鬼宿日「入るぞ――って、おいおい、何やってんのお前」
障子を開けると、土方が机に向かい筆を走らせている。その光景はまあ、いつもの見慣れたものなのだが、土方の額には青いジェルの熱冷まし用シートが貼られている。重そうな瞼に少し潤んだ瞳でこちらを見上げた。
「坂田…」
「まだ熱があんだろーが。大人しく寝とけって」
持っていた丸盆を畳の上に置くと、坂田は土方の手から筆を取り上げる。不満げな顔をする土方の背中をこずくように押しながら布団へと追いやった。
「おい、まだ途中…」
「はいはい。どーせ明日になったら、やり直しだから」
机上に広げられた報告書の文字は乱れ、墨汁が点々とあちこちに模様を描いている。この有り様では、報告自体も成立しているかどうか怪しい。坂田はあきれ果てて嘆息した。
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