大人にしあず(5)「おおお!畳-!!」
少しきしむ階段の先、2人の目に仕切りのない大きな広間が飛び込んだ。
開け放された窓から見える木造の家々、すこし遠方で揺らめく水平線。
先ほどの店員の話とは裏腹に、掃除の行き届いた清潔な匂いと新鮮な空気がなんともすがすがしい。
「やっぱいいっすねぇ畳。懐かしい」
「この感じ、ちょっと合宿を思い出しちゃうな。・・・って、ちょっ」
早速がらりと押し入れを開け手際よく布団を敷き始める後輩に面食らう。
「おまえ、一応人んちなんだからもう少し遠慮しようよ」
「せっかくの好意なんすから、どーんと甘えましょ」
けろりとした物言いにおろおろしつつも、妙に反論できない。こういう無自覚の善性が、いろんなところで遺憾なく発揮されているのだろう。
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