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    kikhimeqmoq

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    kikhimeqmoq

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    2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話なので、ほんのり匂わせ伏五です。禪院が年上で28歳、五条が年下で15歳。しぬ方の話です。

    #禪五
    zen5
    #伏五
    volt5

    こんな風に笑うことがあるのだと初めて知った。

    五条の知る禪院は薄い唇をムッツリと閉じ、切れ長の目を剣呑に光らせていた。笑顔といえば薄笑いか嘲笑いがせいぜいで、口を開けて笑うところなど、15歳のこの日まで一度も見たことは無かった。

    今はどうだ。五条が新しい術式をもって打ちつけるたび、新しい玩具を手にした子供のように目も口も丸くして喜んでいる。

    会えば喧嘩ばかりしていた。お互い御三家嫡男として幼い頃から関わりがある。しかも自分は禪院よりも十も年下で、物心がついて気がつけば既にそこにいる者として存在していた。いつ会っても目障りな存在として。

    幼少であろうが年が離れていようが年上なはずの禪院は若い五条を煽り、手合わせだといって打ちのめした。五条が成長し、いつか禪院を超えるのだと鍛錬しても、こいつはこいつで式神や術を増やした。

    お互い長じて嫡男となり、家と家との都合で顔を合わせれば、容赦のない突っ込みばかり。口数こそ多くはないが、五条の隙を見つけてはロクでもない意見を披露した。五条が怒りで顔を赤くすれば、禪院は涼しい顔で薄く笑う。かなり腹が立った。が、その流し目は美しいと思っていることは、誰にも言ったことはない。


    五条が禪院を打つべく、集中すればするほど、目の前の禪院は笑う。もっとやれ、もっとこいと呪力がぶつかり合う破裂音の奥から楽しそうな声が聞こえた。

    「おまえ、今日は楽しそうじゃないか。やられるのがそんなにいいか?」

    五条が次の手を繰り出しながら禪院に投げかける。別に答えは期待してない。ここで向こうの気が削がれれば早く済む。

    「せっかくの御前試合。楽しまないと損じゃないか」

    禪院は笑うのをやめず、五条から目も逸らさず、追撃する。
    滅多に、目を合わせないのにな。と五条は気づく。
    こいつはいつも、自分を煽るなりからかったりするなりすると、スッと目を逸らすのだ。
    「楽しんでいるうちに、負けたら世話ないだろっ」
    「負けないさ」
    「おまえ、本当はもっと式神がいるのに、隠してんだろ」

    あと数撃で五条が勝ちそうなのに、余裕綽綽の禪院の態度が気になった。そうだ、こいつはまだ式神を九種しか出していない。

    「あれは…」

    言い淀んで、禪院は眉を下げ複雑な顔をした。困ったような笑ったような寂しいような顔だ。

    「おまえには勿体ない」
    「うるさいっ!早くしろよ!本当に僕が勝つぞ」
    「アレがなくても負けねえよ」

    ああもう、腹立つ、もう終わりだ。

    そういきりたって構えたところで目の前が暗くなった。





    背中が熱く、ジンジンと痺れ、手足がうまく動かない。
    突然のことに焦る自分の頭上から、低く太く熱い禪院の声が聞こえた。

    「ふるべゆらゆら……」

    意味が分からず混乱する。こいつは最後の式神を呼ばないと宣言したばかりでは?
    重い目蓋を力一杯開けるとそこは土。倒れている自分の目の前に、禪院の土だらけの足指が見えた。
    見上げると禪院が恐ろしく真剣な顔で最後の式神を呼び出したところだった。

    「おまえ、なにを……」
    「子供は倒れておけ。俺は賊をはらう」

    それだけ言うと、禪院は走り出す。呼び出した式神は禪院を追うが、それは式としての動きには見えなかった。むしろ獲物を追う仕草だ。

    「ちょ、まて……ぜんいん……」

    力を振り絞って立つ。矢を放たれたらしい背中がジリジリと痛む。恐らく傷が痛むのではなく、呪われてるのだ。
    禪院は庭の裏から呪詛師らしき小男を掴み出し、式に投げる。式神はそれを簡単に粉砕し、禪院に向かってった。

    だめだ。だめだそれは。
    待ってくれ。






    次に目を開けた時は真っ暗だった。
    目蓋を上げたと思ったのは寝ぼけた自分の勘違いでないかと、目覚めを誘うように力を込めて瞬きしたが、周囲は特に変わりなかった。
    光もない。音もない。暑くも寒くもない。
    ただ、隣に人の気配がする。見えるわけでないが、確実に奴がいる。
    禪院だ。そのくらい分かる。こいつのことは分かる。

    「式神は…?」
    「俺とおまえとで追い返しただろう」

    そうだ。俺の放った蒼で、弱った式神を倒し、すかさず禪院が影に沈めていた。

    「僕のおかげか」
    「おまえはあの時、術式など放たず、寝ていれば良かったのだ」

    暗闇の中で、禪院の低い声が響く。

    「僕の賊だ。そんなわけにもいかないだろ」
    「だが、ふたりで倒れても仕方ないだろう」

    そういう禪院の声が細いことに気がつく。いつもは重々しく安心感があり、心地よいのに。

    「坊は反転術式を使え」
    「もう坊じゃねえ」

    禪院はいつだって坊と呼ぶ。童の時から15年。とうに元服も済ませた。

    「反転術式じゃ多分助からない」
    「なんでだ」
    「受けた矢に、強い抑止の術が掛かっていた。あんな呪力の強い物に気づかないなんて、試合に集中しすぎたな」
    「は、ならば二人して無駄死にか」
    「禪院は元の場所に帰るだろ」
    「俺はもう一刻も、もたん。腹をやられた。流れたちが多すぎる。おそらく死ぬだろう」
    「なにを……」
    「俺の代じゃ、やっぱり魔虚羅はダメだったな」

    ゆるゆると嘯く禪院は少し笑っているような気がした。顔が見えないので絶対ではないが。

    「ここ、明るくならないのか」
    「なんだ坊、怖いのか」
    「ほざけ!いまさらそんなことあるか!」
    「いや、この暗闇。何がいるか分からんぞ」

    禪院のふざけたような台詞と同時に、口が塞がれる。あたたかい、柔らかいものに。
    動揺して身を捩ると、腕を掴まれた。

    ウソだろ。何がいるんだよ。こんなところ。
    驚いて暴れそうになったが、五条を抑える腕は力強い。暴れても無駄だと気がついたところで、ついでに腕が誰のものかにも気がついた。ここは、ふたりしかいない。見えなくても、呪力の性質でわかる。落ち着けば。

    力を抜いて禪院の腕に身体を委ねる。ゆっくりとした動きで五条を引き寄せる禪院は、合わせた口もぐっと押しつけてきた。

    ぬる、と舌が差し込まれる。温かく滑って優しく動く。こんな時なのに気持ちいいと思った。初めてだな、とも。
    歯列をなぞり、歯茎をなぞる禪院の舌をうっとりと感じていたが、それは不意に離れた。濡れた唇は風などないのに冷たく感じた。

    「嫌じゃないのか?」
    「さあ?」
    「子供は良いか悪いかも分からんか」
    「分かるわ!良かったわ!」

    思わぬ大声が出て恥ずかしくなる。俯くと、すぐそばにある禪院の胸にぶつかった。抱き合っているのだ。なぜか。

    「嫌じゃないのか?」

    禪院は二度同じ問いを口にした。なんで俺に言わせるんだろう。

    「嫌じゃないが。なぜこんなことに」
    「もう死ぬからな」
    「死ぬなよ」

    死ぬよ、と小さく、しかしハッキリと言う禪院の声は乾いていた。唇はあんなに濡れていたのに。

    「魔虚羅を出したから?」
    「そう、アレを調伏するのは禪院の悲願だが、今日はなんの準備もせずに呼び出したからな」
    「なんで……」
    「おまえを卑怯な方法で傷つける奴を許せるわけないだろう」

    暗闇で禪院の瞳が光ったような気がした。

    「僕は、自分がやられればおまえが喜ぶと思っていた」

    告げると、また口付けられた。なんだよ。

    「俺以外のやつに傷つけられるなど、我慢ならん」
    「おまえだったら良いのかよ」
    「そうだ」

    嬉しそうに肯定すると禪院はくつくつと笑う。

    「そうじゃないと、おまえは俺のものにならないだろう」

    そこまで言い切ると、禪院は弾けたように笑った。ずっと我慢していたものを急に解放したみたいだった。

    「生まれた時から最強のおまえを俺のものにするには、勝つしかないと思っていた。そうでなければ、俺がおまえに倒されれば良いと」

    そうか。と思う。
    ずっと、勝負を挑まれるのは、嫌われているのだと思っていた。
    ずっと、僕がその勝負を受けるのは、こいつを追い払いたいのかと思っていた。

    全然、逆だったな。

    お互いにお互いを求めていたのに、戦う以外のやり方が分からなかったのだ。

    「ばかだな」

    独り言のように言い、禪院に口付ける。薄い唇はまだ濡れていた。するすると滑るのが面白い。

    「子供が大人に向かって馬鹿だなんて言うんじゃねえ」

    怒るように言う割に、禪院は僕の頭を掴み引き寄せる。お互いの口を強く吸い、舌を絡め、感じ合う。

    「次は勝つから」
    「次はないだろ」
    「じゃあ、俺の子孫だな」
    「関係ねえ、子孫なんて知らねえよ」
    「違いない」

    笑いながら、また口を合わせる。ぴちゃ、というふたりの水音が耳に心地よい。

    「でもまあ、どちらが最強か決まらなかったのは心残りだな」
    「僕が最強だって、おまえさっき言ったじゃん」
    「でも、まだ勝負ついてなかっただろ。邪魔が入らなかったら俺が逆転した」
    「うるっせえ……」

    抱き合いながら、口付けながら、喋りながら、けらけら笑う。こいつがこんなに自由な奴だなんて知らなかった。自分を手に入れるためにずっと隙を見せないようにしてたのなら、本当にこいつは馬鹿だ。

    「次の相伝は必ずおまえと同じ時代に現れる」
    「なんだよ。それだと俺が先に生まれるってこと?」
    「まあ、そうだな」
    「執念だな」
    「情が深いって言えよ」

    五条をぎゅうと抱きしめる腕は、何かを念じているようだった。

    「必ず、おまえを手に入れるから」
    「それなら、僕は、次も必ず最強でいよう。おまえが見失わないように」
    「うるせえ。最強でなくても、御三家だったら見つけられるだろ」
    「どうだろうな。禪院を離れた血筋かも」

    さあな、禪院はうなずく。
    相変わらず何の音もしない。夜だとしても明ける気配もない。

    「そういえば、ここ、どこなんだ?」
    「俺の影の中。領域みたいなもんだ」
    「ああ、おまえの中かあ」
    「俺はおまえの中に入りたかったけどな」

    ずっと、という禪院は腕に力を込めようとしたが、急に緩んだ。
    ああ、もう、そろそろかもしれないと自然と思う。
    二人とも、命尽きるのだ。ふたり一緒に。
    そう気がついた五条も、徐々に意識が遠のいた。
    目を閉じながら禪院を感じる。
    どんなに手を重ねても、乾き、固くなるのが分かった。抱き合う腕が、冷たくなっていく。









    音も光もない彼の世界で抱きながら願う。
    自分たちの次の相伝は、温かい腕のまま抱き合い続けることができるようにと。
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    kikhimeqmoq

    DOODLE伏五の五条が直哉と話しているだけの落書き。たぶんなんか、あんまり良いネタじゃない。恵が高一の五月くらい。誤字脱字衍字および重複は見直してないです。「君さあ、なんでずっとムカついた顔してんの?」
    久しぶりに御三家の会合があった。うちの当主は二日酔いで欠席するとだらなことを言い出し、次期当主である自分に名代を務めるよう言いつけてた。それはいい。それはいいが、なんでこいつと控え室が一緒やねん。俺、ほんま嫌いやねんけどら
    「悟くんはなんで似合わへん東京弁を使ってるの?」
    「似合ってるでしょ。君の金髪よりはずっと似合ってるし。直哉って昔は可愛い顔してたのに、いつのまにか場末のヤンキーみたいな金髪ピアスになったのは社会人デビューなの?」
    ハハッと乾いた笑いを付け加えた男といえば白髪が光っていた。銀髪というほど透けていないが、真珠みたいに淡く柔らかく発光している。下ろした前髪から覗く青い目はこれまた美しく輝いていたが、柔らかさなんて一欠片もなく世界を圧倒する力を放っている。それは自分が呪術者だから感じる力であって、その辺の猿どもが見たってガラス玉みたいに綺麗だと褒めそやすだけなんだろうが、こいつの真価はそんな見た目で測れるものじゃない。まあ、えげつない美しさっちゅうのは事実やけど。
    「もうすぐ禪院の当主になるっていうもんが、いつまでも五条家に 3020

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    kikhimeqmoq

    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話なので、ほんのり匂わせ伏五です。禪院が年上で28歳、五条が年下で15歳。しぬ方の話です。こんな風に笑うことがあるのだと初めて知った。

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    今はどうだ。五条が新しい術式をもって打ちつけるたび、新しい玩具を手にした子供のように目も口も丸くして喜んでいる。

    会えば喧嘩ばかりしていた。お互い御三家嫡男として幼い頃から関わりがある。しかも自分は禪院よりも十も年下で、物心がついて気がつけば既にそこにいる者として存在していた。いつ会っても目障りな存在として。

    幼少であろうが年が離れていようが年上なはずの禪院は若い五条を煽り、手合わせだといって打ちのめした。五条が成長し、いつか禪院を超えるのだと鍛錬しても、こいつはこいつで式神や術を増やした。

    お互い長じて嫡男となり、家と家との都合で顔を合わせれば、容赦のない突っ込みばかり。口数こそ多くはないが、五条の隙を見つけてはロクでもない意見を披露した。五条が怒りで顔を赤くすれば、禪院は涼しい顔で薄く笑う。かなり腹が立った。が、その流し目は美しいと思っていること 4260

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    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話。あまり伏五関係ないです。タグつけてすみません。禪院が年上で26歳、五条が年下で13歳。生きる方の話です。全速力で宙を駆け、後ろから大股で近づいてくる魔虚羅を引き付ける。
    巨体の向こうでは大勢の者が慌てふためき、恐れ、怒り、逃げ惑っていた。
    喚き叫ぶ声の中から、ひときわ大きな力強い声で「主上をお守りせよ」と命じる声が聞こえた。あの側近は仕事ができる。帝は無事だろう。

    「もうやるか?」

    やかましい風の音に混ざり、背後から緊張した五条の声が聞こえた。

    「まだだ。もっと山までおびき寄せてから」

    急く若者を制しながら鵺を呼び出した。速やかに現れ、主を待つためゆるく飛ぶ式神の背に向け、先に五条を投げた。ばふんと勢いのある音がしたが、回転して受け身をとった五条は背中の中央に膝立ちになっている。それを確認した禪院は、すぐに自分も飛び乗った。

    「このまま山の頂上まで飛ぶ。五条、そこでおまえが一気に片付けろ」

    いいか、魔虚羅に同じ攻撃はできん。一度きりだ。頼んだぞ。

    背を叩くとバシンと中身の詰まった音がした。叩いた指が痛い。このところ手合わせするたびに大きくなっていると感じていたが、ここまでとは。
    禪院が頼むまでもなく、六眼と五条家相伝の術式を得たこいつは、神を落とそうとしたとて仕損じることは 3800

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    kikhimeqmoq

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    kyou99999

    DOODLE第3回 お題「半分こ」 伏五版ワンドロワンライ「恵さ、前僕にプロポーズした時僕の人生半分背負うって言ってたよね」
    「唐突に何なんですか」
    「なんかふと思い出して」
    「言ってませんね。記憶違いです。あとプロポーズはまだしてません」
    「え~言ったよ~」

    ごろごろとベッドの上を転がる五条の姿は、今から色事に及ぼうとしている人の様には全く見えない。
    伏黒が浴室から戻ってくると、五条は既に全裸にサングラスという傍から見れば異様な格好で布団もかけずにスマホを弄りながら転がっていた。
    その姿は伏黒の欲を煽るというよりも、だらしがないという印象しか与えなかった。

    「ほらあの時さ、人生がどうとか時間どうとかそういうの俺にくれみたいな事なんか言ってたじゃん」

    あの時、とは勢い余って五条に自身の想いを伝えてしまった時のことだろうか、と伏黒は当時の状況を思い返す。

    「まぁ似たような事は言いましたけど」

    伏黒は言葉を紡ぎながら五条が転がるベッドへと腰かけると五条の髪を指で梳く。やっぱりちゃんと乾かしていなかったんだな、と伏黒はひとりごちた。

    「人生半分背負うなんて言ってません。アンタの人生なんて半分にしたところで通常の1人分以上の重さあるんです 1190