面白くない🦎「ミラベル、おはよう」
「ミラベル、ねぇ教えて。どうやってマドリガルのお家がもとに戻ったの」
「ミラベル、冒険のお話して」
物語のような日々が終わって一段落したら、ミラベルはまた子どもたち…いや、今度は子どもだけでなく大人まで彼女を囲むようになった。
「前まで腫れ物を扱うように接してたくせに、今じゃ街のお姫様みたい。」
家の柱にもたれ僕は面白くないとただそれを見つめていた。
ミラベルがどう思っているのかはわからないけれど、彼女は相変わらず丁寧に説明して回っている。
求められれば求められられるだけ。
「わかった、わかった、わかった。つまりね、魔法のギフトがなくたって一人ひとりみんな大切なのよ」
「何、カミロ不満なの」
いつの間にか隣に並んでいたイサベラが声をかけてくる。
「…不満だよ。」
不満に決まっている。僕のいとこは、僕らの家族はお姫様でもなければ、見せ物でもない。
「なら、助けに行けばいいでしょ。」
とん、と背中をイザベラに押される。
「見てるだけでも、待ってるだけでも何も変わらないわよ。」
「…イザベラ、変わったね。」
「あの子に、悪い影響受けちゃったからね。」
イサベラは真っ直ぐにミラベルの方へ視線を向け続けて「でも、自分に正直な今の自分の方が気に入ってる。」と笑みを浮かべた。
僕は、そんなイザベラを見てミラベルの方へ足を進める。上手にできるかは分からないけど、
「カミロ、自分に正直にね。」
その言葉にもう一度背を押されて。
「ミラベ〜ル」
「カミロ、どうしたの」
「おばあちゃんが、呼んでる。行こう。」
集団の中から、ミラベルの手首を間違えずに引っ張り出す。
「え、ちょっ、えっと、みんなまたね」
集団から抜け出して少し離れた場で、ミラベルが口を開く。
「久しぶりに、カミロの真剣な顔見た。」
その声は、少し弾んでいるように感じる。
「ミラベルを見つけて助けるのは僕の仕事だからね。」
僕の声も心なしか弾んで君に届いていたかもしれない。