か?意味わからねえ。
    「はあ?練習?相手もおらんのに?」
    ふ、と要は笑った。仮面のような顔を崩し、堪えきれないように、小さく。素顔を見せた要から、目が離せない。愉快そうに、目尻を柔らかく垂れている姿は、可愛らしいと言えなくもなかった。先ほどと同じだ。
    「俺のキスは上手かったか?」
    「は?」
    「うっとりしてたもんな。気持ちよかったんだろ?」
    「てめえ」
    「俺が誰と練習しているか聞きたいか?」
    絶句している隙に要はひらりと逃げていった。眇めた目から覗く瞳は興奮で淡く光っていた。
    試合が終わったら教えてやるよ、と言っていた気がするが、あいつとは二度と口をききたくなかった。次は、喋る前に殺してやる。絶対だ。









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    kikhimeqmoq

    DONEチヒ隊 2025/01/19 チヒロと巻墨

    61話、カフェでランチを食べた後に京都へ向かうチヒロと巻墨の小話。63話で巻墨の名前が判明して嬉しくて書いた。チヒ隊かどうかは微妙な感じで特に何も起こらない。
    豪快に京都へ「車で行くんですか?電車の方が早くないですか」
    店を出てさっそく駅に向かおうとした千紘を巻墨は引き止め、車で移動すると告げた。
    「車の方が安全だろ。装備もしてあるしな」
    隊長は得意げに説明した。斜めに切り上がった口端が車への自信を表していた。可愛らしいな、と千紘は感じたが黙っていた。それより装備ってなんだ?
    「装備とら?」
    「武器や小道具が車に隠してあるんですよ」
    炭がすかさず説明した。
    「へえ」
    さすが忍びだ、と千紘は感心した。その評価が伝わったのか、隊長は満足げに頷いた。こくり。
    「じゃあ、車を出しますから、ちょっと場所を開けてください」
    炭の依頼に千紘は振り返った。駐車場はどこだろう。きょろきょろと周囲を見渡す千紘の肩を、杢は長い腕で掴んだ。最初は肩を強く掴まれたが、すぐに柔らかく抱きかかえられ、店の脇へそっと移動させられる。杢の腕も身体も熊のように大きく、肩を抱かれただけなのに、千紘は全身を包まれた気持ちになった。なんだか温かい。杢と千紘は、歳はさほど離れていないと聞いた。実際、杢は隊長や炭よりも若者らしい軽い発言が多い。しかし、なんとはなしに信頼したくなる安定感が杢にはあった。身体の大きさだけではない。ほどよい雑さと丁寧さのバランスが好ましあのだと思う。
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    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
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    DOODLEとーじにやられた時の傷が残ってたら、な伏五ちゃん
    どんなに痕残したり傷つけたりしても結局反転で消えちゃうのに、ただ一つ痕残せたのがめぐの父親であるとーじってめちゃめちゃエモくないですか
    額に落ちる前髪を鬱陶しげにかき上げたときに見えたのは、陶器のように艶やかな肌に似つかわしくない瘢痕だった。
    彫刻か何かのように、一つの狂いすら許さないものと思っていた彼の身体に残る歪な傷跡は伏黒に鮮烈な印象を与えた。

    穏やかでない色を潜めた深緑の瞳に気付かない訳もなく、刺すような視線を一身に浴びる五条は仕方ないと言った様子で真っ白な髪を上にやり、視線の求める先を露わにする。

    自ら求めたはずなのに、いざまじまじと見せつけられてつい目を逸らしてしまう。
    向かい合って座る伏黒のそんな様子を気にすることもなく、血の気のない指先で額を撫でながら言葉を転がし始めた。
    「もっとザクザクって刺されて、ズバーッてぶった斬られたんだけど、他は綺麗さっぱり。ここだけ残っちゃったんだよねえ。ま、初めて反転使ったのがこの時だからいきなり100パー完璧になんて無理だったのかな」
    けらけらと笑いながら口にされる、捉えようのない抽象的な擬音と不穏な言葉の羅列に、伏黒は隠すこともなく顔を顰めた。

    「どしたの恵難しい顔して。もう痛くないしただのケロイドだよ?」
    「五条先生に傷つけるなんて、よっぽどの奴ですよね」
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    PAST夏五の匂わせしかねえ伏五
    無名のファイル「恵ってサッパリした食べ物好きって言ってたよね」
     扉を開けると、そこには日常生活ではそうそう拝まない白金に光り輝く頭髪を靡かせた男がいた。睫毛の奥まで純白をたもつ男は、ビニール袋を伏黒に差し出すと我もの顔で靴を脱ぎ捨て家へと上がる。押しつけられた袋の中身を確認すれば、小分けにされた生蕎麦がいくつか入っていた。つゆやネギなども同封されたその袋は、どうやら茹でて皿に盛れば完成という代物のようだ。
    「おそばですか」
    「うん、三人で一緒に食べようー。って、津美紀は?」
    「ちょうど買い物に出ています。さっき出たばかりです」
    「そっか、入れ違っちゃったなあ」
     五条はそういうと座布団を枕にし畳の上にゴロリと寝転がる。以前はなかったえんじ色の座布団は、津美紀が「五条さんが来るから」と言って買い揃えたものである。それまでは来客はおろか姉弟ふたりのみしか存在することの無かった六畳一間は、五条が訪ねるようになってから少々物が増えた。食器類は三人分揃えるようになったし、客用の布団なんてものも用意されている。べつに五条はそんな頻繁に来るわけでもなく、よくて月に二回顔をみせる程度なのだが、窮屈になったアパートは以前より風通しがよくなったように感じる。
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