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    強塩基

    @gougawaku

    東ディバに沼り中。クセつよつよ小話しか書けませんので、お口に合わなかったらぺっして下さい。強めの幻覚を見る癖があるので、ご注意を。今のところグール日常系か、グール✕特待生を書く予定。成人向けはそのうち書くかもしれません。

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    強塩基

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    書く気は全く無かったのですが、ふょろわさん同士のやり取りを見てて思い浮かんでしまった翔←昴流。何かこう、昴流さんは人妻感のせいで色んなものを持て余しているというのが想像出来てしまうので、これはもう事故です。

    #東ディバ
    #腐

    燠果 木の物腐し






    「わりぃなセンパイ」


     ぐっと汗を拭って眉を顰める灰園に

     とんでもない、と首を振る



    「いいんだ、それに君の料理が
     それだけ美味しいってことだから」



     これは本心だ


     キッチンカーの中から見下ろされていると

     まるで赦されない
     大きな障壁がはだかっているようだと


     何時も切ないような、
     それでいて
     ほっとするような心持ちになる。

     それじゃあ、と踵を返そうとすると


    「ちょっと待てよ」


     灰園はキッチンカーの中に
     身を翻すと

     ばたん、がらっと

     少し慌ただしい音がする


     そうしてカウンターでは無く

     出入口のドアが開いて

     ちょいちょい、と手招きをされる


     何だろうと

     呼ばれるままに
     来てみれば



    「ほらよ、サービス」


     にっと

     悪戯を共有するような笑顔

     差し出されたものに
     ぱちぱちと瞬きを繰り返す。


     ストローを差した
     小さめのプラカップの中に


     数粒のミックスベリーに
     レモンやオレンジの欠片
     氷がざらっと浮いている


    「えっと、これは?」


     育ちのせいで
     意図は分かっていながらも

     咄嗟に手を出すことが憚られる

     
     そういうやり取りの拍子の悪さに

     自分自身苛々する


     彼のような性格なら

     こんなまどろっこしい男など
     めんどくさいはずなのに


     特に気を悪くした風でもなく


    「即席のサングリア風ってとこかな」

     ノンアルだけど、と
     ふっと目を細められて


     思わず、身体がきゅっと強張る


    「常連手ぶらで返したら申し訳ねぇだろ」


     どうせ切れっぱしや余りもんだしよ、と

     こちらが気負わなくても良いような事を言ってくれる


     彼が所属している
     寮が寮だけに  

     決して上品で大人しい訳では無いのだが

     だからこそ、
     そういう態度にどうしようもなく

     焦がれてしまうのだろう


    「じゃあ、」

     といくらかと聞きながら
     財布を出そうと襟内に手を入れようとすれば


     他のヤツには内緒だと

     物陰に顰め
     人差し指を当てる仕草


     きっと、
     他の人にもしている事だと思いながらも


     まるで

     綾の糸で胸を縛られたかのよう 


     どもりながらも礼を言えば


    「あ、ちょっと待ってくれ」


     灰園は

     渡したプラカップから
     ストローをひょいと摘まんで
     からりと一回ししてから抜くと、


     その先の雫を

     ぽたり、と自分の手の甲に垂らす



     ぺろ、とそれを舐めて


    「ん、悪くねえと思う」


     あっさりとストローを返して


     じゃあな、とドアを閉めた。



     顔色は

     何とか変わらなかったと思う




     ただ、心臓は煩い


     やがて遅れて


     顔は見苦しく朱に染まるだろう


     その場から急いで離れ


     零さないように

     潰さないように


     プラカップを両手で包む



     行儀が悪い、と思いながらも


     ちゅ、と

     彼の指が触れたストローに口を付け


     つ、と啜る


     冷たい紅茶と
     シトラスの香気と酸味

     ほのかに甘いのはグレナデンシロップか


     何とも洒脱で爽やかな味の筈なのに


     心の内に残るのは

     渋みとえぐみ


     
     草木は人の手が入れば一層見栄え


     食物は人の手が加われば一層美味い



     あの手に一瞬触れられるだけで


     これ程になるならば



     あの手で 

     この身を

     丁寧に開いて欲しいと



     夜の褥で何度悶えた事か



     色と品を定めるように

     見下ろされ、


     何処か稚さを残す声に

     くすぐられ、


     あの舌先で


     五味を堪能するように

     肌の縁をなぞってくれたらと




     おんなだったら

     緋の裾を乱す程に


     夜毎
     劣情に炙られる




     もう一口、と啜れば


     胃の腑まで冷たく心地良い




     ずっと啜り続けていれば


     この熱も冷えてくれるだろうか




     加賀見は

     プラスチックの滑らかな質感を

     舌先でちろ、と弄ぶ



     昼食の事はもう、


     身にも心にもどうでもよかった。


                        終       
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