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    あすと

    @aaast

    成人向け🔞NSFW / 全員受けで全員攻め

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    あすと

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    かいだくんと深夜に出会った女の子の話
    #prliプラス

     静かだった。そこを選んだ理由はそれだけ。急に一人になりたくなって外に出た。寝落ち寸前だったシバケンは罵声を浴びせてきたけど、ちょっとした取り引きを持ちかけたら渋々、俺の願いを叶えてくれた。
     
     空気が重い。肌にまとわりつくようだった。だけど嫌じゃない。独りじゃないような気にさせてくれたから。目的地を決めずにただ歩く。静かな方へ、暗い方へ。途中コンビニで酒を買って、袋を下げてまた歩く。
     明かりのない住宅街の入り組んだ道の途中にそれはあった。誰もいない公園、切れかけの電灯がチカチカと瞬いている。あそこでいいか、そろそろ歩き疲れたし。
     公園の中に入りベンチを探す。無いなら無いでそのへんに座ればいいかと見回すとベンチはあった。が、先客がいた。一人になりたくてここを選んだのに、これじゃ一人になれない。離れた場所に座ったとしても、ここにいるのが俺だけじゃなきゃ嫌だった。誰にも入り込まれたくなったから。
     今すぐどこかへ行ってくれないかなんて勝手なことを考えたけど、そんなに都合よくいなくなってくれるわけもない。当然だ。
     頭上の電灯に虫がぶつかってバチバチと音を立てている。可哀想に、そこにはなにもないのに。
     はぁ、と思わずため息が漏れた。思ったより大きくため息をついていたようではっとした。静かなこの場所ではこんな些細な音ですら響く。気づかれたかもしれない、と身構えた。 
     
     ベンチの人影はこちらを伺うようにゆらりと揺れて、そして止まった。遠くてよく見えないけど、多分、俺を見て固まっている。ごめんね、ビビらせて。こんな見た目でこんな時間に現れて。居るだけで怖がらせて、不快にさせて、ごめんね、でも俺にはどうにもできない。
     
    「怖がらせてごめん、出ていくから安心して」
     
     当てつけみたいに吐き捨てて踵を返す。悔しかった。悲しかった。だから一人になりたかったのに。結局俺は独りだ。先程通った入り口を目指して下を向いて歩く。月にすら馬鹿にされてるみたいで上を向くのすら嫌だった。笑えよ。嫌えよ。俺だって俺のことが嫌いだ。
     
    「あの、すみみません!」
     
     背中に声が掛かる。多分、若い女の子。思わず立ち止まるが振り返りはしない。これ以上怖がらせてどうする。傷ついてどうする。コンビニの袋をぎゅっと握る。酒はきっとぬるくなってる頃だろう。
     
    「あの!」
     
     再び掛けられる声。一体なぜ、なんの為に、どういうつもりで。腹の中がきゅっとする。俺に構わないでくれ。俺を傷つけないでくれ。もうヤケクソだった。泣きたかった。だから俺はもっと怖がらせてやろうと思った。逆ギレだ。ごめんね、俺は弱い。
     
    「ねぇキミ、ここで何してたの? 俺と遊ばない?」
     
     威圧するように早歩きでベンチへ向かう。ほら怖がって、気味悪がって、泣いて逃げたっていい。どいてくれるならもうそれでいいよ。
     
    「あ、すみません、あの、人間ですか?」
     
     ほらね、だと思った。でも人間ですかは流石にきつい。そこまで言われるほどなのかな俺って。可愛いのに随分キツイこと言うね、心の中で呟いた筈が、声に出ていた。我慢できなかった。
     
    「すみません……あの、私、ここで幽霊を探していて……出るって噂、聞いたことありませんか?」
    「……知らないけど。見たいの?」
    「はい、その幽霊、友達を探してるって聞いて……友達に、なれるかなって……」
    「は?」
     
     やばい子かもしれない。クスリかなにかやってるのかも、って思った。だって何時だと思ってるの、幽霊と友達になりたくてこんな時間に一人でここに居たなんて、普通じゃない。囚人のくせに無断で外出して一人で酒飲もうとしてた俺が言えたことじゃないけど。
     なんだかどうでも良くなって隣に、少し離れて座った。それから酒の缶を開けて飲みながら話しかける。
     
    「友達いないの?」
    「いないです」
    「友達が欲しい?」
    「欲しい……というか、いた事がないので、憧れ、みたいな感じかもですね」
    「そうなんだ」
    「あなたはどうしてここに? 幽霊を探しに来たんじゃないんですよね?」
    「ただ通りかかったから」
    「名前聞いてもいいですか?」
    「シオン」
    「シオンさんは何歳ですか?」
    「22」
    「大人……ですね」
    「君は?」
    「言えません。通報されたら嫌なので」
    「未成年?」
    「……言えません」
     
     淡々とした会話だった。問われれば答える、気になれば問う。ただそんなやりとりだったけど、なんとなく気が紛れた。頭の中の霧みたいなもやもやとか、腹の中のどろどろとした重りみたいなものが、気にならなくなりかけていた。
     その理由はわかっていた。彼女は、俺が幽霊であるか人間であるか、その一点でしか判断していないのだ。
     
    「俺のこと、怖くなかった?」
     
     聞くのは正直怖かった。でもきっとこの子は俺の望んだ答えをくれる、そんな確信もあった。人を信じるなんて馬鹿のすることだと思うけど、今は馬鹿でもいい、明日それを笑えばいい、と。
     彼女は表情ひとつ変えずに言う。
     
    「深夜に男の人が現れたから?」
    「他には?」
    「急にため息ついたから?」
    「他にない?」
    「特には……」
     
     というか私、幽霊さがしてたんですよ? 生きた人間なんて怖くもなんともないです。がっかりはしましたけど。たとえばもし……危ない人と出会って辛いことになったとしても、最期に一人じゃなかったこと、嬉しくなったかもしれないです。なんて危ない子みたいですよね。そう言って彼女は笑った。犬飼がよくするような困ったような笑顔、それに泣きそうな感じを足したみたいな。
     
    「ね、キミ酒飲んだことある?」
    「ないです」
    「やっぱ未成年だ?」
    「はい……通報しませんか?」
    「しないよ、したら俺もまずいことになるし」
    「深夜に大人の男の人が未成年の女の子と一緒にいたらそうですよね……」
     
     変な子。俺のほうが変なやつだけど。一人になりたかったはずなのに、なんだか楽しくなっていた。少し酔ってるのかもしれない。まだ半分も開けてないからそんなはずないのに。
     
    「これ飲む? もう一本あるからあげる」
    「でも」
    「キミが内緒にしててくれたら大丈夫だよ。俺は誰にも言わないし。興味ない?」
    「あります……。でも本当にいいんですか?」
    「いいよ、煙草もあるけど吸う?」
    「えっと……」
    「教えてあげる。キミが知りたいこと、なんでも」
     
     反応が面白くて揶揄った。困ってるのを見るのが楽しかった。プルタブを開けて缶を渡したら、彼女は恐る恐る口をつけて、甘いです、って言った。なんとなく選んだやつだったけど、ビールにしなくて正解だったかも。煙草は俺の吸いかけを渡した。軽く吸って複雑な顔をしていた。
     
    「どう? 一つ大人になった気分は」
    「大人……」
    「まだわかんないかな」
    「あの……図々しいんですがもう一つお願いしたいことがあるんですけど……」
    「なぁに?」
     
     抱いてください、とか言われたらどうしようなんて考えが少しだけよぎったけど、それならそれでその時考えようと思って答えを待つ。だがそれは意外な答えだった。
     
    「人間の方なのに申し訳ないんですが、よかったら、私と……友達になってもらえませんか」
     
     こんな俺と友達になってほしいだなんて、しかも人間の方、なんて言い方初めて聞いた。思わず吹き出したら彼女は否定と取ったのかひどく動揺して何度も謝ってきた。ちがう、違うんだ俺は。ひと呼吸おいて口を開く。
     
    「いいよ、ただの友達でいい?」
    「ただの……?」
    「友達にも色々あるでしょ?」
    「お茶飲み友達……とかですか? おばあちゃんとかの」
    「それもいいかもね」
     
     あまりにも純粋で、俺とは交わることのない世界に生きている子だと思った。こちら側に来させちゃいけない。解ってる。でも嬉しくて、楽しくて、抑えきれなくなった。許してくれるかな。キミも、俺自身も。
     
    「もっと楽しいことに興味ない? 大人になりたいって思わない?」
    「私、実は明日で18歳になるんです。だから一応、明日で大人、です。お酒と煙草はまだですけど」
    「へえ、じゃあ色んなコト、解禁だね」
    「例えばどんな?」
    「それは明日教えてあげる。明日もここで会える?」
    「会えます! 来てくれますか? お祝い、してくれますか?」
    「もちろん、約束。友達だもんね」
    「はい!」
     
     友達ができた。ただの、友達、今は。いいやずっとただの友達だっていい。俺のこと、幽霊じゃなくて人間って、それだけの存在として見てくれる友達。最高じゃん。
     
    「じゃあLINE交換しない?」
    「あっすみません、幽霊探しに来ただけなのでスマホ家においてきてて……電話番号でもいいですか?」
    「いいよ、ありがと。じゃあ俺も番号教えるね。覚えられる?」
    「多分。がんばります」
    「で、実は俺、今ちょっと変わったとこに住んでてさ、約束の時間通りに来れないかもしれなくて。でも絶対来るから、なかなか来なかったらかけてみて。必ずかけ直す」
    「わかりました」
     
     待ち合わせの時間を決めた頃には空が白み始めていた。まずい、そろそろ帰らないと。名残惜しいけどまた明日。きっと、きっと、犬飼を縛り付けてでも明日も俺はここに来る。キミに会いに来るよ。
     
    「それじゃあ明日」
    「はい、明日!」
     
     彼女に手を降って空き缶を二つ、連続してゴミ箱に向けて投げた。適当に投げたのに縁に当たったあとちゃんと中に入った。ついてる。
     
     帰ったらシバケンがキレてた。ゲームで何かあったらしい。開けてくれたお礼をもう一度言ったら、何ニヤニヤしてんだ気持ちわりぃって言われた。まあね、楽しいコトしてきたからね、って言ったら色ボケが……ってお約束みたいに言われた。さあ寝よう。ポケットからスマホを出して充電器に繋ごうとしたらSMS通知が見えた。彼女だった。
     シオンさんですか? 今日はありがとうございました。友達になってくれてありがとうございました。おやすみなさい、また明日! と、最後に彼女の名前が書いてあった。そういえば聞いてなかったな。浮かれすぎだろ俺。
     可愛い名前だね。おやすみ、また明日。すぐに返信して目を閉じた。
     明日が楽しみなの、いつぶりだろう。早く会いたいな、だから犬飼、早く寝てね、縛り付けるのめんどくさいからおとなしく早寝して、ください。お願いします。
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    Replies from the creator

    あすと

    DOODLE夏の終わりの眠れないかいだくん(と誰か)の話
     別に、セックスなんてしなくたって死ぬわけじゃない。性欲なんて一人でだって満たせるし、そしたらあとは眠ればいいだけ。夢は見ない。寂しさは持っていかない。
     本当にほしいものが何なのかなんて自分でもわからない。繋がり、ほしいけど、繋がるってどういうことか本当はわからない。経験のないことは想像するしかないけど、経験がないからその材料すらも持ち合わせてはいない。仮に誰かが教えてくれたとしても、それはそいつの見解であって俺も同じとは限らない。
     だから、わからないことはずっとわからないまま、なんとなくわかった気になって欲しがり続けるしかないってこと。

     さっきまで生ぬるく感じてた扇風機の風は、今は少し寒いくらいだ。暇だな、暇だからこんなに余計なこと考えちゃうんだ。眠りたい。でも今眠ったら連れて行ってしまう。そんなのは嫌だから、目の前の背中にしがみつく。冷えた汗に頬をつける。ゆっくりと、同じリズムで震える体温。 どうして置いてくの、俺も一緒につれてってよ。一緒ならきっと、夢を見るのだって怖くない。ねえお願い、俺よりあとに眠って。置いて行かないで。俺が眠るまで、抱きしめて頭撫でてよ。子供扱いしたっていい、馬鹿にしたっていい、毎晩一緒に眠ってくれるなら、俺、誰よりもいい子になれるから。
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