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    kikhimeqmoq

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    kikhimeqmoq

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    2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話。あまり伏五関係ないです。タグつけてすみません。禪院が年上で26歳、五条が年下で13歳。生きる方の話です。

    #禪五
    zen5
    #伏五
    volt5

    全速力で宙を駆け、後ろから大股で近づいてくる魔虚羅を引き付ける。
    巨体の向こうでは大勢の者が慌てふためき、恐れ、怒り、逃げ惑っていた。
    喚き叫ぶ声の中から、ひときわ大きな力強い声で「主上をお守りせよ」と命じる声が聞こえた。あの側近は仕事ができる。帝は無事だろう。

    「もうやるか?」

    やかましい風の音に混ざり、背後から緊張した五条の声が聞こえた。

    「まだだ。もっと山までおびき寄せてから」

    急く若者を制しながら鵺を呼び出した。速やかに現れ、主を待つためゆるく飛ぶ式神の背に向け、先に五条を投げた。ばふんと勢いのある音がしたが、回転して受け身をとった五条は背中の中央に膝立ちになっている。それを確認した禪院は、すぐに自分も飛び乗った。

    「このまま山の頂上まで飛ぶ。五条、そこでおまえが一気に片付けろ」

    いいか、魔虚羅に同じ攻撃はできん。一度きりだ。頼んだぞ。

    背を叩くとバシンと中身の詰まった音がした。叩いた指が痛い。このところ手合わせするたびに大きくなっていると感じていたが、ここまでとは。
    禪院が頼むまでもなく、六眼と五条家相伝の術式を得たこいつは、神を落とそうとしたとて仕損じることはないだろう。

    鵺が山の頂に差し掛かった時、後ろから大きな呪力の塊が迫った。
    魔虚羅だ。丁度良い。狙い通りの場所で追いつかれた。

    いざ、と禪院が思ったのと同じくして五条は立ち上がる。少し前まで見下ろすほど小さかったこいつは、己の隣ですいと背を伸ばして立ち、目元の布に手をかけた。
    はらり、と風に舞った白い布が隠していた白い睫毛と青い瞳が日の光をうけて輝く。
    青い空を写したような瞳と、真っすぐに立つ白い身体は、夏の若木を思わせた。

    「虚式」

    落ち着いた、低く硬い声が術式を唱える。






    「僕の手柄だな」

    小さな鼻の穴を広げ、興奮した様子で鷹揚に語る五条は嬉しそうだった。
    十以上も歳が離れているとはいえ、無心に喜び誇る様子は、幼さを感じさせ少々愛らしかった。

    「俺がどれだけの力で鵺を支えていたか知るまい?足元が消え去れば調伏どころではなかったぞ」
    「僕が仕留めたことには変わらかわらないだろう!」

    それはそうだ。
    だからといって口を尖らせて不満を訴えるのでは台無しではないか。
    先ほどまでの凛とした佇まいや凄まじい力を考えると、その差にひどく面白くなる。
    まあ座れ、と腕を引き膝の上の座らせた。脚の隙間に収まりきらないらしい硬い尻は、何度か場所を変えた後に、座りの良い場所をみつけ静かになった。

    鵺は静かに空を飛び続ける。

    「もう、だいぶ遠くまで来たな」
    「そうだな」
    「あいつら、僕らを探してるかな」
    「家の者たちか?」
    「そう、一応あいつらも術者なんだから探そうと思えば探せるだろ」
    「あいつらって、五条家の手練れをそんな風に言えるのはおまえだけだろ」

    でも、あいつらは、あいつらだし。
    さも忌々しげに言い捨てた五条は、頭を禪院の胸にもたれかけた。
    少し、疲れているのは呪力を使い過ぎたのか。計画がうまくいったからなのか。

    「姿が見つからないんだから、魔虚羅にやられて死んだと思われただろうな」
    「心中だな」
    「実際は駆け落ちなのにな」

    ふごふごと鼻を鳴らして含み笑いをする五条は、自分の腕を引き寄せた。密着する胸と背中があたたかい。

    「相伝術式の当主に逃げられたと知ったら、泡吹いて倒れるんじゃないか?禪院の爺どもは」
    「それより六眼がいなくなった五条の爺と婆達は卒倒して先に地獄で待ち構えているだろうよ」
    「元気な五条の奴らより、うちの爺の方が先に地獄に行ってるって」

    目の前で笑って揺れる白髪に手を入れ、くしゃくしゃと掻き混ぜながら問うた。

    「本当に良かったのか?もう戻らないぞ」

    確認のつもりだったのに、五条は間をおかず答える。

    「話を持ち掛けたのは僕の方だ」
    「そうだな」
    そうだ。何の夜だったか。雪でも降りそうな寒い夜だった。








    「僕と死んでほしいんだけど」
    「やなこった」

    どうして、おまえと一緒に、という言葉は思い浮かばなかった。それどころか、同じように強く、同じように苦い日々を過ごしているだろうこいつと、同時にこの世からいなくなるのは、すっきり爽快な気持ちになれるような気がした。呪術師など碌なものではない。ましてやその頂点ともいえる御三家当主ともなれば。
    ただ、まだ死にたくはなかったので、断った。腐った世界でも、まだ知りたいことは山のようにある。

    だいたい五条の意味が分からない。
    突然、他家の結界をすり抜け部屋に侵入したあげく「死ね」とはいったいどういうことか。

    部屋の入口に立つ五条はさも意外そうに「なんだ」と呟く。

    「禪院なら面白い話にはのってくれると思ったのに」
    「死ぬ話が面白いことあるか」
    「死んだらこの世からいなくなれるよ」

    一瞬、見抜かれたかと思ったが、五条は自分の動揺は気にかけず続けた。

    「いなくなれれば、死ななくてもいいんだけどね」
    「何が言いたい」
    「禪院は今の自分を良しとしてるの?」

    答えずに様子をうかがっていると、ほとんど灯を置いていない暗い部屋で、五条の目が光る。青い光は、全部を見透かしそうだった。

    「いや、」
    「御三家なんて、どうでも良いと思わない?」

    十幾つも年下の男が、自分と同じことを考えていることに驚くと同時に、当たり前だろうと得心した。

    「なんかね、さっきもくだらないことで伯父と筆頭がこそこそと争っていて」

    僕はもう、どうでもいいんだ。
    普段はすっきりと整った顔を歪めて、小さく言った。
    五条家は六眼の少年を分家から引き取り、十歳で当主に据えた。三年前の話だ。呪力と術式の強度は、そのまま家の力となる。術師なら誰もが羨む六眼を手に入れたことで、五条家は百年安泰かと恐れられていたが、実際は若すぎる分家の息子を当主にしてしまったことで、内紛が絶えないようであった。

    「禪院だってこの間の酒席で、もうどうでもいいんだって言って、意地悪く笑っていたから」
    「うん」
    「一緒にいなくなってくれるんじゃないかって、思いついたら、もうここにいたんだ」

    立ち尽くす五条に手を伸ばす。五条も垂らしていた腕を上げ、ゆっくりと自分に寄り、指先を触れ合わせる。チリ、と音がしたような気がする。反応したのは、寒さか呪力か魂か。
    素早く手首をとり、腕を引き膝の上の座らせた。脚の隙間に収まりきらないらしい硬い尻は、何度か場所を変えた後に、座りの良い場所をみつけ静かになった。

    「いなくなるっていっても、ただ行方をくらませただけでは、すぐ見つかってしまうだろう」
    「俺たちは強いよ」
    「あいつらのしたたかさは、おまえも呆れているだろう?」
    だから、ここにいるんだろう。と抱く腕を強めると、五条は更に体を寄せた。
    「そうなんだよな」
    「分かってんじゃないか」
    「だから、死んだことにしようと思って」
    「だから?」
    「そう、僕が簡単に死ぬことは無いけれど」
    「生意気だけど、そうだな」
    「禪院と真剣にやりあったら死ぬだろう?もしかしたら」
    「俺は強いからな」
    「僕の次に強いからな」
    「舐めんなよ小僧」
    抱きしめている腹をくすぐると、身を捩って五条は笑う。暗くて寒い部屋に、楽しそうな二人の笑い声が満ちた。
    「俺たちは強いから、やりあってその場が滅茶苦茶になったら、死んだって思われるかもしれない」
    「…………来月の御前試合のことか」
    「さすが。察しがよくて助かるよ」

    その晩、二人で嘘の相打ち計画を立てた。呪霊を祓う計画よりも、頭のおかしい呪詛師を倒す計画よりも、罪はなくとも権力者に都合の悪い奴を殺す計画よりも、今までの何よりも楽しい企てであった。







    膝に抱えた五条は、鵺の頭の向こうを覗く。眼下に、灰色の田畑が続いていた。

    「もう、国は越えたかな?」
    「そうだろうな」

    風は相変わらず冷たいはずだが、いつの間にか五条が無限をはったらしい。頬には何も感じななかった。

    「この先、江戸にでも行くか? これからは東国の時代やもしれん」

    振り向いた五条が意味深な顔で笑う。

    「東国に行ったって、そのうち誰かに見つかるよ」
    「そうだな。あいつらなら、追いかけてくるのかも。地獄の果てまで行けば見つからないだろうがな」
    「いや、地獄よりは天国だろ」

    五条は丸く青い目をさらに丸くして隣の俺を見上げた。

    「天国なんか行けないだろう。術師の俺たちじゃ」

    言い返せば、愉快そうに笑う。子供と大人の混じった不思議に楽しそうな顔だ。

    「西方には天国があるかもしれないだろう。このまま海を越えて行けば」

    海かあ。
    海を超えれば、さすがに誰にも分からない。家の者たちは、当主はやはり死んだものだと諦めるだろう。

    「天国じゃなくて、新しい地獄かもしれんぞ?」

    くっくっく。喉を鳴らして若者は俯き、ひとしきり笑ってから再度碧い目を光らせた。

    「おまえとなら楽しい地獄になりそうだ」



    自分と五条を乗せた鵺は西に向かって飛び続ける。
    不揃いな地平線に代わり、赤く広い水平線が現れた。沈む陽に向かって進む式神の上で、自分と五条は唇を合わせた。初めてだった。
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    kikhimeqmoq

    DOODLE伏五の五条が直哉と話しているだけの落書き。たぶんなんか、あんまり良いネタじゃない。恵が高一の五月くらい。誤字脱字衍字および重複は見直してないです。「君さあ、なんでずっとムカついた顔してんの?」
    久しぶりに御三家の会合があった。うちの当主は二日酔いで欠席するとだらなことを言い出し、次期当主である自分に名代を務めるよう言いつけてた。それはいい。それはいいが、なんでこいつと控え室が一緒やねん。俺、ほんま嫌いやねんけどら
    「悟くんはなんで似合わへん東京弁を使ってるの?」
    「似合ってるでしょ。君の金髪よりはずっと似合ってるし。直哉って昔は可愛い顔してたのに、いつのまにか場末のヤンキーみたいな金髪ピアスになったのは社会人デビューなの?」
    ハハッと乾いた笑いを付け加えた男といえば白髪が光っていた。銀髪というほど透けていないが、真珠みたいに淡く柔らかく発光している。下ろした前髪から覗く青い目はこれまた美しく輝いていたが、柔らかさなんて一欠片もなく世界を圧倒する力を放っている。それは自分が呪術者だから感じる力であって、その辺の猿どもが見たってガラス玉みたいに綺麗だと褒めそやすだけなんだろうが、こいつの真価はそんな見た目で測れるものじゃない。まあ、えげつない美しさっちゅうのは事実やけど。
    「もうすぐ禪院の当主になるっていうもんが、いつまでも五条家に 3020

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    kikhimeqmoq

    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話。あまり伏五関係ないです。タグつけてすみません。禪院が年上で26歳、五条が年下で13歳。生きる方の話です。全速力で宙を駆け、後ろから大股で近づいてくる魔虚羅を引き付ける。
    巨体の向こうでは大勢の者が慌てふためき、恐れ、怒り、逃げ惑っていた。
    喚き叫ぶ声の中から、ひときわ大きな力強い声で「主上をお守りせよ」と命じる声が聞こえた。あの側近は仕事ができる。帝は無事だろう。

    「もうやるか?」

    やかましい風の音に混ざり、背後から緊張した五条の声が聞こえた。

    「まだだ。もっと山までおびき寄せてから」

    急く若者を制しながら鵺を呼び出した。速やかに現れ、主を待つためゆるく飛ぶ式神の背に向け、先に五条を投げた。ばふんと勢いのある音がしたが、回転して受け身をとった五条は背中の中央に膝立ちになっている。それを確認した禪院は、すぐに自分も飛び乗った。

    「このまま山の頂上まで飛ぶ。五条、そこでおまえが一気に片付けろ」

    いいか、魔虚羅に同じ攻撃はできん。一度きりだ。頼んだぞ。

    背を叩くとバシンと中身の詰まった音がした。叩いた指が痛い。このところ手合わせするたびに大きくなっていると感じていたが、ここまでとは。
    禪院が頼むまでもなく、六眼と五条家相伝の術式を得たこいつは、神を落とそうとしたとて仕損じることは 3800

    kikhimeqmoq

    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話なので、ほんのり匂わせ伏五です。禪院が年上で28歳、五条が年下で15歳。しぬ方の話です。こんな風に笑うことがあるのだと初めて知った。

    五条の知る禪院は薄い唇をムッツリと閉じ、切れ長の目を剣呑に光らせていた。笑顔といえば薄笑いか嘲笑いがせいぜいで、口を開けて笑うところなど、15歳のこの日まで一度も見たことは無かった。

    今はどうだ。五条が新しい術式をもって打ちつけるたび、新しい玩具を手にした子供のように目も口も丸くして喜んでいる。

    会えば喧嘩ばかりしていた。お互い御三家嫡男として幼い頃から関わりがある。しかも自分は禪院よりも十も年下で、物心がついて気がつけば既にそこにいる者として存在していた。いつ会っても目障りな存在として。

    幼少であろうが年が離れていようが年上なはずの禪院は若い五条を煽り、手合わせだといって打ちのめした。五条が成長し、いつか禪院を超えるのだと鍛錬しても、こいつはこいつで式神や術を増やした。

    お互い長じて嫡男となり、家と家との都合で顔を合わせれば、容赦のない突っ込みばかり。口数こそ多くはないが、五条の隙を見つけてはロクでもない意見を披露した。五条が怒りで顔を赤くすれば、禪院は涼しい顔で薄く笑う。かなり腹が立った。が、その流し目は美しいと思っていること 4260

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    DONE2020/01/21 慶長禪五(伏五)。ご先祖の御前試合の話。あまり伏五関係ないです。タグつけてすみません。禪院が年上で26歳、五条が年下で13歳。生きる方の話です。全速力で宙を駆け、後ろから大股で近づいてくる魔虚羅を引き付ける。
    巨体の向こうでは大勢の者が慌てふためき、恐れ、怒り、逃げ惑っていた。
    喚き叫ぶ声の中から、ひときわ大きな力強い声で「主上をお守りせよ」と命じる声が聞こえた。あの側近は仕事ができる。帝は無事だろう。

    「もうやるか?」

    やかましい風の音に混ざり、背後から緊張した五条の声が聞こえた。

    「まだだ。もっと山までおびき寄せてから」

    急く若者を制しながら鵺を呼び出した。速やかに現れ、主を待つためゆるく飛ぶ式神の背に向け、先に五条を投げた。ばふんと勢いのある音がしたが、回転して受け身をとった五条は背中の中央に膝立ちになっている。それを確認した禪院は、すぐに自分も飛び乗った。

    「このまま山の頂上まで飛ぶ。五条、そこでおまえが一気に片付けろ」

    いいか、魔虚羅に同じ攻撃はできん。一度きりだ。頼んだぞ。

    背を叩くとバシンと中身の詰まった音がした。叩いた指が痛い。このところ手合わせするたびに大きくなっていると感じていたが、ここまでとは。
    禪院が頼むまでもなく、六眼と五条家相伝の術式を得たこいつは、神を落とそうとしたとて仕損じることは 3800

    kikhimeqmoq

    DONE2020年バレンタインの修正再放送です。
    恵たちが高専1年生で、五条先生にチョコをあげる話なので、未来捏造どころかパラレルになってしまいましたが、こういう日があったらよかったのになあという気持ち。っていうのは半分建前で伏五にチョコ食いながらキスして欲しかっただけです。すみません。
    「伏黒、家入さんが呼んでるって」

    その日の授業が終わり、中庭に向かう時だった。二年生が体術の稽古をつけてくれる約束だったので。
    職員棟から走ってきた虎杖は、扉の隙間からそれだけを告げ、風のように駆け抜けていった。ドタバタという足音と意味のない咆哮が遠ざかっていく。相変わらずうるせえな。

    家入さんだったら保健室か。
    保健室というよりも実験室と言った方が正確であろう半地下の部屋は、入口から薄暗い。黄ばんだ引き戸を開けると、少しだけ消毒液のにおいがした。何だか緊張する。
    保健室に来る時は大抵怪我をしているか、ミスって呪われた時か、捕獲した呪霊を実験台にする時ぐらいで、何の用事もなく来る場所じゃない。最近の任務は単純なものばかりで暇なので、特殊事例の聴収もないはずだ。
    それなのに、家入さんが?俺を呼んでるって?







    「めぐみぃ、来た?」

    保健室の中から聞こえた声は、予想していたものではなかった。
    その声に咄嗟に口を尖らせる。
    家入さんじゃないということは別にいい。その声が、聞きなれた男の声だというのが面倒くさい。また碌でもないことを始めたか。
    間延びした声で俺を呼ぶ人は、背が高 3510

    nnn

    DOODLEとーじにやられた時の傷が残ってたら、な伏五ちゃん
    どんなに痕残したり傷つけたりしても結局反転で消えちゃうのに、ただ一つ痕残せたのがめぐの父親であるとーじってめちゃめちゃエモくないですか
    額に落ちる前髪を鬱陶しげにかき上げたときに見えたのは、陶器のように艶やかな肌に似つかわしくない瘢痕だった。
    彫刻か何かのように、一つの狂いすら許さないものと思っていた彼の身体に残る歪な傷跡は伏黒に鮮烈な印象を与えた。

    穏やかでない色を潜めた深緑の瞳に気付かない訳もなく、刺すような視線を一身に浴びる五条は仕方ないと言った様子で真っ白な髪を上にやり、視線の求める先を露わにする。

    自ら求めたはずなのに、いざまじまじと見せつけられてつい目を逸らしてしまう。
    向かい合って座る伏黒のそんな様子を気にすることもなく、血の気のない指先で額を撫でながら言葉を転がし始めた。
    「もっとザクザクって刺されて、ズバーッてぶった斬られたんだけど、他は綺麗さっぱり。ここだけ残っちゃったんだよねえ。ま、初めて反転使ったのがこの時だからいきなり100パー完璧になんて無理だったのかな」
    けらけらと笑いながら口にされる、捉えようのない抽象的な擬音と不穏な言葉の羅列に、伏黒は隠すこともなく顔を顰めた。

    「どしたの恵難しい顔して。もう痛くないしただのケロイドだよ?」
    「五条先生に傷つけるなんて、よっぽどの奴ですよね」
    1140