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    強塩基

    @gougawaku

    東ディバに沼り中。クセつよつよ小話しか書けませんので、お口に合わなかったらぺっして下さい。強めの幻覚を見る癖があるので、ご注意を。今のところグール日常系か、グール✕特待生を書く予定。成人向けはそのうち書くかもしれません。

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    強塩基

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    伯玖←やきもち特待生。 
    フォロワさんからネタをもらいました。ありがとうございます。昴流さんは潜入捜査学の成績がいい筈。

    #東ディバ
    #伯玖特

    鳴片 やいたりついたり







     聞きたくない噂を聞いた。




     最初は人違いだと思った

     次は気のせいにした


     だけど、

     断片は重なる内に確かな情報となった。



    「草薙先輩が」


    「え、うそでしょ」


    「すっごい美人だったらしいよ」


    「どれもんよ」


    「あー、あの人結構アレだよね」




     やだ、やだやだやだ

     人の口は覆えないし
     人前で耳は塞げないので


     俯いて
     肩を竦めて


     小走りでその場を去る


     あんな噂、
     あと何日聞かなければいけないのだろう



     さらっとして
     優しくて

     ちょっとやらしい冗談は言うけど

     だけどそこがまた
     やわい女心をくすぐられてしまう

     三白眼は凶相と言われているが
     当たりのやわらかさのおかげで
     寧ろ魅力的に見える


     腰が痛いだの肩が凝っただの
     中年みたいな事を言う癖に


     子どものように

     大きな声や
     差し迫った声で脅かしてきて

     
     その度こっちが
     びっくりしたり困ったりすれば

     あっさり謝ったり冗談にする

     次会う時には
     しっかりするぞと構えていれば

     肩透かしのように飄々として
     気を付けて帰んな、と頭をぽんぽん


     モテない理由が何処にある


     そこまで思い起こして気が付いた。




     もしかして、自分


     からかいやすい

     後輩、としか

     見られていないのでは。




     自分の出した答えに
     勝手にショックを受けて

     頭の上に
     10年分の埃を乗っけたぐらいの気持ちで

     とぼとぼと項垂れて歩く



    「よ、」


     あ、と思う前に
     つい顔を上げてしまって


     ばかばかばか、と自分を罵る


    「どうした?
     まるで頭に石でも乗っけてるみたいだぜ」


     そう笑って

     わるいものを掃うように

     簡単に人の頭を撫でてくる。


     下心とか
     やましい気持ちとか

     そんなものが無いから

     この距離なんだろうな、と

     
     そう思うと


     ん?と親切そうに首を傾げる

     この人がすっごく憎らしくなって

     何でもないです、と


     精一杯、つんとした

     大人っぽい表情をしてみたのだが


    「今日のお姫様は随分と

     つむじ曲がりだな」


     と言いながら、この辺か?と

     人差し指で頭の天辺を

     つむつむとつついてくるので


     からかわないでくださいっと
     つい子どもっぽく怒ってしまう


     しまった、と思ったのだが


    「はは、すまんすまん」

     
     ひょい、と距離を取って

     あっさり謝る


     まるでお手玉にされている気分だ。


     美人の彼女がいるくせに、

     こんな風に
     近寄ったり触って来たりするのは

     誰からどう見ても重罪だ

     
     だから、
     はっきりと言ってやるのは

     寧ろ善い事なのだ


     彼女さんが嫌がりますよ、と。




    「は?」



     三白眼が

     きょとんと見開かれて


     そんな顔も
     かっこよくてかわいいと思う辺り

     自分は相当ずぶずぶだ

     きっと足元は沸き立つ熱泥に塗れている


     分かってないこの自称ぼんくら息子に

     で、す、か、ら、と

     噂話を証拠として
     こんこんと指を差して詰めれば


     ぱちぱち、と瞬きを繰り返し


     やがて、

     ぐ、とむせたかと思うと


     口元に拳を当てて顔を背けだす



     もしかして、



     笑って


     いらっしゃる??
     


     そんな草薙の反応に
     今度はこっちがぽかんとしてしまう。


     思っていたのと全然違う反応に

     さっきの

     判事のような厳かで全き気持ちは

     しなしなとしぼんで

     幼児のように
     ぐずぐずと地団駄を踏みたくなる


     だけどそんなのみっともないから

     ぎゅうっとスカートを掴むのだ。



     そんなこっちの変化に気づいたのか

     草薙は
     んっ、と咳ばらいをして

     



    「昴流さんなんだよ、」




     ぽわっと

     あのやさしくて儚い寮長の顔が浮かべば


     ぐっと引き結んだ唇から力は抜ける



     恐る恐る
     草薙の顔を見上げれば 



     困ったように眉を下げながら

     その癖何故か
     
     口元は嬉しそうに緩んでいて



    「こないだちょいと潜入捜査があってな

     人手が足りないってんで、

     急遽俺と昴流さんが駆り出されたんですよ」


     話によると任務先が
     夫婦でなくては入れない
     特殊な場所だったらしく

     加賀見の特殊な来歴を活かす事になったのだと



    「俺は特に変装もせずに行ったからなあ

     いやはや人の噂ってのは怖いもんだ」



     今すぐ、


     ボーリングマシンで地面に穴を開けて

     地中深くまで潜りたい



     何と言うばかな事を言ってしまったのだと


     必死で謝るが


     顔は恥ずかしさでぐちゃぐちゃだし

     言葉はこんがらがって縺れるばかりだ


     何度も頭を下げたせいで

     髪の毛はぼさぼさで



     もうこんな自分をほっといて
     何処かに行って欲しい


     稼働中の洗濯機のように
     独りでぐるぐるしていたら



     参ったねえ、と

     ちっとも参ってない声で


     顔を覗き込んでくる



    「取り合えず落ち着きなさいよ。

     俺はちっとも怒って無いし

     寧ろ、塞翁が馬ってな」


     ふっと笑って


     風のように軽く


     ひらりと手を振る



     それはどういう意味なのかと

     首を傾げれば


     
     またいたずらを仕掛ける
     子どものような顔、



     だけど



    「次は、俺の奥さんとして任務に行きますか」




     色とりどりのクラッカーが



     頭の中で

     思い切り弾けた。



     きらきらと散るのは


     眩暈だったり

     嬉しさだったり

     耳鳴りだったり

     期待だったり



     そんな自分の顔を見て


     まんざらでもない、と理解したのか



    「一度は焼かれてみるもんだな」


     
     ぼさぼさになった髪に

     するりと手櫛を入れ


     存外、いい気分だと


     存外どころか
     すこぶる甘い顔で
     言うものだから




     次の日から



     やや内容が変更された
     噂の期限が延長される事になるとは


     お互いに知る由も無かった。


     

                         終         
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