シンデレラ...それ舞踏会に着るドレスじゃないでしょ...「シンデレラ、私達は舞踏会に行くからね、掃除と留守番をよろしく頼むわね」
別にダンスとかピアノだとか興味ないから勝手に舞踏会に行ってもらっても構わないのだが、この国というのはドレスばっかりで面白くない。舞踏会をするにも、ピアノを弾くにも、外に出るにもドレスが必要だ。丈の長いドレスだなんて、私は嫌よ。スカートが汚れるじゃない。そして滑るし。それで何度怪我をしたことか。それにコルセットって凄いキツいじゃない。そうよ、絶対に腰が折れるわ。
今の話を簡単に言えばドレスに飽き飽きしているの。同じ型紙で、同じレース。いくら国がそんなデザインで繁盛してるからって舐めるんじゃないわよ、女子のファッションセンスを。
そんなことを考えていたら掃除を終えてしまった。寝るのもあれなので趣味の服作りをしましょう!
...この時代にそぐわないわね、なんか奇抜なデザインが出来ちゃったじゃないの。マーメイドみたいで可愛いじゃないかしら?貴族が似合いそうな服じゃない?
これもそうね、袖がふわっとしてるわ、子供が気に入りそうね。...これを舞踏会で来ていくのはありじゃないかしら?
キラキラ光る城は山の天辺にあった。
...距離が遠いわね、諦めましょう。
そんな時、お呼びですかと言わんばかりに妖精が姿を表した
「あら、妖精さんこんばんわ。お城に連れてって欲しいの。」
「さっきまで『舞踏会とか興味ない』とかほざいてたのに?」
性格の悪い妖精だこと!!!!
...興味ない、って言ったのは私だけど...。
「お城に行きたいのね、分かった。じゃあドレスの用意を」
「それはいらないわ、馬車だけで十分よ」
「そうですか...残念です...チッ、せっかくのボーナスが...」
「準備が終わりました、あと今舌打ちしましたよね、さっき言ってたあのボーナスってなに、」
「いえなんでもないです行きましょう」
話を変えられて気分が悪い。妖精にボーナスだなんてある?
「はいじゃあ着きましたよ。六時までにはここに帰ってきてね、六時過ぎたら自分の足で帰って貰うことになるからね!」
ハイヒールは履き慣れていないが、魔法のお陰か意外と歩けるものだ。
ピアノの音がよく聞こえる。これは伴奏者さんがいい方って事ね、じゃあ気分も乗りやすくなりそうね!
...今さら思った。このドレスって誰が注目するの?流行ってすらないし、そもそも名前すらない。あーあ、着て来ただけ無駄だったかしらね、損よ損。妖精呼んで帰ろうかしら?
夜風は柔らかく、ベールのように体を包んでいた。
「そこのお嬢さん?」
声を掛けたのは国の王子じゃない誰かさん。
「えっと、どちら様?」
「隣国の王子です。ジースって言います。舞踏会に馴染めず、ここに来まして。フェンスの先約が貴女でしたから、僕が来るのは迷惑かなと」
「別に構わないわ、お好きにしてって頂戴」
「お隣失礼しますね」
青い瞳が輝いている王子。幸せそうな顔をしている。
「何をそんな笑顔でいらっしゃるのでしょうか」
正直気持ち悪いというかなんというか...
「いやー?貴女のドレスが好みでね、ほら袖とか。ふわふわしてて好みなんですよ!スカートの部分とか何処の国の生地を使ってるんですか!?素敵な色合いですね...!」
私のドレスをべた褒めしている。世辞じゃない、本当に褒めちぎっている。
「それ一着下さい」
「これ女性用ですが」
「じゃあ生地だけでも」
「隣国から遠いじゃないですか?」
「じゃあ嫁になってください。」一瞬のプロポーズ。
「嫁だったら永遠に作って貰えるじゃないですか?」
「...交渉成立ね」ふふふ、と微笑み合っているその時
『シンデレラぁぁぁぁぁ!!!!』継母の大声が真後ろで響いた。継母の後ろには大勢のプリンセスがいる。何の用かしら?
「シンデレラ...何よそのドレス...」
『素敵じゃない!』またもや褒められた。
「そして隣の男!あんたはシンデレラと結婚しなさい!一生シンデレラのマネキンとして生涯を共にしなさい!」なんやかんや継母からOKが出た。
そして今、隣国で元気にしています。
ずっと一緒にいます。服も作り続けています。
ここ最近、シックなドレスよりもストリート系ファッションが流行りそうです。
国の景色が丸々変わりそう。ビルが多くなりそうですかね。
貴族制度もいずれ消えるのではないのでしょうか?