沖田さんと「早く言ってくださいよ、もしかして僕のこと好きじゃなくなったんですかぁほーら、早く言ってって」
自分の好意を想い人に伝え合って照れたほうが負けっていう遊びがあるらしい、なんて興奮気味に話す平助を見て、はじめは興味なんて無かった。むしろそんなことをして何が楽しいんだろうとすら思ったくらい。
でも、お茶が入ったと部屋を訪れた君を見てどうしてか口からぽろりと言葉が漏れた。
どうしてか君の口から僕を好きだと言わせたかった。
「僕は、君のこと嫌いではないですよ。」
そう言うと君は唇を尖らせてそれはずるだ、と訴える。
正直言うと、自分には君を好きだと伝える度胸もなければ覚悟もない。
僕は、そう遠くない未来きっと君を残して逝ってしまう。
そんな無責任な言葉、言えるはずがないんです。
「沖田さん、あの、その…」
君はうつむき頬を赤く染めている。
もう、正直君のその姿を見るだけでいいかとすら思い始めていた。
「わかりました。もう、いいですよ。仕事に戻ってください。」
君だって、僕の病のことはきちんと理解しているはずだ。だから、僕はこの遊びは終わりだと伝えたかった。
でも、君の方は僕の言葉をそうとは受け取らなかったようで、恥ずかしさで目に涙を浮かべ服の裾を掴み「待ってください、」と言う。
「…好きです。沖田さん。だから、」
そこで一度君の言葉は止まる。
「だから」
「だから、私とともに生きてください。おじいちゃんになって髪が白くなるまで。」
「…………ははっ、重すぎますよ。」
君の真剣な眼差しは時々僕の胸を苦しくさせる。どう考えたって無理難題。
どう考えたって、今日一日を無事に生きることさえ大変なのに、それなのに…。
あぁ、もう頬に熱いものが伝うのを感じる。
…また、熱が上がってきたのかもしれません。
「考えておきます。」
君の言葉を現実にしたいと思ってしまうのだ。