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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【眼鏡】

    #飯P
    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl
    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負

    【飯P】焦点の先 常緑樹の木立は冬でも青々として、木漏れ日をちらつかせている。湧き水に濡れた手を払いながら振り向いたピッコロさんは、僕を見るなり怪訝な顔をした。何か言われる前に口を開く。
     「すっかり視力が落ちて……とうとう眼鏡になりました」
     濡れた口元から、首まで水の筋が延びて光っている。怒られるかな、という予想に反し、ピッコロさんは静かに頷いた。
     「勉学に打ち込んでいたからだな」
    「最近まで、なんとか裸眼で暮らせてたんですが」
     眼鏡を作ってはじめて、どれほど視力が落ちていたか分かった。そして眼鏡をかけてはじめて、どれほど世界がくっきりと鮮やかだったかを思い出した。この人の目が、こんなにも美しかったことも。
     ふと、ピッコロさんの面差しが困惑に染まる。
     「しかし、顔の前にそんなものがあると、邪魔になる時があるだろうな……」
    「案外、気にならないですよ」
    「そうでなくて、その……特定の場面で」
     ピッコロさんは言い淀むように口を噤み、目を逸らす。一度は開いた口を閉じて、何か別の言葉を探そうとしていた。
     なるほど、普段素っ気ない態度をとっているのだから口に出しにくいだろう、キスする時に邪魔だなんて! 僕はピッコロさんの腕にしがみつく。瞑想に耽っていたのか、北風に晒された肌はひんやりと冷たい。振り仰ぐと、レンズの向こうの見慣れた顔は、思いのほか真剣に考えているように見えた。
     「大丈夫です、邪魔なら外しても、ぼんやりとは見えます」
    「ぼんやりでは、困らないか。目線の動きや呼吸から予測を立てることもあるだろう?」
    「それは確かに……」
     話すにつれ、急激に心配になってきた。このくらい密着していればともかく、普通に会話をする程度の距離だと、細かな表情までは分からない。薄暗くなると、せいぜい輪郭程度しか見えない。口付けを落とそうとして"空振り"を起こした時のなんとも白ける空気……あれを味わうのは嫌だった。出来れば、この視力を保っていたい。
     「確かに、外すとピッコロさんの顔もよく見えなかったし……とはいえ着けてると邪魔……何か対策が必要かも」
    「おれの顔?」
     ピッコロさんは僕を見下ろし、首を傾げる。
     「何故おれの顔など見る必要がある」
     僕を腕から引き剥がして、ピッコロさんは樫の根本に置かれていたマントを着けた。白い布地を、木漏れ日が塗り分けている。
     「だからこうやって……」
     僕は改めて正面から歩み寄り、ピッコロさんのうなじに手を掛けた。レンズのお陰で、何もかも詳らかだ。
     「キスする時……見えないと困るけど、でも、眼鏡が邪魔ですよね」
     ほんの一瞬、ピッコロさんは沈黙した。それからじっと、レンズ越しに僕の目を見て、とうとうくつくつと笑いだした。
     「馬鹿、そんな話はしていない。戦う時の話だ。邪魔だろう?」
     僕は呆気にとられて、それから脱力して一緒に笑った。
     「戦う時? だったらなんで、あんなに言いにくそうにするんです」
    「平和に学問に打ち込んでいるのに、戦いの話など悪いかと思ってな」
    「あーあ、考え込んで損しました。でも、キスする時に邪魔なのは本当です。外しちゃうと、見えなくて困るし」
     うなじを捉えたままのピッコロさんを見上げる。レンズひとつ挟むだけで、本当に、今までどれほど見えていなかったのかが分かる。
     目の合ったピッコロさんが、不意に僕の眼鏡を抜き取った。急に視界がぼやける。思えば、よくぞこんな視界で生活していたものだ。明るい場所だから、なんとなくは見える。しかし……。
     「やっぱり……困るな」
    「困らない」
     困りますよ、と言いかけたところへ、やわらかく唇を塞がれた。不意打ちの驚きと、甘やかな熱の広がる心地で、手指が痺れる。うなじにかけたままの手を引き寄せて、繋ぎ止めたかったが、ピッコロさんが身体を起こす方が早かった。ほんの短い時間合わさっただけで、近付いたかと思われた体温は離れてゆき、かすかな官能だけが残る。
     「……おれからは見えているから、困らない」
     掠れたような、囁くような声。どういう表情なのか正確に見たくて、僕は眼鏡を取り返そうとピッコロさんの腕を捉えた。取り返すまでもなく、抜き取った手がそのまま眼鏡をかけてくれる。ぼやけていた視界が、確かになる。
     「……いつも、ピッコロさんからしてくれるってこと?」
     「お前次第だな」
     レンズを通して目が合ったのは、もはや普段と変わらない様子のピッコロさんだった。とはいえ、はっきりと焦点の定まった先の微笑は、僕の心を揺さぶるには充分だった。
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    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
    3016

    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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