ever after「僕はあの子を愛してもいないしあの子に恋してもいないよ」
街角のオープンカフェの一角。白いテーブルの上には薫り高い紅茶のカップがふたつ。テーブルを挟み向かい合うのは、仮面をつけた男と同じく半顔を覆う仮面をつけた少女だ。
ティーカップの細い持ち手に指を添えたまま、男はうんざりしたようにそう言い放った。
向かい合う少女はその返答に不満げだ。期待していたような楽しい話ではなかったから。
浮かれときめき道化になるようなとびっきりのコイバナを聞けるんじゃないかと思っていたのに。
テーブルの上に顎を乗せ、ぷーと頬を膨らませて不満げだ。
「そんなのつまんなーい」
「別にあの子の幸せを願ってもいないし相手を想って心躍らせ眠れない夜を過ごしたことも……も?」
うん? とティーカップから離した指を顎に当てて考え込む。
「……次はどんな悪戯をしてやろうかとかネタを考えて眠れなかったことはあるね」
「えー、やっぱり好きなんじゃないの〜?」
「好き、ねぇ? 一番気に入りの玩具ではあるけど」
肩を竦める。
「どれだけ僕が可愛がってやっても懐きもしない、僕のことを見れば露骨に嫌な顔をする」
「イヤな顔以外も向けてもらいたいってこと〜?」
「さあ?」
「はっきりしなーい」
ぶーぶー、とブーイングふたたび。
「アレが自分から僕のところに堕ちて来るようなことがあればそのときは興味がなくなるかもしれないけどね」
「堕ちてきそう〜?」
「全然」
「あらー」
テーブルの上に肘をついて体を起こした少女は、にひ、と笑う。
「永く遊べそうね〜?」
「末永く」
男も応えて、口を三日月のように歪めて笑った。