Green-eyed monster「あー……止めだ、止め。お前と話してると、緑の目に睨まれちまう。鬱陶しいったらありゃしねえ」
雑談中のプラネットが、突然そんなことを言い出した。どういう意味だと問う前に立ち去られ、サンシャインは一人途方に暮れる。
「何なんだアイツ……」
意味の分からないことを言われた上に、置き去りされてしまった。本気でよく分からないが、今度のスパーは楽しくなりそうだ。
知らず拳を握りしめていれば、視界の端に影が落ちた。振り返って息を呑む。
「アレの行動はおおよそ謎に満ちているような気もするがな」
同僚のザ・ニンジャが佇んでいた。その上、素知らぬ顔で話しかけてくる。
いくら悪魔六騎士の筆頭と称される自分であっても、流石にこれは心臓に悪い。半ば後退りながら、誰しもが思うだろう問いをぶつける。
「うおっ⁈ なん……ニンジャ? 何時からいたんだお前」
「お主がプラネットにビスコットをせびり始めた頃からだが」
それが何か? と言わんばかりの態度に肩の力が抜けた。
「いや初めっからじゃねえかよ……」
せっかく雑談をするのだから、と。コーヒーを淹れてきた代わりに、アイツの手持ちを差し出させたのは事実だが。
(普通に参加すりゃ良いのになァ)
潜み続けるよりは楽だろうに、こいつもこいつで中々に意味が分からない。首を竦めつつ、カップに少し残ったコーヒーを飲み干す。
「ふむ……プラネットのわりに、なかなか悪くない選択だな。抹茶味か」
「あっこらお前、気になったからって勝手に食うんじゃねえ! アシュラでも一言あるぞ」
「一言といっても『食うぞ』と宣言するだけだろうに……甘やかしすぎているのでは? 」
「そんなことも……ねえよな? ねえよ! 」
「フ……断言できぬ辺り、怪しいものだがなァ」
――どうしたコイツ、妙にハイテンションだぞ。
三切れあったのが残り一切れになってしまった茶菓子の皿を高く持ち上げ、諦める気配のないニンジャから遠ざける。
こんな絡み方をしてくるのもかなり珍しい。先ほどプラネットがいた時と変わらぬ騒がしさを、コイツといて感じることになるとは思わなかった。こんな時間から酒を飲むような奴でもなし、本当に何があったのやら。
首を捻ってみても、思い当たる節は特に無い。何なんだと視線を落とした先で、忍の瞳は愉しげにサンシャインを見上げていた。