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    あすと

    @aaast

    成人向け🔞NSFW / 全員受けで全員攻め

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    あすと

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    甲犬

     あ、ヤりたい……かも。眠りに落ちるかどうかというその時に突然そう思った。まあそんなもんだよね。別に溜まってるってこともないし、何か興奮するようなことを考えてたわけでもないけどほら、ただの生理現象?みたいな。多分。こういうのも生理現象っていうのかな、正確にはわからない。シバケンなら知ってるのかな、明日聞いてみようかな。知っていたとしても素直に教えてなんてくれないだろうけど。
     
     ともかくどうしようか。この時間から遊びに行くのもなあ、今日マジ寒いし。外出るのきつい。今から着替えて準備するのもだるい。もう完全に寝る体制だったし。でもだからってオナニーするのもめんどくさいな。気にせず寝ちゃえばそれまでなんだけど、一旦そう思っちゃったらずっともやもやしちゃう。めんどくさいね、男の身体って。あれ、身体?脳かな。わかんない、考えるのめんどくさいからもういいや。
     
     ドアの向こうで音がした。犬飼、トイレにでも起きたかな。珍しい、この時間に起きてることあんまりないし、一度寝たら朝までぐっすりのあいつが途中で起きてくることもさ。寝付けないなら相手してもらおっかな、なんて考えて一人で笑った。だって犬飼だよ、そんなふうに考えたことなかったし、この先もないよ。そんなことして今の距離感、崩したくない。
     
     実は俺は密かに犬飼に恋をしていて、冗談のつもりがマジの拒絶をされたら立ち直れない、とかそう言うんじゃないよ。ただ、今のこのある意味ではビジネスライクな距離感が楽だった。心地良いとまでは行かないけど、入ってこない、入らせない、その位の浅い感じがいい。誰かと深く繋がるって、良いことばかりじゃないから。俺は、適切な距離を取ることでうまく立ち回っていける。イメージ先行で軽い男だと思うならそれでいい。むしろ好都合。その方が簡単なんだよ、繋がることも、離れることも。俺は好きでこうやって生きてる。
     
     大きめのため息をついてから寝返りを打ったら、ベッドの柵に足が当たって思いの外大きな音を立ててしまった。やば。起こしちゃったかな。早めに眠った二人の方に視線を向ける。大丈夫みたいだ。
     あーあ、ごちゃごちゃ考えたらそんな気なくなるかなって思ってたけどだめっぽい。犬飼がトイレから出たら抜いてこよっかな。マジめんどくさい。と、思ってたんだけど、そんな思考は思いがけない声で一時停止された。

    「失礼します……。あのー……誰か起きてますか?大きな音がしたので……」

     控えめなノックと同じくらい控えめに、ドアの向こうから犬飼が声をかけてきた。ほんとさあ、魔が悪いっていうか空気読めないっていうか、犬飼っていっつもこう。悪気はないんだろうけどタイミング悪すぎ。さっき犬飼に相手してもらおうか、なんて一瞬でも考えたせいで妙な気分になっちゃう。やだなあ。俺が、俺だけが悪いんだけど。
     
     迷った俺は二人を起こさない程度の声量で、俺、起きてるよ、って言った。静かにドアが開く。ここ、壁が薄い上にドアの建付けも悪くて、ただドア開けるだけなのにたまにギーッてひどい音がする。犬飼はそれを考慮したんだろうな。すごく慎重に、顔が半分くらい見える程度に開いて言った。

    「何かありましたか?さっきの音は……」
    「別に、ちょっとぶつかっただけ。うるさかった?ごめんね」
    「あ、いえ。もしかして具合が悪かったりしたら大変だと思って声を掛けました。なんともないのなら安心しました。ではおやすみなさい……」

     お人好し。人を疑うことを知らない。物音聞いたら誰か起きて遊んでるんじゃ、とか思わない?普通。なのに具合が悪いんじゃ、なんてさ。そんなだからいつもシバケンの遊びに気付けないんだよ。思うけど言わない。それでもどうせ犬飼は今度こそわかってくれたはず、なんて思ってシバケンのこと信じるんだ。そんで繰り返す。だからさ、言っても無駄。それにシバケンにとっちゃ好都合だろうしね。楽しいこと奪っちゃ可哀想だし。
     
     ただこのタイミングで声かけられたのは俺にとってはマジで最悪。これからオナニーしようかなって時に声かけられてどんな気持ちになると思う?説明するまでもないよね。犬飼に八つ当たりしてやろうか。最高にダサいけど。

    「犬飼、もう寝るの」
    「えっ、あ、はい。寝ますよ。ちょっと喉が渇いて……起きてきただけなので」
    「ねえ、もしかしてこっそり楽しいことしてた?」
    「楽しいこと?」

     不思議そうな顔をする犬飼に俺は、右手の人差し指と親指で輪っかを作って上下に動かしながら笑って犬飼の方を見る。わかりやすく動揺したので当たっちゃった?って言ったら、違います!ってちょっと大きな声を出したから、人差し指を立ててしーってしたら、消え入るような声で、ごめんなさい……って謝った。

    「ごめん、別にそれは自由だよね。看守だろうが、囚人だろうが、俺達男だしさ」
    「いえ、ですから!」
    「実はさ、俺もシようとしてたとこだったんだよね。トイレで。そしたら犬飼が起きてきて水を差されたってわけ」
    「え……っとそういう事は……その……報告はいらないというか……本来はいけないことですが黙認という形を取っているので……宣言されてしまうと立場上私は止めなければいけなくなってしまいます……規則ですから……」
    「規則」
    「はい……なので、えっと、私、今の報告は冗談だったと受け取っておきますね。あの……ですから、おやすみなさい……」

     どこまでも真面目。どこまでもお人好し。怒ってくれてよかったのに。バカにしてくれたって良かった。部屋を後にしようとする犬飼を追うように反動をつけて起き上がった俺は、そっと閉めようとしたそのドアを掴んで、そして大きく開いた。ギィって嫌な音がする。犬飼を押して俺も外へ出て後ろ手でドアを閉める。目を丸くした犬飼が、俺を見上げてる。

    「おっ音!静かにしないとみなさんが起きちゃいます!」
    「ねえ、犬飼」
    「はい……?」
    「看守ってさ、囚人とセックスしちゃいけないって規則ある?」
    「えぇっ!?ありますよ、勿論。なんです?急に……」
    「じゃあさ、法律は?」
    「法律?それは……」

     何を質問されているのか、それからその意図を考えあぐねているようで、困った顔をしながら目を逸らす。もうひと押しすればヤれそう。なんて思っちゃった。いやまさか。仮にそうなっちゃっても困るでしょ、俺が。でも興味ある、どこまでイけるか試してみたくなる。好奇心、暇つぶし、嫌がらせ、口実はいくらだってある。馬鹿馬鹿しいけど。

    「ねえ犬飼、よく考えてみて。監獄の規則と日本の法律、優先するべきはどっち?」
    「……」
    「法に触れないならさ、いいって事じゃない?」
    「あの……何が言いたいのか、わかりません……」
    「わかってるくせに。ストレートに言おっか。今ね、誘ってんの、俺が、犬飼を」
    「さそ……え?」
    「シようよ。一人でするより気持ちいいし、犬飼もそういう気分だったんでしょ?もうスッキリしちゃった?それとも俺とはしたくない?」
    「や、ちがっ、あの、そうではなくて」
    「なあに?」

     困った顔、驚いた顔、恥ずかしそうな顔。ころころ表情が変わって面白い。なんだか泣きそうな顔にも見えてきた。可哀想だしそろそろやめてあげようかな。俺ももうオナニーとかどうでも良くなっちゃった。寝よ寝よ。
     そう思ったのに、そうするつもりだったのに、思いがけない方向に事は転がる。

    「……どっちですか」
    「ん?なにが?」
    「あの……えーと……その………えっと……わ、私はどちらの……どちらを……」
    「え?あ……そういう事?うーんと……」

     俺も今多分、さっきの犬飼と同じ様な顔になってる。やば、なんでこんな事で動揺してんの俺。ああ眠いからだ。間違いない、それだ。けど、でも、身体か脳か知らないけど、そのまま行けって命令する。嘘だろ、犬飼だよ、犬飼なのに。犬飼なのに!行っていいかな。後悔しないかな。するだろうなあお互い。だけど、していい後悔もあるような気がした。今行かないと別の後悔する気もする。けど、いいのかなあ。

    「……犬飼はどっちがいいの?」
    「わ、私は……甲斐田くんがしたい方の逆で……いいです……」

     ほらね、お人好し。でも欲に抗えないただの男。普通の、人間。可愛いとこあるじゃん。あーあ駄目だもう俺、今性欲に支配されてる。性欲、じゃない気がしたけど、気にしないことにした。ただの性欲だよって言う言い訳を残しておきたかった。後悔するために。気持ちよく後悔するために。

    「じゃあ俺が犬飼のナカに入りたい。それでイイ?」
    「………………………はい……」
     なにがはいだよ。もう止まれないじゃん、嘘だよって言えない。言ってもいいけど俺が言いたくない。シたい。ヤりたい。犬飼と。なんで?性欲。ね、これでOK。深く考えることなんてない。利害の一致、つまりはそういうことだ。

    「あ、俺今ゴム持ってないや、生でいい?」
    「私、持ってます……」

     持ってるのかよ。理由はまあ……お互い色々あるってことで追求はしないよ。気持ちよくなるために不要な情報だってあるから。
     さて次の問題は、この薄い薄い壁がどれだけの音を防いでくれるか、その一点に絞られた。
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    Replies from the creator

    あすと

    DOODLE夏の終わりの眠れないかいだくん(と誰か)の話
     別に、セックスなんてしなくたって死ぬわけじゃない。性欲なんて一人でだって満たせるし、そしたらあとは眠ればいいだけ。夢は見ない。寂しさは持っていかない。
     本当にほしいものが何なのかなんて自分でもわからない。繋がり、ほしいけど、繋がるってどういうことか本当はわからない。経験のないことは想像するしかないけど、経験がないからその材料すらも持ち合わせてはいない。仮に誰かが教えてくれたとしても、それはそいつの見解であって俺も同じとは限らない。
     だから、わからないことはずっとわからないまま、なんとなくわかった気になって欲しがり続けるしかないってこと。

     さっきまで生ぬるく感じてた扇風機の風は、今は少し寒いくらいだ。暇だな、暇だからこんなに余計なこと考えちゃうんだ。眠りたい。でも今眠ったら連れて行ってしまう。そんなのは嫌だから、目の前の背中にしがみつく。冷えた汗に頬をつける。ゆっくりと、同じリズムで震える体温。 どうして置いてくの、俺も一緒につれてってよ。一緒ならきっと、夢を見るのだって怖くない。ねえお願い、俺よりあとに眠って。置いて行かないで。俺が眠るまで、抱きしめて頭撫でてよ。子供扱いしたっていい、馬鹿にしたっていい、毎晩一緒に眠ってくれるなら、俺、誰よりもいい子になれるから。
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