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    tohli

    フェムレオ沼の住人。
    隣のスティレオ沼もよく掘削してます。

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    tohli

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    毎度おなじみトラブル吸引体質のレオナルドが猫になる話
    ほんのりスティレオ。
    スティーブンが残念。
    猫に構いすぎて嫌われるタイプの猫好き。

    レオナルドは猫である1 昼下がりのライブラ事務所内は微妙な空気に包まれていた。
    「何度目だよ」
     ザップの問いかけに、レオナルドは小さな手を持ち上げて指折り数えよう――として、指がうまく折れなくてただにぎにぎとした。
    「……たぶん、六回目ですね」
     レオナルド・ウォッチ。HL在住。秘密結社ライブラ所属の十九歳。本日午後、通算六回目の猫化を果たした。
     レオナルドはトラブル吸引体質であることに定評がある。アパートは粉みじんになり、バイト先は炎上し、毎週のようにカツアゲにあい、入院沙汰は月に一度。日々食うに困り力尽きていることもある。(これはもっとも、妹への仕送りを優先しているせいでもあるが)
     そんなレオナルドは、たびたび変な呪いや薬品をぶっかけられたりして猫になっていた。
     ザップの巻き添えを食って愛人に呪いをかけられたのが二回。人身売買をもくろむ組織が誘拐した人間を外に持ち出すための猫化薬をぶっかけられたのが一回。よくわからない異界由来の猫化風邪をひいたのが一回。堕落王のゲームに巻き込まれて猫になったのが一回。
     今回は、朝起きたらアパートの住人全員が猫になっていた。原因と解除方法はただいま調査中。
    「今回は人間語しゃべれるだけいつもよりマシですね!」
     ソファーの上で、チョコレートカラーの毛並みのふさふさもふもふとした猫が胸を張る。サイズは一般的な猫ほど。毛並みは半長毛。どのような原理なのか、見た目は完全に猫なのにほとんど問題なく言葉を話していた。前の五回は中身まで完全に猫になったのが二回、猫語しかしゃべれなくなったのが三回だったのでそれよりは確かにマシだといえるが。
    「そういう問題ではないと思います」
     ツェッドが冷静に首を振るのに、「えー」と言いながらしっぽを振る。揺れる動きに合わせ、魅惑の毛束が空気をはらみながら右に左にと動く。
     六回目ともなればライブラのメンバーの対応も慣れたもので、チェインはひたすらにカメラを回しツェッドは額を押さえザップは爆笑しクラウスは微笑ましく見守りギルベルトは猫用のトイレと餌皿、寝床の用意に向かい(K・Kは知らせを聞いてバイクを向かわせている途中)、そしてスティーブンは。

     原因調査を構成員に指示し終わったスティーブンはスマートフォンを机の上に置くと、おもむろにスーツの隠しに手を入れマネークリップを取り出した。
    「――言い値で払うからそのしっぽモフらせてくれ」
    「あ、もしもし姐さん? ばんとーが暴走中……あ、縛っといていいっすか?」
     スティーブン・A・スターフェイズ(32)。構いすぎて猫に嫌われるタイプの、猫好きガチ勢。
     K・Kが駆けつけてくる前にモフらんとする彼の野望は、斗流兄弟の防衛と駆けつけた主婦の銃口によって阻まれた。

       ◇◆◇

     レオナルドは猫である間、事務所に住むことになった。基本的には室内飼い、もとい屋内待機だ。
     言葉が喋れるのだから外に出てもいいじゃないですかと本人は主張したが、ドアノブに手が届かなかったので早々に諦めた。
    (今度は何日でもとに戻れるかなぁ)
     てちてち、と小さい舌で懸命に毛づくろいしながら、レオナルドはぼんやりと考える。
     猫になっている間は当然ながらバイトも何もできない。
     何日かかるのかわからないけれど、大幅な収入減になりそうだ。ため息が出そう。ストレスを発散するべく、レオナルドはてちてちと毛づくろいを続ける。背中もおなかもぴんと伸ばした足も丁寧に。毛づくろいをしていると、悩みをちょっと忘れられる――どころか、完全に無心になってなめ続けてしまう。
     は、と気がついた瞬間にはいつの間にかすっかり夕暮れ時。おそろしいまでの時間泥棒だった。

     そんなレオナルドを、床の上に腹ばいになってずっと撮影し続けている副官がいた。他のメンバーはそっと目をそらしていた。

     ――ところで、事務所にいる間は食費も生活費もかからずカツアゲもされないので実はトータル収支は黒字だという事実にレオナルドはまだ気がついていない。

       ◇◆◇

    「レオナルドく……」
     声を上げようとしたツェッドをスティーブンは肩をたたいて止めた。
     振り返るツェッド。無言で顔を振るスティーブン。
     言ったほうがいいのでは。いや大丈夫だ言わなくていい。

     二人がそんな無言の応酬をしている横で、レオナルドはベロをしまい忘れていた。
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