車窓ガタンゴトン、と星の少ない暗く先の見えない夜道を走り続ける電車という乗り物。
厳島で敗れた後、あの長大な碇槍によって受けた痛みも、肌を焼くような日輪の輝きも遠くなる意識と共に段々と薄れていき、気がつけば小さな船に乗っていた。
傷も、着物の乱れもなくそこにあるのは大袖と兜を取り払った己の小さな体のみ。
船に乗っている間空に星は少なく、月は新月のようで姿の見えぬ暗い海をただ静かに進んでいた。
ざぶんざぶん、と波をかき分ける音だけを聞きどれだけ進もうが夜は明けず、また陸地も見えてこない長く続く旅路。
それからどれくらいの時間が経ったのか、いつのまにか船を降りこの電車という乗り物に乗っていた。こんな乗り物は知らぬはずなのにこれは電車という乗り物だと認識していた。
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