夢を見る人遊我ちゃんの首を絞める夢を見たよ。
そう告げたら、どんな顔をするだろうか。
熱心にロードを製作する遊我をぼんやりと眺めながら、ロアはそんなことを考える。
驚くだろうか。
呆れるだろうか。
笑うだろうか。
困るだろうか。
……怖がって、引きつった表情を見せてくれないだろうか。
ロード製作に夢中になってる今は、そんなことを言っても聞き流されてしまうのは想像に難くない。
いっそ、正夢にしてやろうか。
ロアがそんな物騒なことを考えていることなど何も知らない遊我は、ロードから目を離すことなく手を動かし続けている。
器用に動く遊我の手元を目で追いながら、遊我があの時あの場所にいなければ、セブンスロード・マジシャンを受け取ったのは自分だったんだろうか、などと益体もないことを考える。
そのあたりのことをはっきりさせようと、何度かオーティスに投げかけたが、のらりくらりと逃げられるばかりで、どんな気持ちを誰に向ければいいのか、ロアはずっと分からないままだ。
ここで考えていてもどうにもならない。
不意に時間があいて、連絡もせず急に立ち寄ったロアが悪いと言われればそうなのだが、それにしても遊我はロアを構わなさすぎる。
だから、こんなどうしようもないことを考えてしまう。
こんなことなら家で新曲案でも練っていた方がマシだと思い、ロアはスツールから立ち上がった。
「遊我ちゃん、オレ様帰るね」
「えっ?」
来た瞬間に挨拶したっきり、話すらせず工作に夢中になっていたくせに、帰ると言うと意外そうな声を上げる。
ロアはやれやれと肩をすくめてみせた。
「だってここにいても、オレ様、暇だし」
「うーん。ロアのしたいことしてていいのに。ロアは何がしたい?」
したいこと?
オレ様が?
夢は願望の表れだとどこかで聞いたことがある。
じゃあ、あれはオレ様が望んでいることなんだろうか。
だとしても。
もう、遅い。
とっくの昔に、遊我が選ばれてしまった。
「…………じゃあ遊我ちゃん、タイムマシン作ってよ」
「タイムマシン……」
冗談交じりに突拍子もないことを言ってみせると、遊我はオウム返しにそう呟いて俯いてしまった。
オレ様としたことが、子どもっぽいこと言ったな。
撤回するかごまかすかしようとロアが口を開きかけた時、遊我が勢いよく顔を上げ、きらきらした瞳を向けてきた。
「それってすっごく面白そう!」
何も知らないで、心底楽しそうに目を輝かせている。
それを使って過去に戻って、ロアが何をしようとしたのか、何も知らずに。
――まぁ、知らなくていい。
何も知らないまま、無邪気に笑っていて。
「じゃあ、タイムマシンが完成したら、真っ先にオレ様を乗せてもらおうかな」
そう言って、ロアは遊我に微笑んでみせた。