バレンタイン狂想曲 バレンタイン。
それは街が甘い香りに包まれる、年に一度の特別な日だ。菓子は友人同士で交換したり、或いは義理という形で渡したりすることもあるが、それでもこの日に特別な想いを持つ者も多いのは確かだろう。しかし反対に、このお祭りムードに慣れすぎてしまった人間がいるのもまた然りで。
「今年もまたすげぇ量だなランサー。ほら、エコバッグあるから貸してやるよ」
「あ、おう、助かるわ。サンキュ」
二月十四日。その日のランサーは、正に引っ張りだこという言葉がぴったりくるような有様だった。
ランサーくん、これ貰って! チョコ! そう言って寄越されたラフなものから、これは原材料どこ産なのかと首を傾げたくなるようなものまで、重みこそ様々ではある。あるものの、数がやたらと多い。長い付き合いの友人などは慣れたもので、あっという間に両手で抱えきれない量に膨れ上がってしまうランサー用の菓子のために、袋を用意してやる始末だ。
14025